第五十七話 Birthday party?!
「え?」
享が言った通りにバイクを走らせて辿り着いた場所は、灯の実家だった。
道路でバイクを降りると、享が引いて何段かある階段を押し上げて鳥居をくぐって、境内に入る。
「何で?」
「さて、何ででしょう?」
享がふざけて言ったところに、汐恩が住居側から出て来た。
「おー来たか!早かったな」
「え?お兄ちゃん?」
「お前の誕生祝いに新宿のNo.1が駆けつけてやったんだから感謝しろよな!まあ、ただ、ここ最近、上客がついたから稼ぎが良すぎてさ、少しばかり遅刻しても大目に見て貰えるってこともあってなんだけどな」
灯は享と汐恩の顔を交互に見ながら、享に聞く。
「何?これ?どう言う事?」
「あかりんの誕生日会だよ」
「え?何で?」
「家族ってやつが、また集まれたお祝いでもある感じ?」
汐恩が答えた。
「家族の集まり……」
灯が呟くと享が言った。
「と、言う訳で今日は僕は一旦、うちに帰るよ。またお誕生日会が終わった頃、送りに来るから」
「え!一緒じゃないの?!」
「今日は家族にお祝いして貰って」
「何で?!」
汐恩も口を挟む。
「そうだよ、享。お前も寄ってっけって、家族同然じゃん」
「汐恩さん。有難うございます。でも今日はご家族で過ごして欲しいんです。ご家族ならではの話もあるでしょうし、そうして欲しいんです」
「……」
灯は納得が行かなかった。
「何で勝手に何でも決めるの?どうしてそうなの?Tallのバカ!」
そう言い放つと玄関の中に入ってしまった。
「Surpriseのつもりだったんですけどね」
享が苦笑いすると汐恩が言う。
「やっぱり恋人同士の誕生会の方が良かったんじゃね?」
「いえいえ、ようやく汐恩さんとも再会できたんですし、家族って大切な存在じゃないですか。灯さんもそれを強く感じてる様に見えたので。今日は、こちらでって崇さんにお話しさせて頂いたんですけど、ご一緒に食事がメインのお誕生日会と言う感じで……」
「女心を知らねぇんだな、お前」
「え?」
「どんなに大切な家族よりも好きなヤツと過ごしたい時があるって事!」
「そうなんですか?」
「当たり前だろ」
「いや、でも……灯さんにとっては、今のご家族の形になるまでに葛藤もあった様だったので……」
汐恩が呆れたと言う顔で享に諭す。
「お前って存在が灯の考えを変えたとは思わなかったのか?」
「僕が?ですか?」
「多分、あれだろ、灯は新しい家族の中で孤独だったとかなんだろ?」
「何で分かるんですか?」
「気を回し過ぎるタイプなんだよ、灯は」
「そうですね」
「だから、ようやくお前って存在のお陰で気持ちに余裕が出来たってとこだったんじゃね?なのに、勝手に家族でお祝いって……まあ俺らは楽しみだったけど、灯は違ったって事だ」
「僕も気を回し過ぎって事ですかね?」
「まあ、そうだな!だから寄ってけって!母さんも崇さんも琢磨もお前も来るって思ってんぞ」
「え、でもご家族でとお願いして……」
「遠慮すんなって!ほれ!」
「はあ……」
享を汐恩は無理矢理連れて家に入った。
「享くん!よく来てくれたね!」
ジュース瓶を運んでいた崇が、まずは喜んで迎え入れる。
リビングには琢磨が作ったのか歪ながらも、折り紙の輪っか飾りが繋げられ、たくさん壁に張り巡らせれている。
いかにもお誕生日会と言う装飾がなされていた。
大きな座卓には、いろいろな料理が並び、会の開始を今か今かと待っている琢磨がソワソワしながらも決められた座布団の上にちんまり座っていた。
台所から取り皿とお箸を持って灯がリビングに入って来た時、ムスっとした雰囲気で享の姿を見るなり
こう言った。
「あれ?帰ったんじゃなかったの?」
「ん、えっと」
汐恩が助け舟を出す。
「素直に喜べよ!あかりん!」
「お兄ちゃん余計なことしないでよ」
「本当は一緒にいたかっだろ?」
「うるさいな!もう!はいこれ、配膳して」
灯は持っていた取り皿とお箸を享に渡した。
「了解!」
享は嬉しそうに渡された取り皿とお箸を配膳した。
「宴も酣ではございますが、汐恩!出勤致します!」
午後五時を回ったところで、汐恩が急に立ち上がる。
「あれ?遅刻して行くんじゃなかったの?」
千紗子が聞くと
「俺が行かないと、やっぱり売り上げに響くからさ」
「あらあら、No.1様は大変だこと」
「まあ、そんなとこ、じゃ、お邪魔しました!」
「また、遊びに来てね!」
琢磨が汐恩に抱きつく。
汐恩はしゃがんで琢磨のほっぺたに自分の顔を押してけてスリスリしながら、嬉しそうに言った。
「おー琢磨!可愛いなー!来る来る、ニイニはまたすぐ来るからな」
「本当にまた遊びに来ておくれよね。楽しみにしているからね」
崇が汐恩に声がけすると、汐恩は照れくさそうに笑いながら
「はい、また寄らせて頂きます!」
と答えた。
「じゃ、そこまで見送るよ」
灯が言うと、享が声を上げた。
「主役は座ってて、僕が行くから」
灯は素直に、享に何か考えがありそうだと思って
「そう……うん、ヨロシク」
と、見送りを託した。
境内の参道を歩く享と汐恩。
「汐恩さん、ご一緒に楽しませて頂いて有難うございました」
「当たり前のことをしただけだぜ」
「いえ、僕の考えが浅はかで……」
「そう言うとこ!」
「え?」
「考え過ぎなんだって」
汐恩は続けた。
「お前達二人はお互いに気を遣い過ぎ!そんなことじゃ、まだキスもしてねーだろ!」
「え!」
「何だよ、図星か?」
「あ、まあ、理由もあって」
「バカか?勉強が出来ても中身はお子ちゃまのままか?キスしていい?とか聞いてんじゃねぇだろうな?」
「……」
赤くなる享。
「え?マジか?……次に機会があったら、聞く前にしろ!行動しろ!己の気持ちを偽るな!」
「はい!ご教授有難うございます!」
「本当に実践しろよ。いつまでも、むしろ待たせ過ぎも嫌われるぞ」
享はそこで汐恩に伝えようとと思っていたことを話し始めた。




