第五十四話 I actually got my driver's license!(本当に免許取れちゃったよ!)
「いやー、カッコ良かった!」
享は灯が一回で実技試験に合格し、免許が取れたことにご満悦で、帰りからずっと一本橋がどうだったとか、S字が良かったとか、褒めっぱなしだった。
お昼は簡単にホットドッグとコーラで済ませた二人が、帰りに享が約束通り、いいお肉を買ってくれて今ステーキを仕上げている。
フライドポテトも別皿で用意され、何故か今の享のお気に入りの大根のサラダが用意されている。
ただし、パセリが散らされている事で、オシャレ感満載だ。
コンソメスープも用意されている。
灯はソファに転がって何の支度も手伝わず、これで教習に行かない日のスパルタ教育に付き合わなくて済むことに安堵していた。
「あかりん?ご飯どのくらい食べる?」
「ん?お茶碗半分くらい」
「え?少なくない?」
「お肉が大きいから……」
「そうかなぁ、たった二百グラムだけど」
「Tallと一緒にいたら……」
「もっと大きくならないと」
『いや、あれは十分か……』と、ちょっとニヤけた。
いつの間にかカウンター前に来ていた灯が享を見ながら言う。
「Tall、顔赤いよ。何、思い出し笑いしてんの?」
「え?思い出し笑いなんかしてないよ」
「怪しい」
「いやいや、本当」
『あの時の胸の膨らみなんて思い出すなよ!』と自分に言い聞かせた享だった。
「もう、運んでいい?」
「あ、有難う。お願い」
灯がテーブルにそれぞれのサラダとスープを運び、最後にポテトフライのお皿を真ん中に置く。
大きなお皿にステーキをどんと載せたら出来上がりだ。
「ご飯も皿でいい?それとも茶碗にお箸で食べる?」
「んー、お肉切って貰えるなら、お箸に茶碗がいいなぁ」
「O.K.」
「有難う、Tall、家でこんなご飯なかなか食べられないよ」
「いやいや、ご褒美だからね!」
「あぁ、そうだったっけ」
あまりの詰め込みに、時の流れも忘れている灯。
今日、初めて講義をサボったことすら、忘れていた。
「あ!そうだ、福ちゃんにノート借りなきゃ」
「今日の分?」
「何も今日行かなくても良かったんじゃないの?」
「いや、何言ってんの!やる時はやる!後回しにしていいことなんかないんだよ」
「まあ、さすがに説得力があるよね、Tallが言うと」
学祭休みの間、灯が小型二輪の学科勉強をしていた時、享も一緒に国際法の何やら文献を読んでいた。
何か、気になることがあると、また違う文献を持って来る。そしてまた一つ……何かしら、テーブルの上に本やら何やら増えていく。
結局、灯がもう眠くて仕方がなくなって
「先に寝るね」
と言っても、
「ん、おやすみ」
と返してはくれたが、多分耳に入っていなさそうだった。
集中力が半端ない。
『それが大学二個目の実力ってことなんだろうな』
灯は享のそう言うところを尊敬していた。
「あぁー食べられないと思ったのに……美味しかった。Tallシェフご馳走様でした」
「お粗末様でした」
「片付けは私がするから!」
「いいよ」
「いやいや、毎日、勉強にも付き合って貰ったし、今日も二俣川まで付き合って貰った上に、また帰りも送って貰うんだから、そのくらいはさせて下さい」
「うーん、じゃ頼む!」
「了解」
灯は享に二本指で敬礼した。
「あかりん、 S.W.A.T. ※みたいじゃん」
「へへ、Tallがいつも言ってて、カッコいいからマネしてみた」
「もう!本当、可愛いなーあかりんは!」
享が灯に手を伸ばすと、それを遮る様に
「Tallは座って座って、寛いでて」
灯は享の背中を押して、ソファに座らせた。
ソファに座らされた享は新聞を読みながら、胸の中には別のものが秘められていた。
明日は十一月二十五日、灯の誕生日。
どう演出するか悩んでいた。
誕生日プレゼントはもう決まっている。
ステーキは今日食べてしまったし……特別な料理って何だろうか?
ケーキを焼く時間はないし……
明日はど真ん中ベンチlunchの日だが、そろそろ天気によっては寒いし……どこか空いてる講義室……
人から見られない場所……はと考える。
見つけた!!よし!
とりあえず、明日のお弁当はオムライスに決めてある。
あとは明日を待つだけなのに、もう灯を送る時間だ。
学祭休みの間、楽しかったことや甘酸っぱいことが、想い出に変わって行く。
目が覚めると、隣に灯が眠っていることがどんなに嬉しかったかと言うことも想い出になってしまった。
これから二人はどうなって行けるのだろう?
どうなってしまうのだろう?
実は、享の心の中は大荒れだった。
まだまだ解決していないこともある。
灯の身の危険も去ってはいないのだ。
「さてと、Boss!終わりました!点検お願いします!!」
「いいよ、点検なんて……あかりん、いつも周りの拭き上げまで完璧だもん」
「そうかな?」
「そうだよ」
「じゃ、帰る」
「そうだね、送るよ」
『何だか、まだ帰りたくない……』
『まだ、本当は返したくない』
そう思っていても口には出せない二人だった。
※ 『スワット』(原題:S.W.A.T. / 特命刑事)
放送開始:1975年〜1976年
ロサンゼルス市警の特殊部隊(SWAT)を描いた元祖作品。




