第四十七話 Who is the true princess?(本当のお姫様は誰?)
「では、先程申し上げた内容でも皆様の票の確認を致します!」
スタッフが移動式の黒板を持ってきて掲示板替わりにつかう。大きな模造紙が貼られた。
会場側から見てわかりやすい様に、姫、王子がいる、下手(左)側にお姫様、上手(右)側に王子様のそれぞれの氏名の横に学部学科の略称とポイント数が、味のある文字体で書かれている。
A princess A prince
大槻花梨(文・国)100 横溝 享(法)380
白河美玲(文・英) 40 近藤 要(法) 15
宮守 灯(法) 10 渡辺李人(法) 10
え?何?何?足しても男子と女子の合計数合わないじゃない?とお思いの方、四位以下がたくさんおり、100人以下は切り捨てである。
花梨が思わず立ち上がって物申す。
「ちょっと、もうこれって決まってるようなもんじゃないの?これ以上何を確認するのよ?」
司会者が
「まあまあ、ここからがいいところです!実はお一人まだ来場者票を足してない方がいらっしゃいます!」
「え!?」
全員が驚く。
「だってご覧下さいよ、王子様の横溝くんなんて学生総数に近いんです!ですが、お姫様の方は投票率が悪かったので、どんでん返しをご用意しました!」
会場もざわつく。いったい誰が?来場者票を手に入れた本当の意味のお姫様って?
「宮守灯さん!今、ポイントは10になっておりますが実際は学内投票人数は195人、そして昨日の来場者票220人を合わせますと415人ですので、400ポイントとなります!ちなみに他の皆様には来場者ポイントは既に付加させて頂いております!」
会場だけではない。
校舎内も大騒ぎだ!
これはもしかするともしかしての法学部始まって以来の王子様&お姫様がマジの恋人同士で選ばれるかもしれないのだ!
特にほぼほぼ法学部一年票は灯に入れたと言っても過言ではないので、法学部校舎一階は大騒ぎだった。
享がニヤニヤしながら灯を見ている。
灯は驚いた顔のまま固まっていた。
美玲が心配そうに灯に声を掛ける。
「灯ちゃん、大丈夫?」
「あ、はい……」
「もしかしたらもしかしてなのだけど、この大学始まって以来の本当の恋人同士の王子様とお姫様の誕生よ!」
「え!!」
模造紙の灯の名前の横の数字が400に書き換えられた。
「さてさて、まだまだドキドキは続きますよ!この後、いよいよ、ご登壇の皆様によるポイント投票です!ご本人様に直接お伺いする方式でお願い致しますので、一旦一息入れましょう。今のうちに考え下さい!」
実行委員がそれぞれの候補に缶ジュースを差し出す。
灯は当初、断ったが享がジェスチャーで飲め!と言っていたので飲むことにした。
実際、喉が渇いていたのか思いがけず飲み干せた。
さあ、誰に入れたらいいのか?悩む灯。
隣から美玲が話しかけて来た。
「私は灯ちゃんに入れますからね!」
「え?いえいえ、ご自身に!」
「これは心理戦よ。波に乗ってる人に入れた方が絶対いい結果になるの!灯ちゃんも遠慮せずにご自分にお入れなさいね!」
「……」
『いやいや、なんだってこんな事になっちゃったんだ?来場者票って何?』
灯は自分の持ち点をどうするか本気で悩み始めていた。
司会者が一休みして戻って来た。
「さあて皆様!お待たせ致しました!これからが一進一退の攻防戦、候補者自身によるポイント投票に移ります!」
灯がどんどん俯いて行くので享の心配が頂点に達しそうだった。
「ポイント投票につきましては、司会者が指名させて頂きます!その方にお答え頂きます?まずは〜」
と言いながら、候補者の顔を見回すと、
王子様次点の要に声掛けをした。
「法学部二年の近藤くん!ポイントはどうされますかぁ!?」
「僕は……同じ法学部の期待の新人宮守灯さんにポイントを投じます!」
「はい!承りました!筆記係!プラス30ね!」
「では、お次はたった今ポイントを受け取った法学部一年の宮守灯さん!どうされますか!?」
「わ、わ、私は、白河先輩にポイントを差し上げます!!」
「おぉ、はい承知致しました!白河さんにプラス10!」
享が一瞬「チッ」という顔をして横を向いた。
「ではでは、ただ今ポイントの入った文学部英語学科三年の白河さんはどう致しますか!?」
「私は元々そう考えておりましたのでもちろん宮守灯さんにポイントを入れさせて頂きますわ!」
「そうですか、そうですか!なんと美しい?何例えればよろしいでしょうか……とにかく宮守さんにまた30ポイントプラスです!」
「ではお先にトップ・オブ・ザ・トップの横溝くんにお尋ねしましょう!」
「I gave all my points to Akari miyamori」
「はい!ポイントは全て宮守さんに!ですよね!お噂はかねがねお伺いしております〜!もしかしたらもしかしての!?はい、50ポイント宮守さんプラスです!おお!ここで宮守さん、暫定ではございますが、一位に浮上です!」
「ほらね、言ったでしょう!後はあの方、法学部一年生だし……灯ちゃんに入れてくれるでしょ?」
美玲が囁く。
『何が起きてるんだろう?』
周りの異常な熱気の高まりに置き去りにされた様な気持ちの灯は何も耳に入って来なかった。
「では、法学部一年生渡辺李人くん、どうされますか?」
「僕は、大月花梨さんに投票します!」
司会者と法学部一年生全員が唖然とした瞬間だった。
司会者は慌てて現実に戻ると
「大槻さんに10ポイントプラスです」
弱々しい声で言った。
「では、最後に念の為お尋ねしますが」
花梨は食いつき気味に
「何が念の為なのよ!花梨は自分に投票しまーす!」
「はい、有難うございました!では、ここで最終順位の発表です。王子様優勝は横溝享くん!」
「こんな僕に投票して下さった皆さんにはもう訳ないこと、この上ないですが……辞退します!」
「まだ何もお尋ねしてませんが、承知しました。二位は近藤要くん!」
「僕もお付き合いしている方がいるので辞退します」
「はあ、了解です。では三位は渡辺李人くん……」
「謹んでお受け致します」
会場の誰もが驚いたが、一番驚き喜んだのは何を隠そう花梨だった。
振り向かない享より、甘い言葉をかけてくれる李人の方が気になっていたからだ。
「それではお姫様は、大槻花梨さんという事で?」
「もちろんよ!喜んでお受けするわ!」
毎年、享の辞退で荒れ狂う花梨を知っていた実行委員は安堵の表情だ。
「では、皆様長いお時間のお付き合い有難うございました!この後、来場者票を入れて下さまた方の整理券番号の抽選を一番人気だった宮守さんにお願いして閉会とさせて頂きます。候補者の皆様にお疲れ様でございました!尚、王子様とお姫様は最終日にドレスアップして頂く為の採寸がありますので係員の誘導に従って下さい!」
灯にはまだ一仕事あったらしい。




