第四十四話 Bring down a big fish (大物を引き摺り下ろす)
いつもご覧頂き有難うございます♪
じれじれ大好きな優月菜です!
金曜日、明日はお休みという方が多いかな?と思います。
今週あった面白いこと面白くなかったことなど思い出しながらも、今日の夜のひとときの面白い方の余韻にお役に立てれば幸いです!
という訳で、今晩もまた午後8時に最新話を投稿致します☆
お楽しみに♪
法学部学部長室。
竹之内学部長は自席に、応接セットの三人掛けには灯を拉致しようとした三人。
一人席の二つのソファには背広姿の二人の男性が座り、享は学部長席の隣のパイプ椅子に座っている。
灯はいない。
第一声は享だった。
「お宅ら文学部の四年生だよね?」
三人は黙ったままだ。
享が一気に捲し立てる。
「僕が分かってるだけでも、図書室で灯のこと狙ってたよね?何しようとしたかは分からないけど、
あれは、軽犯罪法第1条28号
他人に不安や迷惑を覚えさせるような仕方でつきまとった者にあたる。
次は灯の実家の社務所に放火したよね?
それは現住建造物等放火罪刑法108条
人がいる家に火をつけた場合
死刑、無期懲役、または5年以上の懲役
そして今回、灯のこと手足を縛った上に車で連れ去ろうとしたよね?
あれは逮捕・監禁罪刑法220条
不法に人を束縛して行動の自由を奪う罪。
3ヶ月以上5年以下の懲役。監禁して怪我をさせれば監禁致死傷罪。
で、僕のこの顔にあざができた。
傷害罪刑法204条
15年以下の懲役、または50万円以下の罰金
殴ったり蹴ったりしたけれど、怪我はしなかったアザも傷も残らなかったという場合は、一歩手前の暴行罪だったけど、残念!くっきり青あざだ。
ダンマリで黙秘権かよ?警察呼ぶ?弁護士呼ぶ?」
黙ったままの三人。
「オッサン」
「他の人がいる時は学部長と呼びなさいよ」
呼びかけた享に、肘をつき顔の前で両手の指を組んでいる龍馬が呟く。
「学部長、失礼ながら、あちらのお二方はどなた様でしょうか?」
「今度はバカっ丁寧か……あちらさんはね。まあご自身で名乗って貰おうか?」
龍馬に促され三十歳半ば位と、五十歳代か?落ち着いた男性二人組の若い方が話し始めた。
「あぁ、申し遅れました。私共は検察のものです」
「警察じゃない!?」
享が驚くも
「理由あって同席させて頂きました」
と、あっさり返す。
「理由って何ですか?学部長?今、僕が申し上げた事聞いてましたか?このお三人は犯罪を犯したんですよ!来るなら警察でしょ?!……ん?ははーん。……そうでしたか……大物を釣り上げるつもりなんですね?地検特捜部ってとこですか?」
年長の方の男性が享を見ながら懐かしそうな顔つきで逆に聞き返してきた。
「顔はメグ似だが、達志にそう言うところは、そっくりだな。享、俺のこと忘れたのか?」
聞かれた方の享は頭の中の引き出しを出しまくる。
「え?……まさか。川端さん?」
「すごいなっ!八年ぶりなのに感動もんだ!」
ここにも享の父親の同期生がいた。
川端雄二。
現在は検察庁東京地検特捜部部長。
「何を追ってるのかは想像がつきましたが……」
享が急に納得したのを見て、
『達志、お前の息子は聞きしに勝る天才だな。お前がFBIに持って行かれた時、日本の法曹界における大損失だと思ったが、こっちもデカい損失だな』
===
享の父親、達志は元々はアメリカ国籍の日本人の母とアメリカ人の父を持つハーフ。そしてその独身時代、大学卒業後、アメリカのロースクールにも通い国際法に長けており、一時アメリカの法律事務所に席を置いていた時期にマーガレットと出会ったのだ。
そこを幼い享には会社勤めと話していた。
そして結婚。
仕事でまたアメリカ支社に達志が転勤というのは全くの嘘言で、アメリカにいた頃に職務で絡んだFBIの長官からの特別な依頼で国際法の専門家として引き抜かれたという経緯。
実は享が出した手紙は日本には元々届いていなかった。FBIは職務の都合上、身元住所を明かせなかったからだ。
灯の両親達が享の転居先を知らされていなかったのも筋が通る。
達志自身はニューヨークに転勤と言いつつも、実はワシントンD.C.に身を置き、職務を遂行を遂行していたが、シングルでは享の面倒は見難い。
たまたま享の祖父母が住まうマサチューセッツ州レキシントンと言う場所が全米屈指の"超高級住宅街"であり"文教地区"だったこと。
またレキシントンは、非常に治安が良く、緑豊かで美しい歴史的な街並みが広がり、そして何より、公立・私立ともに学校の教育レベルが全米トップクラスに高いことで有名なところであった為、安心してメグの父母に達志は享を預けられたのだ。
ただ祖父は早く他界してしまったが……。
===
「僕にとっては、相当でかい魚ですが、あなた方にとっては、この人達はミジンコくらいなんですね」
三人のうちの一人が
「なんだと!人をプランクトン扱いする気か!」
慌てて他の二人が宥めすかす。
「その勢いでお話し頂きましょうか?今回の首謀者はどなたですか?貴方達は何かと引き換えに仕事を請け負っただけなのでしょう?」
若手の方の検察官が圧をかけて聞いた。
誰も答えない。
「今回のことですが、先程、横溝くんが話した通り、貴方達は実行犯だ。まあ、このままだと警察に引き渡すことになりますが、私達はそれを良しとしないつもりです」
「え?司法取引するんですか?犯罪者なのに罰しないつもりですか?」
川端が口を挟んだ。
「おいおい享、ここはアメリカじゃないんだ。日本の法律に『司法取引』なんて言葉はない。お前の親父も昔、同じような論理を俺に押し付けて来たが……ただ、今回は前途ある若者の将来を潰したくないだけなんだ」
享は不貞腐れたように言う。
「どっちが考えを押しつけてんだか……」
ところが急に納得が行ったのか頷く享。
「あぁ、そうだったのか……そう言うことか」
そして川端に向かって享が言った。
「学内の事で、あなた方特捜が知りたいことについては、もう動いているので、ご心配なく」
「何も話してないのに、何が分かったんだい?」
「その三人の先輩方に就職先を紹介するとか何とか言って、犯罪まがいのことをさせた証拠を上げようと思ってたんですが、多分、それがあなた方の探している物に通じるはずです」
三人組は揃ってビクつき始めた。
川端が感心した様に返事をした。
「ほう」
「まだ尻尾も掴めないから、こんなところから斬り込むしかないって事なんですよね?」
「あー、その言い方は耳が痛いなぁ」
「相当の切れ者の大物の様ですが、学内の方はそうでもないはずです……でも、そんな繋がりがあるとも思えないんですが……」
「そこはコメントは差し控えさせてくれ」
「ご都合主義なんですね」
若い検察官が立ち上がると
「失礼だぞ!この若造が!」
享に怒鳴った。
「おー、怖っ。じゃ、僕はこの辺で失礼します。
そこのお三方に関しては、お好きになさって下さい。お上の事には間違はございますまいから」
「この嫌味か!!」
森鴎外の"最後の一句"の一節を引用されて、若手検察官はますます憤り立つが、川端に静止されて、バンっと音がするくらいの勢いでソファに腰をおろした。
「じゃ、享!お互い標的は別々に仕留めよう。情報提供待ってるぞ」
「了解」
享は椅子から立ち上がり、ドアに向かいながら返事をして出て行ってしまった。
「川端部長!あんな若造に、あんな言われようされて頭に来ないんですか!」
「お前さんだって、あぁ言う若造だった時があったが、俺はきちんと教育したつもりだがね」
「あぁ、それは……」
若い検察官は頭を掻いた。
「じゃ、本格的にお話をお聞きしようか?お三方」
川端の目つきが鋭くなったのを見て、"お三方"は震え上がった。




