第三話 Childhood memories(子供の頃の思い出)==加筆・修正あり
第三話までお手にして頂き有難うございます!
これから、どんどん二人のじれじれTimeが、幼い頃の記憶と共に進んで行きます。
灯と享の近づいたり離れたりをどうか長い目でお見守り下さると嬉しいです♪
優月菜
「何年ぶりかに会ったのに失礼な言い方」
『そんなこともあったっけ……』
灯は照れ臭くて少し怒ったふりをした。
すると享は慌てて言い換える。
「いやいや、それが可愛かったって言いたかった」
『そんな灯が好きだったから』
「ふぅん、そう。同じ大学にいたのに今までお互い全く気づかなかったなんてね。不思議」
「あかりんは、あまりキョロキョロしないよね?いつも俯き加減に下見て歩いてる」
「何で、そんなことまで知ってんの?!」
「ずっと見てたからだよ」
「え?何を?」
「本当にあかりんに会いたくて日本に帰って来たんだ」
「え?」
「こっちで大学生になって、すぐに探したんだよ」
「私のことを?」
「うん。まずは、もと住んでたとこに行ってみた」
そこにバナナスピリット※1が運ばれて来た。
「食べよう」
「う、うん」
『探してた?私のことを……何で?でも大学生になって、すぐには気づかなかったって事?』
バナナスピリットを食べながら、享が続きを話す。
「僕達が住んでたところ、今はマンションが建ってた。思い出せるだけのあかりんの友達探して引っ越し先聞いたけど、誰も覚えてなくて、ただ、汐恩さんと新宿で会うことだけは出来た」
「え?お兄ちゃんと?」
「うん」
灯はバナナを口に頬張り食べ終わった時、口にした。
「まさか新宿の繁華街に行ったとか?」
「何で分かったの?」
「うわー、Tallも男の子なんだね?そんなとこ行くんだ?」
「いや、近所を聞き回った時、噂で新宿で夜の仕事をしてるって聞いたから探しに行ったんだ」
「何でそこまで……」
「でも汐恩さんも教えてくれなくて」
「だって知らないはずだもん」
===
灯が四年生、享が六年生の冬の始まり。
享の母が脳溢血で急逝した。
灯はよそ行きの紺のワンピースを着て、母親に少し伸びた髪に黒いリボンを付けて貰ったのを享に早く見せたくてウズウズしていたが、先にお通夜の手伝いに出た母からは早く来たらダメと言われていた。
だが、やはり我慢出来ず、お勝手口から、そっと享の家に入った。
台所では、
「本当に急なことだったみたいね」
「倒れて救急車ですぐに運ばれたけど間に合わなかったみたいよ」
お通夜のお手伝いに来ていた近所のおばさん達が口々に、同じ様な話題を続けていた。
その中には言葉を発しないで黙々と働く、灯の母の姿もあった。
リビングの家具がすっかり片付けられ、享は所在なげに、母親の写真が花々で飾られた祭壇の前で一人座って泣いていた。
その横に行って灯も座った。
そして
「ねぇ、Tall、私がママになって、いつまでも一緒にいてあげるから泣かないで」
「え?ママになってくれるの?」
「うん!Tallが淋しい時も悲しい時も一緒にいるよ」
「僕のパパと結婚する?」
「え?何で?」
「僕のママは僕のパパと結婚しないとなれないよ」
「え?じゃあ、どうすれば一緒にいられるの?」
「灯、うちにいなさいって言ったでしょ」
母に呼ばれて、享の答えをその時には聞かずに家に戻された。
そしてマーガレットの本葬の日。
黒塗りの霊柩車に棺が収められた。
その車に白木位牌を持った達志と遺影を持った享が乗り込む。
灯は思わずドアが閉まる前に享に駆け寄った。
「あかりん」
「Tall」
「灯!だめよ」
母が前に出て灯の腕を掴んだ。
すると達志が
「長谷部さん、もしお願い出来たら灯ちゃんも一緒にメグ※2を見送って貰っていいでしょうか?」
「え?」
「灯ちゃんは享の妹と、いつもメグが言っていたので……きっと彼女も灯ちゃんに見送って貰えたら喜びます」
「あ、ええ……わかりました。それではかえって申し訳ありませんが、宜しくお願いします」
灯は享の隣に座って火葬場まで行く事になった。
※1縦に真っ二つに割ったバナナの間に、三色のアイス"バニラ・チョコ・ストロベリー"を挟み、三種のシロップとホイップクリーム、チェリーを飾ったもの。
※2マーガレットを略した愛称




