第二十六話 Let's meet at the library.(図書室で待ち合わせしよう)
皆様、週末ですねー(投稿日7月17日)
さて、今日一日頑張ったら明日はお休みです!
明日もお仕事の方いらっしゃる?
あーそれはお疲れ様です!ごめんなさい……
そんな皆様にも一息入れて頂ければと、本日、もう一話、午後8時に最新話をお届け致します!
どうぞお楽しみください♪
優月菜
『はかどる!』
図書室の蔵書室の環境は最高だった。
天井は高く、外の螺旋階段を使って上がるのか、高い位置にまで蔵書が陳列されている。
窓はあるが本の保管の意味合いで、厚みのあるカーテンが下の方でタッセルで止められていて、日差しはほとんど入らない。
仄暗いが照明は昼間でもついている。
自習スペースは八人掛けの食事用テーブルの豪華版の様なしっかりとしたものが四台。中央にはそれぞれの席用に、まるで花の蕾が垂れ下がる様な形のランプ。その足元にはめ込み式のスイッチがあり利用者だけ照らす様になっていた。
椅子もクッションがきいており、長時間座っていても良さそうな作りだった。
『ドイツ語の辞書があるとは!』
今まで友達から辞書を借りてドイツ語の予習をしていたが、今度から借りなくてもいいと思えただけでも、大収穫だった。
『お小遣いはお昼代とか、ノート代、追加の教科書とか買って、電車代もかかる時もあるし……やっぱ、お小遣い帳つけようかな……つけたら変わるかな?』
"可愛いお洋服"に関心がなかったとは言え、享に会う時にワンピースの一枚も無かったことにショックだった灯。
『寮費も出してもらってるんだから、贅沢言えないよね。あれ?アルバイト禁止っ言われたっけ?言われたわ……でも、一ヶ月三万円じゃ、可愛い服は買えないんだよね』
『辛い時のアイス……アイスキャンディーで我慢か?』
布ペンケースのジッパーを開けると中から二本の万年筆を出す。
白とピンク。
そして、Dバッグの中から藍色
に白いマーガレット柄のハードカバーのB5版のノートを出した。
灯の日記帳だ。
享との小学校時代から書き始めて数冊買い替え、今は八代目だ。
初めて、自分が愛おしいと思う色と花の組み合わせの日記帳に出会えた後、すぐに享と再開して驚いた。
灯の妄想が書き込まれた日記帳。
もしも……こんな時、享とだったら?と言うことが本当に起きた出来事と混ざり合って書かれている。
今はもし?ではなく、何でこうなった?!が多いが……いずれにしても現実に起きたことなので書いている灯自身、嬉しかったり、悲しかったり面白かったりの感情のままに書けることが、楽しくて仕方がない。
『この際、お小遣い帳も兼ねるか……』
お財布の中から、ここ最近の溜まっていたレシートを出した。本当に数日間分だけだ。
『すぐ捨てちゃうからなー』
レシートを日付順に並べているのに集中した灯は、背後から迫り来る人の気配に気づかなかった。
その時、前方の扉が大きな音を立てて開くと、同時にこちらに向かって来る享の姿が見えた。
「あかりん!お待たせ帰るよ!」
「え?もう、そんな時間?」
図書室は、灯以外の学生がいなかったので、灯自身気が抜けて、広い机上に、いろんなものが出しっぱなしになっていた。
享はめざとく"灯の日記帳"を見つけると聞いて来た。
「その藍色のノートは何に使ってるの?」
「あ、お小遣い帳」
「お小遣い帳?」
「う、うん」
「見せてよ」
「やだよ!」
「何で?」
「何、買ったかとか分かっちゃうでしょ?」
「分かったら困るの?」
「Tall、マネするもん」
「え?」
享が目を丸くしていると灯が
「シャンプー!」
「あぁ、それ」
「講義室から、Tallがいなくなった後、他の子達が騒ぎ出して……Tallそんな事して!って思ったら、また鼻血でちゃって」
「え?!また?」
「……うん、そしたらますます騒がれて……あの時、Tallはぐらかしたけどシャンプーが同じだと何かあるの?」
享は笑いながら
「うん!あるね!」
楽しそうに言った。
「それって?」
「本当に分からないの?」
「分かったら聞かないよ」
「そっかー、じゃ、そのお小遣い帳見せてくれたら教えてあげる」
「え?じゃ、いいよ」
「即答?」
灯は、お小遣い帳ではないノートの中身を見られる方が恥ずかしいと思っていた。
「知らないと困ると思うけどなぁ」
「え?本当?」
そう言いながらも……
『でも、中を見られたら困るし……』
灯は、何も言わずに荷物をかき集め、Dバッグに入れて行く。それを見ている享。
そして、最後に"日記帳"を手に取った時、
「隙あり!」
「あ!ちょっと!」
「ど真ん中ベンチまで競争!」
「あ!いや、ダメ!」
享が先に扉に向かって走り出す。
灯は慌ててDバッグを背負うと、椅子をきれいに戻してから後を追った。
図書室のエントランスで司書さんが、
「あらあら、図書室はお静かにですよ」
先に蔵書室の扉から出た享に言うと享は笑いながら扉を開けたまま灯を待つ間、小声で早口に司書と会話をする。
「他に人いたみたいですけど……隠れてたみたいなんで」
「確かに、後、三人ほど入室されてますが、見当たらなかったのですか?」
「はい、隠れてました」
「隠れていた?」
「えぇ、完全にこちらの様子を伺っていました。
灯は気づいていなかったし、マズい状況だったかもでした」
「うーん、それは失礼。今日は午後から室内当番さんはいない日だったの。ごめんなさい。お三方は普段から、よく来られる真面目な方々だったので、うっかりしましたわ。もうそろそろ引退かしらね」
「いえいえ、司書さんのせいではありません。"雇い主"が狡猾なだけです。とにかく、気にかけて頂いて有難うございました。まだまだこれからも宜しくお願いします!」
"司書さん"は女性だったが、実はチーム鑑識の頼りなる名誉会員なのだ。
享は次の扉を開けて待っている。
灯は蔵書室の扉から飛び出す。
「Tall!返して!」
「図書室はお静かにですよ」
「あ。すみません」
「いえいえ、昨日はお二人の微笑ましいご様子見させて頂き眼福でしたわ。また来て下さい」
「えっと、あの、はい。有難うございます。また来させて頂きます」
灯は享が待っている扉に向かった。




