第十七話 Always get cut off short(いっつも途切れちゃうね)
「Tall、さっきからオカシイよ。泣いたり笑ったり、今は考え事?」
「いや、さっきのはゴミが入ったんだから泣いてない。そんな事があったって、今知って驚いただけ」
「また思い出話で時間経っちゃうね」
「あぁ、本当だ。もうこんな時間か……よし、あかりん、時間割出して」
「今?あっ、えーと、待ってここにあるはず……」
先程一度、寮に戻っての出直しで、財布とハンカチくらいしか肩掛けバックの中には入ってなかったが、学生証カバーの内ポケットに入れてあるメモ帳にも書き写した時間割があった。
そしてそれを享に見せた。
「字が綺麗になったね」
「これでも神主の義娘だからね。書道もお義父さんに習ったんだ」
「本当にいいお義父さんだね」
「私に借りがあるからね」
灯はいたずらっ子の様に笑った。
「よし、分かった!火曜日の昼と土曜日の午後会おう」
「え?週二?って、時間割頭に入ってんの?」
「もう後期だし普通でしょ?」
「うわー、嫌味」
灯は『さすが飛び級して一個大学卒業しただけの事はある』とは思うも、さすがに学食で昼ご飯はハードルが高過ぎる。
「とにかく火曜日の昼ご飯一緒に食べよう」
「たがら学食じゃ……」
「校内アピールが足りない」
「何、それ?」
享は上着をちょっとズラすとダンガリーシャツのポケットに土曜日買った万年筆が差してあった。
「学年違ったら、誰も気づかないよね?」
「それはそうだけど……」
『学食でご飯なんて』
灯の頭の中には様々な光景が思い浮かぶ。
学年を問わない女子学生からの視線だ。
「季節も良いから、日中ならベンチでご飯もまだ行けるでしょ?」
「わざわざベンチでご飯?」
「火曜日はあかりんは三限空きで、僕は昼の後、講義はないから、昼ご飯なら、ゆっくり食べられる」
「買ってくるの?」
「僕が作って来る」
「え?今何て?」
「一人暮らしだし、ママから料理は一通り習ったから結構イケるよ。洸平大絶賛だし」
灯は考える。
『これって普通は逆じゃないの?でも、私は寮だから作ったりは出来ないから……でも』
「また心配してるでしょ?あかりん、人のこと気にし過ぎ!僕は料理は面倒じゃないよ。むしろ、そこまで横溝享が尽くす相手って、凄くない?」
「横溝先輩だもんね。私は、そんなTallが優秀だとか、王子候補だなんて噂も知らなかったけど」
「それとこれとは別物!じゃ、決定!もう早速だけど、火曜日って明日だからね。昼休みに"ど真ん中ベンチ"に来てよ」
「"ど真ん中ベンチ"って、あの大きな真ん中の木の周りにあるベンチのこと?」
灯達が通う大学は入ってすぐ校舎に行き着くまでの広々としたキャンパスにはコンクリート敷きの道以外に芝生や様々な植栽が施されていた。
そのど真ん中にある堂々とした大きな楠はポプラ並木の道から外れ、その周りには芝生が敷かれ、さらに周囲はコンクリート敷きの道路になっている、そしてベンチが六個、等間隔に配されていた。
「あそこで!?」
「あそこで。あと、それと、やっぱり何か、これって分かりやすい"しるし"みたいなのが欲しい。この万年筆じゃ知れ渡るまでに時間かかりそうだから」
「何で、そんなに急ぐ必要があるの?」
「おやおや、本当に世間知らずなお嬢さんだね。君、自分が今年の学祭の姫候補に選ばれてるの知らないの?」
「え?本当?エントリーなんてしてないんだけど」
「自薦他薦は問わずだから、誰かがエントリーしたんじゃないかな?」
「うわー、なんだそれ」
ニヤニヤしている享。
「まさか?」
「正解」
「どうしてそんな事」
「二人で選ばれたら凄いじゃん」
灯は、お祭りは好きだったが、お祭り騒ぎは苦手だった。
「他校だけど服飾専門学校の学生さん達がさ、今年の姫と王子に似合う衣装も仕立ててくれる特典つきだよ」
『もし選ばれたら……Tallが王子?
考えただけでも鳥肌もんだし!絶対カッコいい!
でも私は選ばれる訳なんかないよ』
「だから、これはいわゆる作戦だよ。僕は申し訳ないけど中間報告でもダントツ一位の状況。あかりんの存在はまだ知れ渡っていないから、ここで恋人アピールをしておけば、あの二人っていい感じ、後押ししてあげよ!ってなるかもしれないでしょ?」
「あ、やっぱりTallはお勉強しか出来ないんだね」
「何、それ?」
「逆効果って知ってる?」
「え?」
「Tallのことが素敵だから、票を入れた人は、もし本当に恋人が出来たら、その女の子に票は入れない。むしろ失脚を狙われる可能性の方が大きい」
「何で?好きなら、その人の幸せを願うもんじゃないの?」
「女子はね、王子の隣を常に狙ってるの。今カノにそんないい思いさせるなんて絶対ないよ」
「そう言うもの?」
「そう、絶対にそう……墓穴掘ったね」
「ひー、怖い」
「ひーって、Tall!何者?面白ろっ」
大笑いする灯。
「じゃ、ますます守らなきゃだな」
「守る?何を?」
「あかりんの事」
「何で?」
「もしかしたら……自慢じゃないけど僕の信奉者に虐められるかもしれないってことでしょ」
『女子は陰湿だからなー。トイレは気をつけるかな?渡辺くんと付き合った時ですら、ちょっといじられたし……今回は大波なんだろうな』
灯も灯で考えるところはある。
「大丈夫!自分の事は自分で守れる!だって一年の校舎に、わざわざ上の学年の女子は来ないでしょ?」
「それは……そうかも、だけど」
「とにか明日のお昼、Tallの手作りお弁当楽しみにしてるね!」
『でも、ど真ん中ベンチかー。これもハードル高いよなー』
「自分で言い出して、お弁当はいいんだけどさ。
ど真ん中ベンチはダメかな?」
「でもアピールが大事なんでしょ?」
「まあ、出来たら」
「だったら、オッケーだよ」
「ごめん。女子の気持ちとか分からなくて」
『モテるはずなのに、本当に女の子と付き合った事なかったのかな?分からなさ過ぎじゃない?』
「今、僕のこと女子のこと知らなさ過ぎって思ったよね?」
「え?そんな事思ってないよ」
『何で考えてること、言い当てるんだ?この人』
灯は驚く。
「僕はさ、本当にずっと、あかりんのことしか頭に無かったから……」
また一つ過去が明らかになる瞬間のはずが……。
「あ、いけない!もう出ないと夕飯に遅れちゃう」
腕時計を見て灯が慌てる。
「Tall、また途中でごめん。これ、"邪道カフェ・オ・レ"のお代。それと今日のお礼」
灯はカフェ・オ・レ代ちょうどと、さっき買ったクッキー缶の袋をテーブルに置くと席を立つ。
「じゃ、また明日!走るから」
「あかりん!待って、一緒に出るから」
もう店内を移動している灯。
「大丈夫!じゃまたね!店主さん!ご馳走様でした!」
「また来てね」
店主にも声をかけて、その声に軽くお辞儀を返しドアを開けると灯は飛び出して行ってしまった。
その素早さに圧倒された享は残されたお金とお菓子の袋を見つめて、また席に座り直した。
「どうして、いつも中途半端なっちゃうんだよ」
店主がトレーを持って、カップを下げにやって来て享に声をかける。
「ツケとくから、追いかけたら?もう暗いから夜道は危ないよ」
「有難う!じゃ、ごめん。行くね!カフェ・オ・レ代だけは、ここ」
クッキー缶の袋だけ持つと享もドアに向かった。
いつも楽しみにしていた有難うございます!
金曜日ですね!
皆様にいつも感謝とお疲れ様の意味を込めて、本日はもう一話、午後8時にお届け致します♪
お楽しみに!!
優月菜




