第十五話 I'm really, really sorry.(本当にごめんなさい)
Just like starting overをご覧頂いてる皆様♪
いつも有難うございます!
昨日は七夕でしたね?
皆様の見上げたお空は……
織姫様と彦星様の再会をご一緒出来ましたか?
そしてどんなお願いを短冊に書かれたのでしょう?
私は?内緒です(笑)
〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されてます!!〜
は文字通り!!
これから、どんどん享の暴走が加速して灯が!!
これからの展開を是非お楽しみ下さいね☆
優月菜
「ごめんなさい」
駐輪場でいきなり灯に謝られて、享は一瞬身構えた。
「どうしてあかりんが謝るの?」
まさか、李人とヨリが戻ってとか言い出すのかと思ったのだ。
すると灯は全く違う話を始めた。
「土曜日に、Tallが次の約束をしようって言ってくれたのに、校内で会った時でいいよって言った事」
『なんだ、その話かー!焦った!落ちつけ享』
はやる気持ちを抑えながら答える。
「でも、今、会えたよね?」
「大変な事だったって、今朝、気づいた」
「え?何で?」
「私、今朝、Tallに土曜の帰りに言われた通り、八時四十五分に校舎前を通ったら、本当に渡辺くんに話しかけられて、Tallに言われた通りに言い返して講義室に行った。肩とか掴まれて追いかけて来そうな勢いだったのに、後で会った時には横溝先輩と幼馴染なんだってねって、お似合いだよ、とまで言われて」
「へぇ、あの子そんな事言ってくれたんだ。嬉しいね!あかりん」
「そこじゃないよ……」
「ん?それに、もう構わないって言われたんでしょ?」
「うん。でも、そこじゃなくてさ」
「何?何?はっきり言ってくれないと分からないよ」
「今日、Tallは講義は午後からなのに、朝、その時間の前から私が校舎のところを通るのを待っててくれたんだよね?」
「それは、そう約束したから。絶対、渡辺くんは、あかりんの事追い回すと思ってたし」
「講義は午後からなのに……」
「え?そんな事、気にして待ってたの?」
「だって土曜日みたいな偶然なんてないよ!今日、お礼を言いたいのに同じ大学にいるはずなのに探してもTallは見つからなかったんだよ」
「そっか、それで次の約束もしてないから心配になっちゃったんだね」
「うん……Tallが言う通りに次の約束しておけば良かったって。だから、ごめんなさい。それと有難うも言いたくて」
「よし、分かった!じゃ、夕ご飯でも食べながら、この間出来なかった今後のことも決めよう!」
「ごめんなさい」
「今度は何?」
「もう四時過ぎたから……」
「あぁ、夕飯キャンセル出来ないのかぁ」
「作り始めちゃうから……衛生上の問題で次の日に取って置くとかしないで廃棄しないとなんだって。せっかく作ってくれたのに捨てられちゃうんじゃ申し訳ないから……ごめんなさい」
「分かった!じゃ、近場でお茶しよ?」
「お茶?」
「あかりん、珈琲は飲める様になった?」
「え?飲めるよ!」
「本当かな?お子ちゃまだった頃のあかりんは、父さんのコーヒーを飲みたいって言って飲んで、すぐ、その場で口からダッーって」
「わっー!!何で!」
灯は手を伸ばして享の口を前から押さえようした。
「その話は忘れて!人生初めての汚点なんだから!
いったい何でそんな話まだ覚えてんの!?」
享は伸ばされた灯の手を握りしめながら
「今、忘れた」
と笑って応えた。
享が連れて行ってくれたのは駅を挟んで線路の向こう側の住宅街。
そこに"珈琲屋"があった。
"珈琲屋"は、その名の通り珈琲専門店。
珈琲豆や、その場で、豆を挽いて売ってもいる。
いつも穏やかで静かなピアノの名曲が流れており、
シンプルに珈琲を嗜む店だった。
ドアを開けると、上の方でチリンチリンとドアベルの優しい音が鳴り響く。
「あれ?享、半日ぶり」
カウンター越しに店主が声を発した。
享は灯が探しても見つからなかった午前中をここで過ごしていたのだ。
珈琲屋は朝が早い。
出勤前にここの珈琲が飲みたいと言うお客さんがいたことから、午前七時から八時半まではモーニングセットを用意している。
しかしながら、後の時間は昼であろうと閉店の午後九時までは珈琲しか出さない、こだわりのある店だった。
「マスター、いつものと、"邪道で申し訳ござらんがカフェ・オ・レ"をお願い」
「はいよ。って、その後ろのカワイ子ちゃんはどこのどなたさん?」
灯は自分のことだ!と驚いた拍子につい
「宮守灯と申します。いつも享がお世話になっております」
とお辞儀をしてしまった。
店主は笑いながら応える。
「こちらの方が一日に何度も来店下さるお客様でお世話になってます。享はいいお客様ですよ。いらっしゃい、灯ちゃん」
「あかりんの息子じゃないんだから、その挨拶はないよ」
享はそう言いながらも顔は真っ赤だった。
灯も『あ、やっちまった?』と思って負けないくらい真っ赤になってた。
店内は日暮時から、明かりを少し落として大人時間を嗜む雰囲気になっていた、が、他に客の姿はなかった。
仕事帰りや一人暮らしの学生ら、本当の珈琲好きが集まるのは、午後七時過ぎかららしい。
「どこでも空いてるところに座って」
「有難う」
享は灯を壁際の一番奥の二人用テーブルの手前に座らせると、自分は奥の席に座った。
テーブル席は奥の壁際に二人用が二席。
テーブルは少し小さめの角型。
窓際と中側に四人席が二席ずつ。
この四人席は離せば二人席にも早変わりする。
観葉植物の鉢植が、互いのテーブルから隣りのテーブルとの視線が合わない様に上手く配置されていた。
あとは店主の前のカウンター半分に三席。店に入ってすぐの手前半分は珈琲豆が並んだショーケース。
こじんまりとした店だ。
灯が壁に張り巡らされているメニュー表を見て気付いた。
「さっきTallが言ったのオーダーだったんだ?」
珈琲屋は珈琲専門店。
その自負から、本来ストレート珈琲を嗜んで欲しい、が、やはりここは一歩引いて、小さなミルクピッチャーに入ったクリームは珈琲カップの皿に乗せてくれる。
砂糖は各テーブルにカラメルシュガー※が置いてあった。
そして、灯のために享が頼んだのはカフェ・オ・レ。
これは店主のお遊びではあるが、ストレート珈琲ではないので、メニュー通りに言わないとオーダーを受けないのが、この店の掟になっていた。
カフェ・オ・レは"邪道で申し訳ござらんがカフェ・オ・レ"が正しいオーダー名だ。
「Tall、午前中ここにいたんだね。居心地良さそう。店主さんもいい人みたいだし」
享は頬杖をついたまま、壁の方を向いて紅い顔のまま、むっつりしている。
「Tall?ごめん。さっきの挨拶ダメだったよね?怒ってる?」
「ダメじゃないけど……照れた」
「え?照れた?」
「まるで妻みたいな感じだったから」
※カラメルシュガーはコーヒー専用に作られたもの。カラメルのコクがある、粒が大きい為ゆっくりと溶ける砂糖。




