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Just like starting over 〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃってます!!〜  作者: 優月菜


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第百五話 They outsmarted me!(やられた!)


「学部長室は鍵がかかっていたので中を確認していません」


大和が青ざめた顔で言うのを聞いて享が言った。


「いや、でも学長代行が救急車呼ぶ為に一度部屋には入ってるし、その時鍵を閉めたなら中には入れないだろうし」

「でも、もしかしたら……最初から学部長室のどこかに隠れていたら……」


大和に言われなくても、それには享は気づいていたが、二人に余計な心配をさせたくなかった。

だが、確認しない訳には行かない話ではあったのだが、今の話で享は一つの考えに達した。


「引き止めてごめんね。灯の心配はしなくても大丈夫!あの子、身体は丈夫だし、僕が受け身を教えてあって、それをやったらしいから」

「受け身って、柔道のですか?」

「うん、そう。バイクも乗るからと思って何かの時の為に一応。あと関節技もね」

「横溝先輩って、いったいどれだけ出来ることあるんですか?」


優がとぼけた質問をした。

二人と別れて病室に戻った享に龍馬が声を掛けた。


「いきなり、どうしたのよ?」

「思いついた事の確認で大和達を追いかけたんです」

「そうか……それで何か分かったのか?」

「実行犯は分かりました」

「え!?……今回の件、まだ警察には届けて無いんだけど……どうする?」

「本人が落ちたって言ったなら事故ですから……本来なら警察を呼ぶんでしょうけど……それより川端さんにお願いしたいことがあります。連絡を取って頂けますか?」

「ん、分かった」


ノックの音。

その時ちょうど灯の家族が病室を訪ねて来た。


龍馬も享も、揃って頭を下げて謝る。

そして龍馬が口火を切った。


「僕らがついていながら、お嬢さんにお怪我をさせてしまいまして、誠に申し訳ございません」


崇を始め,千紗子もおまけに琢磨まで一緒になって返答する。


「あ、いやいや、本人が落ちたと言ったのであれば、本人の不注意ですから皆さんのせいではないですよ」

「本当に灯は、そそっかしいから」

「そうそう、お姉ちゃんは、よく本殿の階段からも落ちたしね!」


最後の琢磨の言葉に少しだけ笑いが起きるも、龍馬が改まった態度で話を締めくくった。


「大学で起きた事故ですので責任を持って、大学側で対処させて頂きます。本当に申し訳ございませんでした」


その後、龍馬は先に病室を後にした。


灯の家族と享だけになった時、千紗子が享に話しかけた。


「享くん、今回のことも心配かけてごめんなさいね。灯は本当に小さい頃から、いっつもどこか怪我してる様な子だったから、私達それほど心配してないのよ」

「いえ、昨日の今日でこんな事が起きるとも思わず……今朝一緒に登校もしなかったので……すみません」


崇も享に言い聞かせる様に話し出した。


「享くんが謝らなくていいんだよ。そんな事が原因じゃないし、灯が階段から落ちたんだから。とにかく灯が怪我したのは、大学や学長代行や享くんに責任がある訳じゃないからね」

「そうそう」


千紗子も相槌を打った。


享の考えだと、それは違う。

また、例の黒幕が享のいない日を狙って起こした事に決まっているとしか思えなかった。

ただ、それを話してしまうのは灯が無理をしてでも自分が落ちたと話したのを否定した上に、むしろ家族に心配事を増やすことになってしまう。

ここは、この場をそのまま収めることにするしかなかった。


「灯、いつ目が覚めるかしら……」


千紗子は灯が以前、同じ様に頭を打って目が覚めるまで生きた心地がしなかっだ事を思い出していた。


「大丈夫!灯は強い子だから、すぐ目を覚ますよ」


崇は何の根拠もなく言い放った自分の言葉を後で後悔することになる。


しばらく灯の様子を見守るも一向に目覚める様子がない。

琢磨が持って来たおもちゃや絵本に飽きた頃、そろそろ夕飯の時間が近づいていた。

崇は千紗子に気を遣って琢磨と先に帰ると言い出した。


県南労災病院は完全看護体制をとっているも、灯の様な状況で個室の場合、家族の日中も夜間も付き添いは許諾されていた。

琢磨が小さいこと。崇が神主であることなどを鑑みて、家族の付き添いは難しいのでは?と享は自ら、夜間の付き添いを買って出た。

千紗子はその申し出を有り難く受けることにした。


「緊急事態じゃなくても、夜中でもいいから気になることがあったら連絡してね」

「目を覚ましたら、お知らせします」

「本当に色々有難う。気を遣って貰ってごめんなさいね。明日、朝、琢磨を幼稚園に送ったら、そのまま来るから」

「はい、分かりました」


「それじゃ、本当に宜しく頼むね」

「はい、失礼します」


崇達三人は病室を後にした。

廊下に出た後、千紗子に崇は尋ねる。


「ちぃちゃん、本当に享くんに任せていいの?灯のこと心配でしょ?琢磨の事なら何とかするのに」

「それは心配だしドキドキしてるけど……看護婦としては大丈夫って思えるし……」

「あ、そうか。外科の看護婦さんだったね」


「それに……目が覚めた時に、一番会いたい人がいた方がいいのよ」

「え?ちょっと物分かり良すぎな気がするけどな」

「あら?じゃ、崇くんは目が覚めた時、私じゃなくてお母さんの方がいいの?」


「ん……いや、もしそうなら、あの世だからね」

「もう!崇くんったら!」


笑い合う二人。

宮守一家は、今、灯と享を取り巻く環境がどうなのか分かっていない。


そうだからこそなのか……夫婦仲は円満で何よりだ。


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