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Just like starting over 〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃってます!!〜  作者: 優月菜


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第百二話 He’s still not quite himself.(いつまでもおかしい彼)===加筆あり


クリスマス以来の食卓を囲む享を含む宮守家。


「トール、ジュース入れて」

「はいはい、どうぞ」


享の隣を陣取った琢磨が、ずっと享に甘えている。

さすがに、自分の食事もままならない享に申し訳なく思った灯も千紗子も自分達がと声を掛けるが、琢磨が嫌がる。


「大丈夫です。ちゃんと食べてますから、ご心配なく。皆さん、ごゆっくり食べて下さい」

「そうだよねー!トール」

「だよねー、たっちゃん」


『何が、そうだよねートールだ!だよねーたっちゃんだ!』灯は、ますますムカムカして来た。

そんな様子に気づいた宮守夫妻は、申し合わせたかのように灯に、まずは崇が話しかけた。


「今日の午後のご祈祷の時、もし良かったら久しぶりに舞ってみない?」

「え?私が?」

「アルバイトさん、いい子なんだけど。今ひとつ灯みたいなキレが足りなくてね。悪くはないんだけど、その綺麗に舞う気迫が足りないというか……今もお昼誘ったんだけど、気を遣うから嫌ですなんて言われちゃって、もう帰りたいみたいなんだよね」


「急に言われても……覚えてるかどうかも」

「いや、まあ、それならそれで……」


崇が言いかけた時、いきなり享が横から


「灯さん、是非、巫女さん姿で舞って下さい!」

「え?」

「見せて欲しいです!」

「は?」


『やっとこっちを見た』と灯は思うも、享以外の全員が、もちろん琢磨も、その食いつきに驚いた。


しばらくして、灯は巫女装束に身を固め、午後からの端午の節句のご祈祷を受けるために訪れる家族を本殿内に誘導する。


その姿を外から垣間見る享は頬を紅潮させていた。

相変わらず、側には琢磨がいて享に遊びをねだっていた。


「トール遊ぼ」

「うん、分かった!お母さんにお話しして、公園にでも行こうか?」

「うん!話して来るね」

「うん、待ってるね」


本殿の中からは特徴的な雅楽の"越天楽"※1 が聞こえて来て、時折、神楽鈴※2 の音色が聞こえる。

最後に鈴祓い※3 の音がした。


『灯、とっても綺麗だ……やっぱり日本人なんだね。気持ちも身体も……僕は、どうしたらいいか分からなくなって来たよ』


琢磨が戻って来ると、享は一緒に近くの公園に遊びに出かけた。

そして遊び疲れて眠ってしまった琢磨を抱っこして帰りを急ぐ享。

その公園から戻る道、巫女さん姿のままで二人を迎えに来た灯に途中で出会った。


「灯?」

「たっちゃん寝ちゃったんだ」

「ん、疲れたみたい」

「Tall、子守に来たみたいになっちゃってごめんね」

「お迎えに来てくれたの?」


「Tallが、この格好見たがってみたいだったから……最後のご祈祷終わって、すぐ来たんだけど、草履が歩きにくくて遅くなっちゃって」


「有難う」

「え?こちらこそ……たっちゃんのお祝いだけのつもりだったのに、本当、色々、有難う」

「ううん、お迎えにその姿のまま来てくれるなんて思いもしなかったから、すごく嬉しい」

「あ、そう……」

「灯……」

「ん?」


両手で琢磨を抱っこしていた享は思わず、灯の首の後ろに、もう片方の手を回すと顔を上に向かせると、その唇にそっとキスした。


「Tall!」

「だって、あんまりにも綺麗だから」

「……こんな道の真ん中で……氏子さんにでも見られたら……」


「と、言いますか、親が見ちゃいました」


千紗子が笑いながら、しれっと立っていた。

享は大慌てで琢磨をしっかり抱きしめながら、頭を下げて謝った。


「わあ!すみません!」

「いいのいいの、分かってるから」


琢磨を享の腕から受け取る様に抱き取る時、千紗子は彼にだけ聞こえる様に囁いた。


「我慢もほどほどにね。灯も本当は待ってると思うよ」

「え?」

「じゃ、夕飯も食べて行ってね。二人は後から、ごゆっくり」


千紗子は振り向かずに帰って行ってしまった。


享は、灯と手を繋いでいるものの、今度はションボリのダンマリになった。


神社に戻ると立ち止まる。

灯が引っ張って家まで戻るとシブシブ玄関から中に入った。


「ただいま」

「あら早かったわね!」


千紗子が座敷から顔を出す。


「琢磨は寝てるから起こさなくていいから、ちょっと大人だけで一杯やりましょ」

「え?私はまだ成人してないよ」

「あなたは着替えて来たら?何ならお風呂入ってもいいわよ」

「えー!仲間ハズレ!?」

「まあ、いいからいいから」


灯は千紗子のその態度に享と何か話したいのだろうと察して、お風呂を借りる事にした。

実家なのだから着替えもある。

ちょうどTシャツにカッターシャツの組み合わせにジーパンを着たかったので、それに着替えて洗濯物を置いて行く事にする。

実家ならではできる事だ。


そしてお風呂から上がると何やら騒々しいのは感じていたが座敷に入ると、驚きの騒ぎに愕然とした。

クリスマスには無かったカラオケセットで崇が、十八番(おはこ)の高校三年生を歌っていた。


「お母さん、何これ!!昼間はなかったよね?」

「灯が享くんを迎えに行ってる間に届いたのよ。崇くんがお披露目したくて仕方なかったから、付き合って貰いたくて」

「なんだ、それ」


リクエスト曲が何曲か、もう入ってるらしい。

享はお酒に強いのは分かっていたが雰囲気酔いしている様に見えた。


『今日、帰れるのか?明日は休みじゃないんだけど』と、灯はため息が出た。





※1 越天楽

雅楽の中で最もポピュラーで有名な楽曲。神社でよく耳にする曲。

※2 神楽鈴

上から「3個・5個・7個」の計15個の鈴がついているもの。これは「七五三」の縁起の良い数字になぞらえている。柄の底部分には、緑・黄・赤・白・青もしくは紫の「五色布(ごしきぬの)」と呼ばれる長い布が垂らされていることが多く、舞う際に美しく揺れる。その役割は鈴の清らかな音色によって、その場や参列者を清め祓い、神様のお恵みや清々しい神気を引き寄せると言うもの。

※3 鈴祓い

神社のご祈祷で巫女さんが頭上でこの神楽鈴をシャシャンと鳴らしてくれる儀式は「鈴祓い(すずばらい)」と呼ばれ、心身を清める大切な儀式の一部。

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