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Just like starting over 〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃってます!!〜  作者: 優月菜


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第百話 He is not himself today.(いつもと違う彼)

いつもJust like starting overをご覧下さり、有難うございます!


そんなに長編にするつもりもなかったお話が、日々、増えていくPVとユーザー様の人数に後押し頂き、あれもこれまた思い出話をおてんこ盛りにした結果!!

何と今回で100話目を迎えることとなりました!


本当に本当に有難うございます╰(*´︶`*)╯


まだまだもう少しお話は続きます。

これからもお付き合いのほど宜しくお願いします。


優月菜


『Tall……元気なさ過ぎ』


駄菓子屋で一番大きな茶色の紙袋いっぱいに、お菓子を買い込み電車で移動する二人。

享は、ずっと黙り込んだまま一言も喋らない。


灯は、まずは放っておくことにした。

何かに集中して考えている享は、いつもこんな感じになるからだ。

ただ、日常的な話ではなく、講義のまとめの考察や論文の修正など集中している時だけに起こる現象だった。


『何がどうしたんだか……』

理由もわからず、ただ虫刺されは僕のせいだと言われただけの灯には、電車で隣の席に座りながら繋いでいる手を離さずにいようと思うことだけだった。


中目黒。


灯の実家に向かう。

今だに一言も言葉を発しない享。

茶色い紙袋を片手に抱え、もう一方の手は灯に繋がれ、まるで夢遊病者のように歩いている。


神社の鳥居をくぐった時、享は、はっとしたかのように灯を見た。


「目が覚めた?」

「え?」

「寝てたみたいだったから」

「あ……ごめん、考え事してて」

「集中すると、本当、何も目に入らなくなる時あるよね」

「あぁ、そうだね。ごめん」

「でも外ではなかったのに珍しいね」


享は答えない。

灯はまたちょっと聞いてみる事にした。


「それで答えっていうか、何か思いついたの?」

「いや……どうしたらいいのか……」

「まだ分からない?」


参道で一人で遊んでいた琢磨が二人を見つけると走り寄って来た。


「トール!」


享の足に抱きつく琢磨。


「あームカつく!たっちゃん、お姉ちゃんもいるんですけど」

「あかりんは高い高いしてくれないじゃん」

「今、何と?」

「あかりんは小さいから高い高いできないでしよ?」

「こら!お姉ちゃんに向かってあかりんって何?」


「僕がそう呼ぶから、たっちゃんは真似しただけだよね」

「うん」

「でも、たっちゃんにとっては灯さんはお姉ちゃんだから、お姉ちゃんって呼ぼうね」

「トールはトールでいいの?」

「いいよ」

「わかった!」

「いい子。灯さん、これ持って下さい」

「え?はい」


お菓子の袋に渡された灯。

享は、琢磨を肩車して、参道を本殿に向かって歩き出した。

『灯さんって、どうしちゃったんだ……Tall』


実家の方の玄関を灯が先に行って、開けて中に声をかけた。


「ただいま」


奥から千紗子がエプロン姿で出てくる。


「あら享くん!灯」

「ここでもTallが先か……」

「え?何?」

「なんでもないよ」

「どうしたの?何かあった?」


灯が、琢磨を肩車から下ろしつつ玄関の中に後から入って来た享を見ながら、


「Tallが、端午のお節句だから、琢磨のお祝いにって」

「えっ?そんなわざわざ?まぁ上がって上がって、今ちょうどチラシ寿司が出来上がって、崇くん……いえ神主が午前中のご祈祷が終わったらお昼にしようかって思ってたとこなの」

「突然押し掛けて申し訳ございません」


享が頭を下げた。


「え?あ、享くんは家族も同然なんだから、いつ来てくれてもいいのよ!そんな挨拶はなしなし!上がって上がって」


千紗子は笑い飛ばしながらも、灯の顔を見て『どうしたの?』という顔をした。

灯は『さあ?』という顔で返す。


座敷に移動する四人。


「こんなものしか思いつかなくて」


灯が座るように勧められた座卓に着く前に、千紗子に紙袋を渡す。


「あら、駄菓子?」

「あの頃は買ってもらえなかった駄菓子、ふふ」

「琢磨には普通に食べさしてるのにね。ごめんね、灯。あの頃はなんか変に完璧な母親じゃないとって思ってて」


「クリスマスの時、たっちゃんがチーリンチョコ※食べてんの見てびっくりした。けど、まぁお母さんがいいならいいんだ」


子供の頃、灯が食べることを許されていた駄菓子は、着色料などを使ってない。ミルクせんべい一択。みんなが挟むとおいしいと言ってた、あんずジャムでさえ買ってもらえなかった。


ただ、そこは、元看護婦。

栄養管理は厳しいのは変わっていないらしい。

座卓の上は、チラシ寿司以外に、蛤のお吸い物、鶏肉と大根の煮物や大きなだし巻き卵、お漬物の盛り合わせに、トマトで飾られた葉野菜のサラダが用意されていた。


「相変わらず、豪華な食卓」

「そんなことないよ。今日は特別」

「考えてみたらだけど、私たちは他の子供より贅沢だったと思う」

「え?」

「駄菓子は制限されてたけど、お母さんは手作りでクッキーとかケーキとか作ってくれてたもんね」


「まぁ、そういうことがオーブンとか家でも使えるようになって作れるようになったっていうか、流行ったっていうかマーガレットが教えてくれたし」

「メグママに教えてもらってたの?」

「そうよ、大体がそう。あなた達が幼稚園とか小学校に行ってる間に作りながら教えてもらってたのよ」


「そうだったの」

「マーガレットには精神的にも助けられたわ。今は享くんに感謝してる」

「Tallに?」

「灯を探してくれたこと、そのお陰で汐恩とも会えるようになって、サッちゃんともご縁が繋がったこと。琢磨にあんな優しくしてくれて、本当の兄弟みたいじゃない?」


琢磨に誘われて、享は五月人形の飾りを見に行き、その前に座り込み、琢磨の遊び相手をし始めていた。


「確かに、いつもたっちゃんは先にTallに駆け寄るし、私のことを今日なんて、あかりんって呼んだんだよ」

「あら、まぁ」

「笑い事じゃないよ。オムツの面倒まで見た、この私を差し置いてトールトールって」

「ヤキモチ?」

「えっ?」

「享くんを取られちゃう?」

「なにそれ?」


ふてくされる灯に、わざと大きな声で千紗子は


「あと少し手伝って」


そう言って台所に誘った。


「全部終わってるように見えたけど」

「あなた達の分の取り皿とかないでしょ?」

「あぁ、そっか失礼しました」

「って言うか、今日の享くん、ちょっといつもと違うみたいだけど大丈夫?」

「うーん、実は私も分からないんだ」


「あら、隠し事は無しに見えるのに」


そう言われて、灯は先程の話を千紗子に話してみることにした。



※チーリンチョコ

プチプチ占いチョコ。

薬のシートのようなPTP包装に入ったカラフルな糖衣チョコレート。 裏面のアルミをめくると「健康」「きんうん」「れんあい」などの占いの結果は◯・◎・△などが印字されている。


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