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更新遅くなりました。

活動報告にも書きましたが、今後の展開に思うところがありタイトルを変更しました。

また、冒頭の「プロローグ」も大幅に加筆修正しておりますので、一度読まれた方も目を通していただけると幸いです。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

その日の夜、夕食の席で珍しくアンリがルイーズに話かけてきた。


「ルイーズ、今日はアラン殿が来たそうだね」

「はい。午前中に騎士団の訓練場で稽古があったので、そのあとお昼をご一緒しました」

「ふぅん…ルイーズは本当にアラン殿と仲が良いんだね」

「い、いえ…それほどでも…」


自分から話を振ってきたくせに、心なしかアンリはムッとした顔をしている。……うーむ、解せぬ。


「──ルイーズ」

「はいっ!」


急に呼ばれて勢いよく返事をすると、アレクサンドルが複雑そうな表情でルイーズを見ていた。


「公爵領に、行きたいか?」

「…………」


行きたいかと言われれば、行きたい。でも、心配してくれている父の気持ちも分かるだけに、さすがに即答はできない。答えに詰まるルイーズを見て、ジャクリーヌがウフフと艶のある笑い声を上げた。


「もう、アレクったら。本当に気が利かないのね」

「……どういう意味だ?」


含みのある言い方をするジャクリーヌに、アレクサンドルが訝しげな顔を向ける。ジャクリーヌは緑色の瞳を細めて、さらに笑みを深くした。


「好きな人とずっと一緒にいられるのだから、行きたいに決まっているじゃない。それが乙女心というものよ。…ねぇ、ルイーズ?」

「お、お母様……!」


ジャクリーヌの爆弾発言にルイーズが慌てていると、隣のシャルロットが「いいなぁ…」と呟いた。……えーと、もしもしシャルロットさん?


「パーティーのときのおねえさまとアランさま、とてもステキだったわ。アランさま、おうじさまみたいで……」


ウットリした表情でそんなことを言うシャルロットに、ジャンが「本物の王子がここにいるんだけど…」と突っ込んでいるけれど、シャルロットの耳には入っていないようだ。


(…いや、そもそもアラン様は偽物の王子じゃないし)


かつて本物の王子様だった父と兄は、揃って微妙な表情だ。何だか情けない顔をしているジャンの向かいに座るカトリーヌが、ニコニコと笑いながら息子に声をかけた。


「シャルロットが言ったのはそう言う意味じゃないわよ、ジャン」

「……では、どういう意味ですか?」

「ルイーズにとっての王子様、という意味よ」

「お義姉様!?」

「ふふ…ルイーズったら照れちゃって。可愛いわね〜」


ころころと鈴を転がすような声で楽しそうに笑うカトリーヌ。恥ずかしすぎていたたまれずに視線を彷徨わせると、渋い表情のアレクサンドルと目が合った。何故か隣のアンリも同じ顔をしている。


「ジャンも、いつか誰かにとっての王子様になれるといいわね」

「っ、はい……」


ジャクリーヌの言葉に赤面するジャンは、ヴィクトワールのことを考えているのだろうか?ジャクリーヌはそんなジャンに目を細めると、「そういえば」とルイーズに顔を向けた。


「今グランシェールに東の国の商人が来ているのだけど、誰かから聞いている?」

「いいえ、聞いていません」

「そう。…実はね、その商人達が明後日ガルニエ家に来るらしいのよ」

「そうなんですか」


東の国というと、例の樱花(インホア)様の出身国だ。グランシェール王国と東の国は地図で見ると大陸の端と端、ちょうど前世でいうとヨーロッパと中国ぐらいの距離があった気がする。この世界の移動手段から考えるとかなり遠い気がするのだけれど、わりとよく商人が来たりするのだろうか?


「東の国の特産物には珍しい物も多いから私も久しぶりに実家に行ってみようと思っているの。ルイーズも一緒にどうかしら?」


思いがけない母からのお誘いを聞いて、明後日の予定を思い出してみる。明後日はちょうどガルニエ公爵の魔法実技訓練が入っていたけれど、公爵の都合でキャンセルになっていた。なるほど、そういうわけだったのか。


東の国の特産物というと、どんなものがあるんだろう?前世みたいに、螺鈿やべっ甲、珊瑚とかあったりするのかな?


「はい、ぜひ行ってみたいです!」


懐かしい工芸品が見れるかもしれないという期待にそう答えると、ジャクリーヌがにっこりと笑って頷いた。


「きっとそう言うと思っていたわ。ルイーズにガルニエ公爵邸自慢の庭も案内するわね」

「ガルニエ邸には素晴らしいお庭があるのですね」

「今の季節はそれほど多くの花が咲いてはいないけれど、広さや造形は王国一と謳われるほどよ」

「そうなのですね!楽しみです」


考えてみれば、王家に来てから他の家に行くのは初めてのような気がする。もしかすると、去年生まれたアルベールの子供にも会えるかもしれない。


食事を終えウキウキしながら部屋へ戻ろうとしたルイーズを、アレクサンドルが呼び止めた。


「あぁ、ルイーズ。ちょっと話があるから残っているように」

「…はい」


アレクサンドルとルイーズ以外の家族が部屋から出た後、アレクサンドルは近侍とルイーズの侍女を下がらせた。2人きりとなってしまった食堂で、父に手招きをされて向かいの席に座った。


「私が公爵領行きに反対している理由は知っているな」

「はい、知っています」


ルイーズがしっかり頷くと、アレクサンドルは少しだけ眉間に皺を寄せた。


「…知っていても、行きたいと?」

「はい」

「それは…アラン殿と一緒にいたいから、ということか?」


ルイーズが公爵領に行きたい理由は、いくつかある。もちろんアランと一緒にいたいのもあるけど、王都以外の場所に行ってみたいという気持ちもある。そして何より大きな理由は、ゲームストーリーだ。もしストーリー通りに進んだとしたら、来年の夏に公爵領で起こるであろう事件。それを阻止するために、何としてでもアランと一緒に行きたいのだ。


ルイーズは、アレクサンドルの濃いサファイア・ブルーの瞳をしっかり見ながら口を開いた。


「……それも全く無いとは申しませんが、私はこの国の王女として王都以外の土地も見てみたいと思っています。もちろん、このところ国境付近の治安が悪いことは承知しています。今、私は自分の身を自分で守ることができるように訓練を行なっています。しかしどんなに訓練を重ねたとしても、実際には魔導士団の方々のように真っ当なやり方の相手ばかりとは限りません。日常生活において成果を試す機会がほとんどない以上、今回のことは良い機会だと思うのです」


ルイーズの言葉を聞いたアレクサンドルが、少し驚いたように目を瞠った。


「…公爵達との訓練の様子は聞いている。お前の希望でかなり実践的な内容をやっていると聞いたが…そういうことだったのか」

「……勝手なことをして申し訳ありません」

「いや、構わぬ。…それよりも、ルイーズ」

「はい」

「お前がそこまで考えているなら、行かせてやってもいい。──ただし、条件がある」

「何でしょうか?」


真っ直ぐに見つめるサファイア・ブルーの瞳が、キラリと光った気がした。


「私と手合わせをするのだ。私を相手に一撃でも入れることができたなら、公爵領行きを許可しよう」

「え……お父様に、ですか?」

「そうだ。……もしや、私が戦えないとでも思ってはおるまいな?」

「ま、まさか!そんなわけありません!……でも、国王相手に攻撃など……」


とんでもないことを言い出した父に、冷や汗が出てくる。誰よりも魔力が強いと言われるグランシェール王国の国王が弱いはずがない。というより、むしろ最強なんじゃ……!?


「本人がいいと言っているのだ。…そうだな、期限は来年の春。領地視察の2ヶ月前だ」

「………わかりました」


急にハードルが上がりまくってしまったことに動揺しつつ食堂のドアから出ると、ドアの外でマルセラとモニークが待っていた。


「殿下…戻られたら、湯あみをなさいますか?」

「そうね。そうしようかしら」

「はい、では私は準備して参ります」

「よろしくね」


ペコリと頭を下げて去っていくモニークを見送り、壁際に控えるマルセラを見る。父との手合わせの前に、まだまだやるべきことがたくさんある。


「……ねぇ、マルセラ」

「はい、殿下」

「本格的な戦闘訓練をするのに、何が一番効率がいいかしら?」

「……殿下が、訓練なさるのですか?」

「えぇ。魔法だけでなく、物理攻撃にも多少は対応できるようにしておきたいの」


ルイーズの答えにマルセラは少しだけ考えて口を開いた。


「それでしたら、私の伯父にあたるモロー子爵家の当主グザヴィエが一番の手練れでございますので、彼に助言を貰うのがよろしいかと」

「そう。……明日お父様にきいてみるわ。許可が出たら子爵殿に連絡お願いできるかしら?」

「かしこまりました。書状をしたためます」

「ありがとう。いろいろとすまないわね」

「とんでもございません。……私も殿下の護衛として、より一層の精進をいたします」

「ふふ、頼りにしているわ」


まだ10歳の自分にどこまでできるのかは正直よく分からない。でも、フィリップとアルベールの手合わせを見た限りでは、魔導士といえども基本的な戦闘訓練ができていないと、相手の攻撃を受けてしまったり、自分の攻撃も正確に当てることができないと感じた。だから、来年の夏にある程度は使い物になるくらいには鍛えておかないと。


「さぁ、これから忙しくなるわよ」


新たな目標を胸に、ルイーズは部屋へと戻っていくのだった。


ここまでお読みくださいまして、どうもありがとうございました。

誤字・脱字報告ありがとうございます!何度も見直していても間違っていることがあるのだなと再認識しました。他人の目って大事ですね。


いよいよ仕事が立て込んできて、平日は全く時間が取れなくなってきました。年末に向けてさらに忙しくなる予定ですので、週末くらいしか執筆できなくなると思われます。ボチボチと頑張っていきますので、どうか気長にお付き合いください。

少しでも「面白い」「続きが読みたい」と感じていただけましたら、評価・ブクマいただけると大変励みになります!!

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