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※2019年9月7日追記:
内宮の建物内部の造りを少し変更しました。あまりストーリーには関係ありませんが、一応お知らせまで。
ひととおり王家の方々との挨拶を終えた後は、そのまま昼食会となった。ルイーズの隣に座りたいとジャン王子が駄々をこねたため、席替えののちルイーズはジャクリーヌとジャン王子に挟まれる形になった。ジャン王子の向こう隣はカトリーヌである。
来た時には眠っていたシャルロット王女が目を覚ましてからは更に賑やかになり、途中で急務のため退席せざるを得なくなった国王が王妃に宥められながら名残惜しそうに出ていく様子は、失礼ながらちょっと可愛いと思ってしまった。
(思ったよりも歓迎されているみたいでよかった。これならなんとかやっていけそう……)
生まれですぐに認知されたにもかかわらず8年間も王族だと公表されずにいたことで、王家と産みの母であるソフィーとの間にはわだかまりのようなものがあるのかもと心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。
それから少しして、王太子一家が退席することになった。王太子は政務のため、ジャン王子はお勉強の時間らしい。将来の国王ともなると、こんな小さい頃から勉強しなければならないのか。元の世界ではまだ幼稚園に入ったばかりくらいなのに…。
「そういえばまだルイーズに"お兄様"と呼んでもらっていなかったね。フィリップと区別するために、やはり名前をつけてもらおうかな」
清々しいほどの爽やかな笑顔で、去り際にさりげなくアンリがぶっ込んできた。
(フィリップ殿下でも10歳差なのに、王太子殿下は歳が離れすぎてて"お兄様"って呼びづらいんだけど……分かってて言ってますよね?)
キラキラスマイルでルイーズの返事を待つ王太子からは、アランと同じ匂いを感じる。……えぇ、爽やか腹黒系は確かに大好物ですよ?でも好物ばかりでも、なんだかお腹いっぱいっていうかね??
(フィリップ殿下も俺様っぽいし、強引なところは高貴な方々にありがちな特徴なのかも…)
今は可愛らしいジャン王子も大きくなったらそうなってしまうのかと考えると、少し残念なような。……いや、それはそれでちょっと萌えるかも。
「今日はお時間を取っていただき、どうもありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしていますわ…アンリお兄様」
ルイーズの挨拶を聞いて、アンリは「あぁ、私も楽しみにしているよ」と微笑んだ。
(え……?)
その微笑みの中に、ほんの僅かに苦しそうな表情が混ざっていたような気がしたのだが……それも見間違いだったのかと思うくらいに、すぐに完璧な王族の顔に戻ってしまった。
思えばお茶会の時にも、王太子は他の人には分からないほど一瞬だけルイーズに視線を寄越していた。ルイーズを引き取ろうと国王に進言したのも王太子だという話だが、さっきの表情は気のせいだったのだろうか?
そんなことを考えていたら、急にドレスに重みを感じてルイーズは我に返った。見ると、ジャン王子とシャルロット王女が2人してルイーズのドレスを引っ張っている。
「ルイーズおねえさま、またあえる?」
「あえるー?」
「はい、会えますよ。また一緒に遊びましょうね」
「はい!!」
「あーい!」
ジャン王子の言葉を片言で繰り返すシャルロット王女。2人とも天使のよう。…ここは天国か。うん、きっとそうだ。
「2人とも良かったわね。ルイーズちゃん、また来週衣装選びで会いましょうね。今から楽しみだわ」
「はい。よろしくお願いします、お義姉さま」
最後にカトリーヌに挨拶をすると、フィリップも席を立った。
「俺たちもそろそろ行くか。まずこの内宮をざっと回って、それから王城内の施設を案内しよう」
「はい」
フィリップに頷くと、隣に座っているジャクリーヌがルイーズの手を両手でガシッと握った。
「今日は会えて嬉しかったわ、ルイーズ。カトリーヌも言っていた通り、来週の衣装選びには私も同席させてもらう予定よ。今まで息子しかいなかったからつまらなかったのだけれど、可愛い娘ができて本当に嬉しいのよ。ルイーズは何でも似合いそうだし、たくさん買ってしまいそうだわ〜」
「……母上。楽しそうなのはいいですが、くれぐれもルイーズで遊ばないようにしてくださいね。母上とカトリーヌの着せ替え人形になるなんて、ルイーズに心から同情しますよ」
「あら、アンリったら。着せ替え人形だなんて人聞きの悪い。ルイーズがさらに可愛くなるお手伝いをするんじゃないの」
冷静にツッコミを入れる王太子とすっとぼける王妃とのやりとりも、何だかデジャヴ……。
ジャクリーヌに見送られながら王太子一家に続いてドアを出たところで、目の前に手が差し出された。
「はぐれたら困るからな。しっかり握っておくんだぞ」
「…はい」
(こういうことが自然とできるところが、やっぱり育ちがいいというか、王子様なんだよね……)
アランよりも一回り大きな手は、剣ダコなのか少しゴツゴツしているところも男の人という感じがする。フィリップと一緒に歩き出すと、どこから出てきたのか、侍従らしき人が音もなく滑るようにそっと背後に控えながら付いてきた。
(さすがは王家の従者。動きが忍びみたい……)
「さっきの部屋は、俺たちがいつも食事を取っているところだ。どうしても外せない用事がある時以外は、基本的に朝晩は皆で食べることになっている。昼はそれぞれ職場が違うからバラバラなことが多いな。ルイーズはジャンやシャルロット達と一緒に食べることになるだろう」
「そうなんですか?」
「おそらくな。俺も子供の頃は兄上とたいてい一緒だった」
(なるほど、私は甥っ子姪っ子と一緒の子供枠に入るのか。まぁ、大人に囲まれるよりはその方が気楽でありがたいかも)
「地上階には食堂、居間、浴場などの共用の部屋、2階には国王と王妃の部屋と俺達の部屋、3階は王家の史料や書物、宝物が保管されている部屋、肖像画をはじめとする絵画の間などがある」
それぞれの部屋にはバス、トイレはもちろん完備されているのだが、ここにある浴場というのはジャクジー付きの大浴場のことらしい。もちろん王族専用。この世界でジャクジー付きのお風呂に入れるなんて夢のようだ。
「兄上達は離宮に住んでいる。王城の敷地の中ではあるが、この建物からは少し離れている」
内宮に住んでいるのは、国王と王妃、そして未婚の子供のみ、ということになるらしい。
「フィリップお兄様は来年ご結婚されると聞きましたが、ご結婚されたらどちらに住まわれるのですか?」
ゆくゆくはヴィルニヨン大公を継ぐことになるとは聞いているけれど、大公夫妻はお元気でまだ現役で活躍されているらしい。
「俺は王太子じゃないから、王都内の離宮を1つもらうことになるだろうな」
「お兄様、1年後には出ていかれるのですね……」
せっかく兄が出来ると思ったのに、1年間しか一緒にいられないのか。なんだか寂しい。
思ったことが顔に出ていたのか、ルイーズを見てフィリップがニヤリとした。
「…どうした、寂しいのか?」
「はい、お兄様とは1年間しか一緒にいられないのかと思うと…」
「そうかそうか。じゃあ、俺がいなくなってから寂しくないように、これから1年間たっぷり可愛がってやろう」
「お、お兄様……!?」
「ハハッ、楽しみにしてろよ」
可愛がるって具体的には何をするのか気になるけれど、とても聞く勇気はない。
話しながら階段を上って行くと、2階の廊下に何人か人が立っていた。近衛兵に付き添われているところを見ると、侍従とかではないようだ。
「お兄様、あの方達は…?」
「あぁ…今ちょうどお前の部屋を改装しているところだから、その関係者だと思うぞ。少し見てみるか?」
「はい、見てみたいです!」
近づいていくと、こちらに気づいた近衛兵が揃って敬礼をした。その中でも少し年嵩の近衛兵がルイーズをチラリと見た。
「殿下、そちらの方はもしや…」
「あぁ、この部屋の主となるルイーズだ。お前達もちゃんと顔を覚えておくように」
「はっ。…王女殿下、私は第3近衛団副団長デュカスと申します。今後この者達と共に殿下の護衛を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます」
「は、はい。よろしくお願いします」
王女殿下と呼ばれるのはなんだか面映ゆいけど、慣れるしかないのかな…。デュカス副団長に合わせて他の近衛兵も胸に手を当て、頭を下げる。ビシッと動きが揃っていてすごい。近衛の制服も素敵だし、みんなカッコいいなぁ。
ちょっと覗いてみたドアの向こうは、ぱっと見ただけでもかなりの広さだ。部屋の奥にもドアが3つぐらいあるから、ここだけでマンションの一戸分ぐらいあるよね?しかも部屋がかなりゴージャスだから、ホテルのスイートルームみたいな感じなのかな?
「それじゃ、外宮の方に行ってみるか」
「はい」
「失礼ながら殿下方、外宮においでになるのでしたら自分が──」
「あぁ、その必要はない。この後の護衛はバルドに頼んである」
「はっ。出すぎた発言をいたしました」
「いや、気にするな。お前達はここの警護をしっかり頼む」
「かしこまりました」
デュカス達近衛兵に見送られながら、ルイーズの部屋(仮)を後にする。「滅多に外部からは入れない場所だからな、ごくたまに調度品なんかを盗む輩がいるんだ。そのための警護でもある」とフィリップが小さな声で教えてくれた。
そしてこの後訪れる王城内の魔法訓練場で、ルイーズは衝撃的な事実を知ることになるのだった。
終わるといいつつ、なかなか終わらない第1章…。
告知なくしれっと副題をつけたのですが、お気づきでしょうか?
見てお分かりの通り、王城に行くタイミングで第2章スタート予定です。
あと少しだけ「伯爵令嬢編」にお付き合いください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




