70話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」⑧
20160430公開
織田店長直伝の改良型炎弾はこれまでとは比較にならない威力を発揮していた。
なんせ、弾かれない・・・
これまでの炎弾だったら弾かれる様な角度でも、馬鹿でかい恐竜もどきの皮に食い込んで行く。
ひたすら撃っていたら、チエッチの声が聞こえた。
≪押し潰せ!≫
チエッチ、怖い・・・
均衡状態の様に見えても、ほんのちょっとの出来事で一気に形勢が決まってしまう事が有る。
今がそうだった。
最前線を支えるべき『巨大害獣』の圧力が俺たちの火力によって消え失せてしまったせいで、敵囮集団の戦列は崩壊の危機に晒された。
例えるなら、ラクビーのスクラムを組んでいたら、チームでも馬力の有る屈強な選手で揃えたフロントローがいきなり棒立ちになった様なものだ。
セカンドローがいくら頑張ったとしても、やつらのセカンドローは所詮は『大型害獣』でしかない。こちらの『大型敵獣』の圧力に耐える事など不可能だ。
更に、千恵ちゃんが冷徹なまでのタイミングで前に圧力を掛ける命令を出した。
≪押し潰せ!≫
一斉に『大型敵獣』と『標準敵獣』の圧力が増した。
こうなると『巨大害獣』を失った『大型害獣』どもに挽回は不可能だ。
あっという間に俺たちの前進速度が加速して行く。
『敵獣』が作る『肉体のカーテン』が凄まじいほどのうねりを見せていた。
いや、本当によくもまあ足が取られ無いものだ。かなりの数の瘤が前縁から後ろに流れて行く。
まあ、俺の愛馬『膝突栗毛』もあっさりと乗り越えているんだが。
結局、ずっと乗って来た『益獣』に名前を付けた。
俺は『ウラヌス(そう、あのバロン西の愛馬だ)』にしようとしたんだが、千恵ちゃんに命名権を横取りされた。彼女しか知らない知識だったが、『鬼島津』こと島津義弘の愛馬だったそうだ。
ちなみに、フルネームが長いので、普通は『膝突』と呼ぶ事にしている。
敵の集団を突破した時点で、ヤツラの目論見は完全に崩壊した。
囮が囮として機能せずに瓦解してしまったのだ。
完璧に喰い散らかされた囮は只の烏合の衆に成り下がる。
≪右か左かは千恵ちゃんに任せる≫
≪だったら、右を先に喰います! ラカ、しばらく真っ直ぐ向かって。それと『チイサイノ』半分を残党狩りに残していいですよね?≫
≪構わないよ、千恵ちゃん≫
≪さすが、てんちょーさん。話が早いです≫
後ろを振り返ると、俺の視線に気付いたのか、『ラカ・クヌ・ナク』の背中で千恵ちゃんが手を振って来た。
俺はそれに応えて軽く手を上げた。
俺は指示を横取りされた格好だが、意外としっくりとしていた。
多分、彼女はこっち方面の才能が有る。それを伸ばして上げるのも大人の務めなのかもしれない。
まあ、伸ばしたところで幸せになれるのか? は疑問だが。
≪『ラカ・クヌ・ナク』、こっちの被害は?≫
≪『オオキイノ』が8、ハンノウガナイ。『フツウノ』ハスベテハンノウガアル≫
さすがに『巨大害獣』を前面に揃えて待ち構えていた敵集団に正面からぶつかったので損害は出ている。
だが、これで敵の『巨大害獣』はほぼ潰した。
敵のミスはこちら側の突破力の見積もりを間違えた事だろう。
確かに『巨大害獣』は『大型敵獣』よりも遥かに大きい。
『大型敵獣』の体長5㍍に対して『巨大害獣』は8㍍に及ぶ。
その体格差は大人と4歳児ほどの差になる。例えば身構えた大人に4歳児が真正面からぶつかってひっくり返す事は不可能だ。それくらいの体格差がある。
だが、それは同じ身体性能を基とした場合だ。
『敵獣』と『害獣』の決定的な差はピコマシンを取り込んだ進化をしているかしていないかだ。
『害獣』がピコマシンを取り込んで個体で進化をして種として固定化してしまったのが『敵獣』だ。筋肉そのものの質が変わってしまっている。
それに加えて俺たちの火力が加われば、普通では考えられない突破力を持つ事になる。
≪ちょい左、3、2、1、今! 速度増し、速駆け足、今!≫
もちろん油断は出来ないが、ここまで追い込んだのならば可能な限り数を減らしておく事にする。
だが、時間はそれほど掛けられない。東側を侵攻している集団が未だ残っているからだ。
幸女王が侵攻を食い止めようとしているだろうが、不安は残る。
そして、その不安は的中する・・・・・
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