58話 「戦力増強」
20160417公開
20160417彼我数及び比率修正
織田店長は時々ごく短時間だけど『フリーズ』をする。
チエッチいわく、多分、インターフェイスと“お話し”をしているんじゃないかと言っていたけど、実際に自分が同じ目に遭うと、パニックになってしまった。
なんなの、この気持ち悪さは?
聞こえている様に感じるけど、頭の中に直接語り掛けて来られる感覚に眩暈を起こしそうだった。
チエッチの様子が気になったので目を開けて見ると、チエッチは笑みを浮かべていた。
≪3国の対策会議の様子はどうなっている?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。今の体制を作った採集サンプルMale-3の現状が不明の為に小さな混乱を起こしていますが機能はしています≫
≪俺の声を会議場に流す事は可能か?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。可能です≫
≪ならば、流せ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。3、2、1、now≫
≪こちらはオダノブナガだ。現在、『西の国』の放棄した南西部で『敵獣』率いる群れと行動を共にしている。可能な限り、南部に向かってから外敵に遅延行動を強いるが、各国は最大限の警戒を取って欲しい。また、可能な限り早期に『中の国』から牛肉の提供を受けたい。明朝、もう一度連絡をするが、昼頃には受け取りたいので準備を進めておいてくれ≫
俺は一方的に話した後で、通信を切った。
≪3国の反応はどうだ?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。『中の国』の女王が採集サンプルMale-3の要請に応えるべく動き出しました。『西の国』の王と『北の国』の大統領は非常呼集を掛ける方向で動いています≫
≪まあ、そんな所だな≫
「『ラカ・クヌ・ナク』、牛肉は戦う前に用意出来そうだ」
「タスカル」
そう言ったこの星で唯一とも言える『敵獣』の表情には安堵の感情が出ていた。
何度も言うが、何となく分かるだけだ。俺は偉大なムツゴ●ウ先生では無い。
「量は分からないし、詳しい事は明日の朝に決める。取敢えず、明日は南に居るという敵対的な『敵獣』の群れを併合するぞ。現状の数では勝ち目が薄い」
「コノムレノボスハノブナガサンダ。シタガウ」
『ラカ・クヌ・ナク』がそう言って下げた頭の角度が深くなっていた。
気が付けば、俺は『敵獣』と『害獣』で構成される集団のボスになったらしい。
その後、いくつかの会話をした後で、2人の女の子がちょっと離れた場所で持って来ていた部材を組み立て始めた。
そう言えば、彼女たちは『疎開支援チーム』で1・2を争う『水創生』魔法の使い手だった。
豊富に生み出せる水に温度を調整した炎弾を投入する事で、シャワーの為のお湯を生み出していた。
その恩恵を受けた俺たちは2日に1晩はさっぱりとした気分で寝たものだった(毎日シャワーを浴びる特権は女性陣だけのものだった)。
なるほど、彼女たちが持って行くと言っていた道具は、シャワーの為のものだったのか。
俺たち男性陣はその間にテントを設営し、女性陣の後でシャワーを浴びてから爆睡した。
普通ならば歩哨を持ち回りで立てるべきなのだろうが、『ラカ・クヌ・ナク』を信用して体力の回復を優先させたのだ。裏切られた時はどっちにしろ同じ結末を辿ると割り切ったから出来た暴挙だった。
翌朝は快晴だった。
テントに差しこむ朝日が眩しくて、日の出直後に目が覚めた。
石井青年も同じだった様で、もぞもぞとした後で頭を上げた。
「おはよう。さあて、今日も強行軍だな。出来るだけ南下しておきたいし、遭遇する『敵獣』の群れは可能な限り傘下に収めたい。ハチヨンを使う」
これまで、その威力から封印していた84㎜無反動砲(略記84RR)を使う事を明言した。
「遭遇する群れのボスを跡形も無く吹っ飛ばした後で、硬直してる『敵獣』や『害獣』を『ラカ・クヌ・ナク』の支配下に置く」
「店長って、本当に過激ですね」
俺は笑顔を浮かべながら士長の思い違いを訂正した。
「失敬な。これこそが生命を無駄に殺生しない作戦だ。1頭の死によって残りは全て生き永らえるんだよ? 動物愛護団体から感謝状を貰えるレベルの優しさだよ」
2人の女性は俺たちよりも早起きだった様だ。
テントから出て行くと、早くも身支度を整えていた。
朝食と身支度を整えた後で確認すると、幸女王からは20頭分の牛肉が輸送の途に就いた事と、『西の国』から派遣された指導員から直接訓練を受けた最精鋭の2個大隊を中核とした軍集団を東の要衝に派遣するとの報告がされた。
『西の国』と『北の国』は総動員体制に移行した様だ。
これでも駄目だったら、その時は人類の滅亡だ。
テレスコープ・サイトの中で、『ラカ・クヌ・ナク』並みに巨大な『敵獣』がこちらの様子を伺うかの様に視線をあちこちに動かしている。
3倍の倍率だから、近く見えるが実際は600㍍先だ。
接触した『敵獣』の群れは、予想以上に戦力が大きかった。
戦力としての『ラカ・クヌ・ナク』が率いる群れは弱体化が進んでいたので、このままぶつかると負ける可能性も有った。
なんせ、最終的に集合した『ラカ・クヌ・ナク』の群れの『敵獣』は若い個体が多く、身体が成長し切れていない個体が半数を占めていた。牛の数が少なくなった事でピコマシンの蓄積が進めれなかった事が原因だろう。
対して、これから併合しようと狙っている群れは『害獣』が少ない。標準以上の大きさの『敵獣』が200頭弱で、それより大きな『敵獣』が100頭強だ。行動を共にしている『害獣』は100頭ほどだ。
≪ノブナガサン、イチニツイタ≫
≪店長、こっちも配置に就きました≫
≪てんちょーさん、こっちもいつでも行けるよ≫
1時間後には、俺たちの戦力は『敵獣』の数で考えると4倍近くに膨らんでいた。
だが、それでも敵の『害獣』との比較をすると、頭数では4割でしかなかった・・・・・
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