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57話 「失敗に終わった再現計画」

20160416公開

 一緒に旅をしている『敵獣』(確か「ラカ・クヌ・ナク」と言っていた)がてんちょーの言葉にうなずいた時に、鈴木千恵は何故か納得した。

 この子は何故か子犬を思い出させた。好奇心が旺盛で、こちらの事をちょくちょくと見ている事に気付いていたからだ。

 勿論、彼女の勘はもっと深い所まで分かっていた。

 仲間を全部殺されたにも拘らず、敵対心が無さ過ぎた。




≪さて、そろそろ教えてくれるのだろうな? コイツは何者だ?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。『南の国』で行われていた『益獣ドッグ化計画』の生き残りです≫

≪『益獣ドッグ化計画』? 名前で判断すれば、「狼」を「犬」にしようとしていたのか?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。こちらの人類にとって、地球の「犬」は沢山の物語の中に出て来る人類のしもべです。自分達も手に入れたいと考えたと推測されます。計画により5世代に亘って『害獣』の改良を重ねましたが、最終的には頓挫しました≫

≪その答えはプラントは関与していないと受け取っていいのだな? それと何故頓挫した?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。最初の質問は肯定。餌や躾、性質の選抜などの様々な試行錯誤によって『益獣ドッグ化計画』が産み出したのは『敵獣』と化した『害獣』でした。施設はこの最初の『敵獣』によって破壊されました≫

≪で、何故、コイツはここに居る?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。『敵獣の始祖』が施設内に発生した時に、餌を牛肉のみにされていたグループに属する彼女も、牛肉に含まれるピコマシンの蓄積でほぼ『敵獣』に相当する程の進化を遂げていました。騒動の際に「ラカ・クヌ・ナク」は自分たちの飼育係を連れて逃げています。その後、数年間に亘って逃亡生活を過ごした後、この地に根付きました。飼育係の指導により、この付近の『敵獣』と『害獣』を統合して現在に至ります≫

≪自分の飼育係をわざわざ逃がすくらいに人間に懐いている奴がどうして俺たちを襲った?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。飼育していた牛の大量死が切っ掛けです≫

≪まさか、牧畜までしていたのか?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。肯定。『南の国』崩壊時に飼育係の指導の元、数十頭の牛を確保しています。飼育係は「ラカ・クヌ・ナク」の教育の続行と牛肉のみを与える『益獣ドッグ化計画』をこの地で続けましたが、3年前に死亡しました。その1年後に病気で牛の大半を失った彼女の群れは弱体化の道を辿りました。それに伴って新たに勃興した『敵獣』の群れに脅かされた事も有り、今回の襲撃は彼女にとっては最後の賭けだったと推測されます≫


 俺は脱力感に見舞われた。

 先に言ってくれていれば、ここまで徹底的に叩く必要は無かったかも知れない。

 まあ、あくまでも結果論でしかないが。

 あの状況では仕方ない判断と分かっている。

 

「「ラカ・クヌ・ナク」、どれだけ俺たちの言葉を喋られる?」

「スコシダケ」


 その言葉に石井青年とあずさ君が驚いた。

 まあ、当然だろう。人間を食べる『敵獣』が人間の言葉を喋ったのだから。

 だが、千恵ちゃんは平然としていた。


「魔法も死んだ飼育係に習ったのか?」

「ダグサンハ、イッパイノコト、オシエテクレタ」

 

 喋られるといっても完璧に喋れる訳では無いらしい。

 それと死んだダグという飼育係もよほどコイツに入れ込んでいたのだろう。普通なら魔法という人類だけの優位点を教えるなんて有り得ない。もっとも炎弾を1度も使わなかった事と先ほどの炎弾の習得に興味を示さなかった事から、攻撃魔法は教えずに防御魔法だけを教えたのだろう。


「今回の騒動が終わったら、牛を貰える様に交渉しよう」

「ムレガタスカル」


 牛の方が『益獣ポーク』よりも貴重なんだが、コイツの方がもっと貴重だ。

 まあ、その前に強大な外敵を排除する必要が有るのだが・・・


≪3人と「ラカ・クヌ・ナク」にインターフェイスのインストールは可能だな?≫

≪採集サンプルMale-3の質問を確認。機能制限を施されますが可能です≫

≪相互の通信機能が有ればいい。どうせ、インターフェイスとの直接通信が不可能なんだろう? あと、視界外でもみんなのステータスを俺が見れるように出来るか?≫

≪採集サンプルMale-3の質問と要請を確認。肯定。可能です≫


「さて、今からみんなに新しい機能が付与される。さっき言った『画期的で役立つ魔法』だが、使い方次第では余り役に立たない。でも使いこなせば、敵に対して圧倒的に優位に立てる」


≪インストールを実行してくれ≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。実行します≫


 みんなが驚いた顔になる。「ラカ・クヌ・ナク」だけは何となく分かる程度だったが、それでも分かるだけコイツは人間臭いと言える。


≪てんちょーさん、聞こえますか?≫


 一番最初に通信して来たのはやはり千恵ちゃんだった。


≪聞こえるよ、千恵ちゃん≫

≪これ、便利ですね。待ち伏せする時とか≫


 この子には驚かされぱなっしだ。

 

 まさしく、俺が考えている戦術の1つを見抜いていた。

 本当にこの惑星は驚きに満ちている・・・・・

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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