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平成之半妖物語  作者: アワイン
7-2章 知っていく一面深化していく絆
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1  判明した一片の情報

 組織の『きさらぎ駅』の改札口前にて。


「  ■ちゃ……って違う! はなびちゃん。今日も本当に登校して大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。真弓ちゃん。高島澄さんと田中奈央ちゃんもいるから……」


 両手をぎゅっと掴んで泣きそうになっている少女がいた。白椿(しろつばき)夏椿(なつつばき)のような可愛らしい同年代の少女だ。 ■をもの凄く心配している。肌の手入れを欠かずしているのか肌は白い。髪を結び一見大人しそうであるが、リアクションや心配ようからして見た目だけである。

 三善真弓。話に聞いていた少女であり、名無しの少女の状態を聞いた日から真っ直ぐに彼女の元に向かって、全力のスライディング土下座をした。当然、足は擦りむいて血だらけにはなった。真弓の足は治療され、無傷に戻っている。

 組織の本部で過ごしている仲間であり、奈央と同じぐらい快く接してくれる優しい少女だ。

 5月上旬。登校前に今日も心配するように真弓は声をかけてくる。出会った日から続いているため、ほぼ日課になっている気がした。


「ぐぇ!」


 そんな彼女の首根っこを掴み、引き放す存在がいた。


「馬鹿。彼女が困っているだろうが。……悪いな、はなびさん。真弓は責任を感じているんだ。悪く思わないでくれ」


 一見はアスリートに間違いそうである。灰色に近い黒髪は少し長く、一つに結われている。普段着でも差し障りのない格好をしており、メガネを掛けていた。直文とはまた違ったイケメンであり、その彼は ■を開放させていた。

 佐久山啄木。直文と同じ組織の半妖であり、三善真弓は保護されている陰陽師である。心配そうに真弓は ■を見る。


「いえ、気にしないでください。佐久山さん。真弓ちゃんに心配してもらえるほど、前の私と仲が良かったのがわかりましたから」


 にこやかに答え、啄木は仕方なさそうに真弓の首後ろを放す。真弓は解放されたが、彼は ■に近づかせなかった。迷惑をかけると、理解しているからだ。

 名無しの彼女は真弓の事情を教えて知っている。彼女は陰陽師の派閥争いの中にいたある一派の陰陽師だった。今は自ら裏切っており、その他の仲間も組織に保護されている。初めてその名前を奪われたのは、陰陽師の派閥争い巻き込まれていたようなもの。

 名前を取ったのは別の派閥であり、真弓の所属していた派閥とは敵対している。だが、名を取った派閥は既に機能しておらず、真弓が所属していた派閥の陰陽師が悪さをする者のみ捕縛している。故に、残党や生き残りは活動する気もなく術もない。

 はずだった。

 真弓は申し訳なさそうに、顔を俯かせる。


「……でも、同じ陰陽師の端くれとして許せないし、もっとしっかり目を光らせておくべきだった。……まさか、革命派の陰陽師の一人が動いていたなんて……」


 名無しの彼女を狙った生き残りがまた狙ったのだ。

 革命派。組織は復権派と呼んでいる。穏健派と組織から呼ばれる場に真弓は所属していた。現在では真弓には復権派について関係はない。だが、同じ陰陽師として申し訳ないと思っているようだ。

 落ち込む白椿の少女に、啄木は頭をぽんぽんと軽く触ってくれる。


「お前が気にすることじゃないって。それに、復権派のそのやつがどんな状況で直文を知ったかのほうが気になるよ。あいつ復権派の本部を急襲して重要人物や本部にいた仲間をほぼ屠ったあと、各地にいた復権派の仲間をわからないように抹殺していった。だから、直文をわかるはずないし、見ているはずない」

「……だとしたら、なんで彼女と直文さんのことを知っているの?

普通の『ほしがりさん』ならこんなことならないと思うけど」


 真弓の疑問に、啄木は息を吐く。


「お前の裏切った派閥が裏で動いて、利用している可能性もある。何にせよ、力がある直文の加護を通り抜けたことは相手側が強力な術を操れる奴らばかりに限られるということだ」


 答えた瞬間に、真弓は怒りとも悲しみとも取れる複雑な顔をしていた。

 真弓が穏健派を裏切っている理由は、穏健派が名ばかりだからだ。仲間すらも道具として利用している。彼女は正義感も強く自分から裏切り、ここで保護されていた。真弓の複雑な表情から色々と察せられる。保護されている理由も様々で、立場的に辛いのだと。真弓の心情を察し、啄木は頭から手を放してフォローを入れる。


「だから、お前が気にすることじゃないって。お前が裏切った信じた仲間が悪い陰陽師になっちゃったからで、ちゃんといい陰陽師もいる。真弓、大丈夫だ」


 彼女は不安げにゆっくりと頷いた。フォローを入れたあとの啄木の表情は険しいものであった。彼自身、フォローの言葉が一瞬の慰めでしかないと理解しているからだ。

 二人の抱えている事情の重さを ■は感じ、気持ちが落ち込みそうになると真弓がはっとして、恐る恐る聞く。


「ところで、はなびちゃんのお母さんとお父さんってまだ帰ってきてないの……? 大丈夫?」

「うん、私のお父さんとお母さんは企業メーカーでお仕事をしてて、今回は珍しく長いんだ。普通なら最大一カ月とかだけど、三カ月はあまり聞いたことないな……」


 答えを聞き、真弓は驚いていると啄木が複雑そうに声を出す。


「悪い。それは俺達の組織が関わってる。今回の出張を長引かせるように根回ししたのは先生だ。上司の命令で巻き込ませないように、先生も護衛として潜入して一緒に働いている」

「……じゃあ、安全確保はできてるのですね?」

「ああ、そこは大丈夫だ。護衛してる先生は強いし、頼りになる」


 真剣な表情に啄木は頷く。何事も起きないように組織の一員が守っているならば安心だ。ホッとしていると真弓が「あっ」と声を上げた。


「そうだ。はなびちゃん。これを渡したくてここに来たんだ。渡しておくね」

「ありがと……!?」


 彼女はバッグからファイルを渡される。だが、かなり分厚く重みがある。片手で持っているのがやっとであり、両手でなんとか持った。付箋も貼られており、彼女は開いて見る。達筆な字で書かれた札がいくつかあり、結界用や退魔用、魔滅用、隠形用、身代わり札など多く詰め込まれていた。

 真弓は親指を立てて、自信満々に口を開く。


「啄木さんの監修を受けて、より強力な札をたくさん作れたから。当然、啄木さんの力を込めた御札もあるよ。たくさんあるから奈央ちゃんにもお裾分けして!」


 隣で苦笑いをして、 ■に話しかける。


「悪い。俺も張り切りすぎた。多いだろうから、田中さんにお裾分けしてあげてくれ。……いや、分けたほうがこの先いいかもな」

「? それは、どういう?」


 不思議そうに言う ■に、啄木は難しそうな顔をする。


「俺の相方が占って、ちょっとした未来辺りに田中さんの運勢に凶が出たんだ。芳しくない兆候で、良くないことに巻き込まれるかもしれないって。占いとはいえど、用心することに越したことはない」

「……なるほど、わかりました。頑張って持ってきます」


 理由を聞いてしまえば、持っていかないとならない。占いといえど、霊力のある人物が行う占術は精度が高い。組織の半妖である彼らの占いとなると、99%は確実に当たる。友人と言ってくれる奈央を少しでも助けられ、自衛が少しでもできるならば直文に迷惑をかけなくて済むのだ。彼女は両手で大事そうに抱きしめた。


「佐久山さん、真弓ちゃん。ありがとう。私、優しくしてくれたことを忘れないようにします」


 一礼をして笑顔を見せる。奈央と澄と茂吉、真弓と啄木。そして、直文。彼らのおかげで無事にいれるのだと思うと、感謝しきれない。特に直文はよく手助けしてもらっており、ついてくる幽霊や妖怪などを追い払ってくれる。また勉強も見てくれたり、夕食も奢ってくれたりと恩を返しきれていない部分が出てきている。

 どうすれば、彼に感謝の気持ちを返せるのか。考えながら彼女は身隠しの面をして改札に向かっていった。

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