第4話:『見えない影と日米の密談(中編)』
続きです。
ついにアメリカが登場!!
第4話:『見えない影と日米の密談(中編)』
ワシントンD.C.、ホワイトハウスの大統領執務室。 就任以来、我が世の春を謳歌し、その強気な政治手腕で支持率を高めていたアメリカ大統領・ジョンは、深夜に舞い込んだ一本の極秘特使からの報告に、葉巻をくわえたまま動きを止めていた。
「……日本政府が、ワシントンへの極秘ルートを通じて、我が国に非公式の協力を要請してきただと?」
大統領のデスクの前に直立不動で立つのは、ペンタゴンを代表して派遣された軍事顧問、そしてアメリカ軍の重鎮であるリー将軍だった。生粋の戦略家であるリーは、厳めしい顔つきのまま小さくうなずいた。
「はい、大統領。三陸沖および太平洋沿岸部において、日本の漁船や貨物船の連続ロストが二十隻を超えたとのことです。日本側はこれを大々的に公表すれば国内経済がパニックに陥ると恐れ、ひた隠しにしていますが、いよいよ隠蔽しきれなくなったようです」
ジョン大統領は葉巻の灰を灰皿に落とし、不敵な笑みを浮かべた。 「ふん、相変わらず島国根性だな。連中はいつもそうだ。何かあればすぐに大国であるアメリカに泣きついてくる。……で、日本側は何と言っている? 彼らはこの異常事態の犯人を誰だと睨んでいるんだ?」
「彼らは、中国の新型無人潜水艇、あるいは尖閣・太平洋全域を狙った新型の流体兵器による『秘密裏の海上封鎖テスト』ではないかと疑っています」
その言葉を聞いた瞬間、ジョン大統領の表情がわずかに引き締まった。政治家としてのアンテナが、敏感に反応したのだ。
「中国の新型兵器……? ほう、もしそれが事実なら、我が国にとっても看過できない問題だな。太平洋の制海権を中国が不法に握ろうとしている証拠になる。中間選挙を控えた我が政権にとっても、中国の脅威を煽る格好の材料になるが……」
大統領はそう言いかけて、ふとデスクの上のコーヒーカップに目をやった。 「待てよ、リー。本当に中国の仕業なのか? 連中がそこまで隠密に、しかも一隻の生存者も出さずに船を消し去るような技術を持っているか?」
「そこが問題です、大統領」 リー将軍の表情は曇ったままだった。
「ペンタゴンの情報部および海軍のソナー解析班も、現時点では中国の関与を完全に否定しきれていません。しかし、回収されたわずかな破断面のデータを見ると、どうも通常の魚雷や機雷、あるいは潜水艦のスクリューによるものとは波形が違う。あまりにも不可解で、まるで……」
「まるで何だ?」
「いえ、まだ確証がありません。ただ、日本側の泣きつきをそのまま鵜呑みにする前に、我が軍としても一度、現場の海域を徹底的に調査し、本当に中国の工作によるものなのか、それとも別の何かなのかを見極める必要があります」
ジョン大統領は深くうなずき、力強くデスクを叩いた。
「よし、リー。日本側の要請には表向き『日米共同の海上警戒』という名目で乗ってやれ。だが、実態はペンタゴン主導で徹底的に調べ上げるんだ。もしこれが本当に中国の隠密作戦なら、我が国がその尻尾を徹底的に踏み潰してやる。直ちに調査チームを編成しろ!」
(つづく・後編へ)




