第4話:『見えない影と日米の密談(後編)』
第4話:『見えない影と日米の密談(後編)』
太平洋を見下ろすペンタゴンの地下作戦室。 大統領からの特命を受けたリー将軍は、直ちに最新鋭の深海調査部隊の編成を急がせていた。
中央の巨大なディスプレイには、三陸沖の海域図と、行方不明船の最終座標が赤く点滅している。 「本当に中国のせいなのか……」 リー将軍が腕を組み、独りごつように呟いたその時、作戦室の自動ドアが開き、白衣を無造作に羽織った男が足早に入ってきた。
アメリカ海洋研究所(NOAA)に所属し、その卓越した分析力と皮肉屋な性格で知られる切れ者研究者、スコッチネルだった。彼は手に持ったタブレットを乱暴にテーブルに置き、呆れたような、しかし冷徹な笑みを浮かべた。
「将軍、ホワイトハウスが『中国の陰謀だ』と大騒ぎしているそうですが、おバカな政治家どもに付き合っていられるほど、私のアルゴリズムは暇じゃありませんよ」
リー将軍はわずかに眉をひそめた。 「スコッチネル、君か。……その物言いは何だ。日本近海での連続ロストは、中国の新型兵器のテストではないとでも言うのかね?」
スコッチネルは冷ややかに鼻を鳴らし、メインディスプレイに独自の解析データを映し出した。そこには、海底の極高圧環境下で捉えられた微弱な音響波と、物理的にあり得ない水流の圧縮データが並んでいた。
「中国の潜水艦がどうこうなんて、ただの政治的な妄想です。データを見てください。あの海域で船舶を粉砕しているのは、いかなる国家の軍事兵器でもありません。――そんなものを作り出せる人間など、この地球上には存在しない」
「では、何だと言うんだ」
リー将軍の鋭い視線を受けながら、スコッチネルは眼鏡のブリッジを指で押し上げ、淡々と、しかし恐ろしい真実を告げた。
「……これからペンタゴンが派遣する調査チームに、私の開発した最新鋭の深海ソナーと、生物学的スキャンシステムを必ず搭載させてください。将軍、我々が調べるべきは中国の動向ではありません。あの海の底に潜む、『未知の生物学的脅威の正体』です」
リー将軍は、スコッチネルのただならぬ気迫と、画面に映し出された不気味な波形をしばらく見つめていた。 中国の仕業だと信じ込んでいたペンタゴンに、初めて「人類の想定外の恐怖」へと繋がる小さな亀裂が入った瞬間だった。
人間たちはまだ、自分たちの足元で起きている真の異変の片鱗すら掴んでいない。 だが、その水面下では、マダラとタコワサの率いるタコ部隊が、調査のために近づいてくる「人間の新たな獲物」を、冷徹な吸盤を光らせながら待ち構えていた――。
(第4話・完)
予定より早めの投稿になりました~。




