第3話『消えた船団の謎(中編)』
続篇~
『消えた船団の謎(中編)』
官邸の静寂を切り裂くように鳴り響いたアラート音に、茹蛸総理はビクリと肩を震わせた。
「な、なんだ……! また新たな事故か!?」
防衛省から駆けつけた通信参謀が、青ざめた顔でタブレット端末を海洋護へと差し出す。護はその画面を一瞥するやいなや、険しい眉間にさらに深いシワを刻んだ。
「総理、三陸沖の定置網監視ポイントおよび、近海を航行中の大型水産加工母船『第弐極東丸』の応答が完全に途絶えました。ただのロストではありません。緊急自動浮上したブイが捉えた最後の音響データです」
護はボタンを押し、重く低い再生音を執務室に響かせた。
――ゴォォォォン……ッ!!
それは、音響兵器のような、あるいは常識を逸脱した巨大な水流が鉄板を引き裂く、暴力的な轟音だった。爆発物特有の衝撃波のピークはなく、ただ「圧倒的な水の質量」が船体を一瞬で圧壊させたとき特有の波形が記録されていた。
「これほどの水圧を人為的に、しかも海面すれすれで発生させるなど、通常の海洋現象ではあり得ません。……まるで、海そのものが我が国の船団を狙って、意志を持って握り潰しているかのように」
護の言葉に、茹蛸総理は血の気が引いた顔で椅子にへたり込みそうになった。 党内の突き上げ、野党からの追及、そして世論の批判――そんな政治的な保身など、今この瞬間に音を立てて崩れ去ろうとしていた。海の底で何が起きているのか分からない恐怖が、総理の胃を激しく締め付ける。
「ば、馬鹿な……! 海洋君、自衛隊の護衛艦を出せ! 観測船でも何でもいい、徹底的に調査するんだ! いや、しかし諸外国に刺激を与えずに……その……!」
「総理、もはや悠長に構えている時間はありません」
護は軍人としての毅然とした態度を崩さず、総理の言葉を遮った。
「我々が『事故』として隠蔽している間にも、日本近海の命綱である漁業・海上輸送インフラは確実に削り取られています。このままでは、日本全体が陸の孤島と化す」
護の瞳には、かつてないほどの強い危機感が宿っていた。 だが、彼らはまだ知らなかった。自分たちが慌てふためいているその太平洋の深い闇の中で、マダラとタコワサの率いるタコ部隊が、すでに次の「局地封鎖」の標的を正確に定めているということを。
(つづく・後編へ)




