第2話:『深淵の絆(中編)』
続きですっ
タコワサの過去回想を挟むよっ
第2話:『深淵の絆(中編)』
漆黒の太平洋の海底を、マダラ部隊が静かに、だが一糸乱れぬ隊列を組んで進んでいく。 先頭を切って豪快に進むマダラの後ろ姿を見つめながら、副隊長であるタコワサは、ふと遠い過去の記憶を脳裏に蘇らせていた。
――かつて、タコワサはインテリとしての頭脳と冷徹な合理主義を鼻にかけ、周囲の個体を見下ろしながら「どうせこの深海の底で老いぼれていくだけの人生だ」と、どこか世の中を舐めきっていた。
当時のタコワサは、深海の底で起きた突発的な地殻変動と、凶暴な肉食深海魚の群れに囲まれ、完全に逃げ場を失っていた。頭脳や計算など何の役にも立たない絶望的な死地。諦念のなかで冷ややかな色素を漂わせていたタコワサの前に現れたのが、当時まだ若造だったマダラだった。
マダラには、軍の洗練された規律も、小賢しい計算もなかった。ただ圧倒的な体表のまだら模様をギラつかせ、周囲の岩盤ごと巨大魚の群れを力任せの突進と凄まじい水流で文字通り粉砕し、血まみれになりながらもタコワサを引きずり出したのだ。
「おい、いつまで腐ってやがる! 生きたいなら足を動かせよ!」
あのとき、命を救ったマダラは笑いもせず、ただそう吐き捨てて前を向いた。 合理主義を気取っていた自分を、その圧倒的な「生命力」と「理不尽なまでの強さ」でねじ伏せた初めての個体。それがマダラだった。
それ以来、タコワサはマダラの直情径行な性格にいつも頭を抱えながらも、あのとき見た圧倒的な背中と、誰よりも仲間を(不器用ながらも)守ろうとする気概に対して、誰よりも深い敬意を抱き続けているのだった。
(いまも昔も、あの男は変わらない……)
タコワサは微かに体表の色を整えると、研ぎ澄まされた吸盤を引き締め、マダラの背中を完璧にサポートするように部隊全体の神経網を調整した。
――やがて、彼らの視線の先に、日本近海の荒海で網を引く一艘の漁船の影が捉えられた。 (つづく・後編へ)
まだまだ続きます~




