ゲームに登場しなかった理由。
レイズは思い出していた。
イザベルとのやり取り。
自分を優しく包み込むように、大切に扱ってくれていた彼女の笑顔。
(……そうか。イザベルが“ゲーム”にいなかった理由……)
胸の奥で、ひとつの答えが形を取っていく。
(イザベルは――最終手段で当主を継いだんだ。そして……滅びた)
氷のように冷たい予感が背筋を走る。
彼女は殺されたのだ、と確信に近い直感がレイズを締め付ける。
視線をあげれば、心配そうにこちらを見つめるイザベルの顔。
その表情を見ながら、レイズの中でひとつの物語が完成していた。
――本来なら、当主を継ぐべきは自分。
だが荒れに荒れて、何も果たせなかった。
だから代わりにイザベルが立ち、そして命を落としたのだ。
(……そういうことだったのかよ)
噛みしめるように、心の中でつぶやいた。
レイズは静かに目を閉じ、一度深呼吸をした。
胸の奥から熱がこみ上げてくる。
「……わかった」
その声は、これまでの情けない叫びでも、誤魔化しの言葉でもなかった。
ただ真っ直ぐに響く決意の声。
「俺が絶対に守る。破滅なんて、させない。
だから――俺に任せてくれ」
その瞬間、場の空気が変わった。
ヴィルは驚きと喜びを隠しきれず、わずかに口元を緩める。
イザベルもまた、潤んだ瞳でレイズを見つめ、どこか安心したように微笑んでいた。
そしてレイズ自身も気付いていた。
自分の顔つきが、これまでの弱々しいものではなく――覚悟を帯びた鋭い目になっていることに。




