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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズになる

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レイズとして生きていく覚悟を決めた。

ヴィルは深く息を吐いた。


まるで胸の奥に溜まっていた重荷を、ようやく下ろせたかのように。


そして静かに目を閉じる。

「……本当に良かった」


その声には、隠しきれない安堵が滲んでいた。

長年抱え続けてきた不安。

心配。後悔。


その全てが、少しだけ軽くなったような表情だった。


だが――

同時に。

そこには確かな未練も存在していた。


レイズはその表情を見つめる。

そして自然と理解してしまう。


(……そうか)


胸の奥が少しだけ痛む。

(本当なら)

(本来なら――)


ヴィルが見たかったのは。

守りたかったのは。

育てたかったのは。

今ここにいる自分ではない。


(“本当のレイズ”に継がせたかったんだな)


それは責める気持ちではなかった。

むしろ当然だと思った。

祖父として。

家長として。

当主として。


ヴィルは最後まで、本来のレイズを信じていたのだろう。

だからこそ。

その想いが痛いほど伝わってきた。


だが。

一つだけ分からないことがある。


なぜ。

本来のレイズは荒れてしまったのか。


なぜ。

周囲がここまで心配するほど追い詰められていたのか。


その理由だけが見えてこない。

そして。

ふと脳裏に浮かぶ名前があった。


――メルェ。

クリスが口にした名前。


知らない人物。

ゲームには存在しなかった名前。


だが。

その名前だけが妙に引っかかる。


(あぁ……)

胸の奥で何かが繋がる。


(そこから全てが狂い始めたのか)

確信ではない。


だが直感が告げていた。

メルェ。

その人物こそが。

本来のレイズを知る鍵なのだと。


知らず知らずのうちに。

レイズは本当のレイズの人生へ近づいていた。

ゲームの中では決して語られなかった物語へ。


そして。

誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。

「……お前も救ってやるよ」


その言葉は誰へ向けたものでもない。

ただ一人。

本来のレイズへ向けた言葉だった。

「レイズ」


静かに目を閉じる。

「もう大丈夫だ」


その瞬間だった。

初めて。本当の意味で。


レイズとして生きる覚悟が定まった。

与えられた人生ではない。

押し付けられた役割でもない。


自ら選んだ道として。

レイズはレイズになることを決めたのだ。

そんな彼を見つめながら。

イザベルは涙を浮かべていた。

けれどその涙は悲しみだけではない。


安心。喜び。希望。


様々な感情が混ざり合っていた。

「うん」

優しく頷く。

「レイズ君ならできるよ」

迷いのない声だった。


そして。

少しだけ身を乗り出す。


「だからね?」

微笑む。

どこまでも優しく。


「私も手伝う」

その言葉は温かかった。

「一緒に頑張ろうね?」


胸の奥へ真っ直ぐ届く。

レイズは思わず視線を逸らした。


その優しさが眩しかった。

優しければ優しいほど。


この世界が温かければ温かいほど

レイズは思い知らされる。


あのゲームが。

どれほど歪んだ世界だったのかを。


どれほど多くのものを切り捨てていたのかを。

名前も残らない人々。


語られなかった想い。消された人生。

その全てが、今ここに存在している。


だからこそ。

レイズは守りたいと思った。


この世界を。この人たちを。


そして。

本来のレイズが守れなかったものを。


ヴィルはそんな二人を見つめていた。

しばらく黙った後。ふっと笑う。

「少々、話が長くなってしまいました…」


穏やかな声だった。

その顔には確かな安堵が浮かんでいる。


昔は違った。

誰よりも大きく。

誰よりも力強く。


アルバード家を支えていた。

揺るがぬ大樹のような存在だった。


だが今は。どこか小さく見える。

老いたのではない。


背負っていたものを少しだけ下ろせたからだろう。

夕暮れの光が差し込む食堂。

その中で見るヴィルの背中は。

不思議と柔らかく見えた。


ヴィルは満ち足りた表情で立ち上がる。

そして静かに歩き出した。

まだ聞きたいことはある。


メルェのこと。

本来のレイズのこと。

知りたいことは山ほどある。


だが。

今はそれで十分だった。

覚悟は決まった。それだけで十分だった。

ヴィルが去った後。


食卓には大量の料理だけが残されていた。

いや。


大量という表現では足りない。

山だった。


完全に山だった。

イザベルはその料理を見つめる。そして優しく微笑んだ。


「レイズ君…」

「ん………?」

「私も手伝うからね?」


そして

レイズは胸を張る。今の自分ならできる。

そんな根拠のない自信があった。


「ふっ」

顎を上げる。

「このくらい」

自慢げにお腹を撫でる。

「ぺろりんちょさ」


沈黙。数秒後。


イザベルが吹き出した。


「あははっ!」


笑い声が響く。

せっかく格好良かった空気が台無しだった。

レイズは真顔を貫こうとする


だが無理だった。

イザベルは笑い続ける。


そして。

気付けばレイズも笑っていた。


重かった空気が消えていく。

夕暮れの食卓。小さな笑い声。


その時間は。

二人にとって確かに温かなものだった。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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