表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/586

様々な事実の錯誤



レイズはしばらく黙り込んでいた。

胸の奥に、重たい霧のようなものが広がっていく。


(……そうか。レイズはきっと、親を若くして失ったから……だから心が荒んでいったんだな)

自分なりの答えを出しかけた、その時だった。


ヴィルの低い声が静かに続く。

「……そうですね。セシルさんとリヴェルは……レイズが物心つく前に亡くなりました」


イザベルが悲しそうに目を伏せる。

ヴィルは厳かに言葉を重ねた。

「だからこそ、レイズには“両親の記憶”などほとんど残っていないでしょう」


――衝撃。

レイズは思わず息を呑んだ。


(……違うのか。俺が想像していた理由じゃない。じゃあ……なぜレイズは、あんなにも荒んでいたんだ……?)


その答えはまだ見えなかった。



レイズは唇を噛んだ。

(……怖い。今、この理由を聞くのは……俺にはできない)


ただひとつだけ理解できた。

――ここがアルバード家であること。

――そしてリヴェルが、ヴィルの実の息子だったということ。


「……」


俺は沈黙し、ヴィルが口を開くのを待った。


ヴィルは表情をいっさい変えず、静かに告げる。

「……昔のことです」


その言葉で全てを断ち切るように、ヴィルは話を終えた。


レイズの胸には、新たな疑問だけが重たくのしかかる。


イザベルがぱっと顔を明るくして口を開いた。

「それでね、レイズくん。私、今日からこの屋敷に住むことにしたの」

どこか弾むような声色だった。


重い話を続けた直後のその一言に、レイズは一瞬返事に困る。

「……ぁあ、そうなのか」

ただそれだけしか言えなかった。


イザベルは首をかしげる。

「なんか反応が薄いなぁ……」


だがレイズの頭には、別の疑問が渦巻いていた。

(……なんで俺が“当主”なんだ?)


そして、思わず口にしてしまう。

「……なぁ、どうして俺が当主なんですか?」


その言葉に、場の空気が一瞬で張り詰める。

ヴィルの瞳が鋭く光り、食堂の空気を重く支配するのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ