↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズを知る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/345

レイズの親は。

 どうやらヴィルは、俺が“この世界のレイズではない”ことをイザベルへ話してしまったと思っているらしかった。

 慌てて俺は口を開く。


「いや、ヴィル!」

「相談役を寄越すって……イザベルのことじゃなかったのか?」


 ヴィルは一瞬だけ目を伏せ、小さく息を吐いた。


「……ええ。」

「これは私の誤算でした。」


「ですが、いずれ話す時が来るとは思っていたのです。」

 その声には、珍しく申し訳なさが滲んでいた。


 すると隣でイザベルが呆れたようにため息をつく。


「もう……。」

「おじいさまが悪いのよ?」

「ひとりで勝手に決めちゃうんだから。」


 イザベルは肩をすくめながら俺を見る。

「ねぇ、レイズ君だって困るでしょ?」


「えっと……。」

俺は思わず聞き返した。


「お、おじいさま……?」


 その呼び方が妙に引っ掛かった。

 今まで自然すぎて気付かなかった。

 ヴィルとイザベルの距離感。

 遠慮のない会話。

 家族だからこその空気。


「……あ。」


 ようやく一つの答えへ辿り着く。

「まさか……。

 俺は二人を交互に見た。

「二人って……。」

「祖父と孫なのか!?」


 イザベルは照れくさそうに笑う。

「そうだよ。やっと気付いたの?」


「いやいやいや!」

 俺は思わず立ち上がりそうになる。

「今まで誰も言わなかったじゃん!」


 ヴィルは静かに頷いた。

「ええ。」

「ですので、この場でお話ししておく必要があります。」


 その声音が、少しだけ重くなる。

「イザベルは確かに私の孫です。」

 一拍置き。


 ヴィルは真っ直ぐ俺を見た。

「――ですが。」

「レイズ。」

「おまえもまた、私の大切な孫なのです。」

「…………は?」


 頭が止まる。

 理解が追い付かない。

 混乱したまま俺は皿へ視線を落とし――

 気付けば。


 ガブリッ。

 目の前の肉へ勢いよくかぶりついていた。


「……。」

「……。」


 静まり返る食卓。

 イザベルが呆れたように呟く。

「なんで今、お肉かじるのよ……。」

「し、仕方ないだろ!」


 俺は肉を咀嚼しながら必死に弁解する。

「驚きすぎて!」

「口が勝手に動いたんだ!」


 ヴィルは堪えきれなかったのか、小さく笑みを浮かべた。

「ふふ……。」

 その笑顔を見て、イザベルまで吹き出してしまう。


「もう、レイズ君らしいね…。」


 少し笑いが落ち着いたところで、イザベルが優しく言った。


「だからね。」

「レイズ君と私は従兄妹なの…。」

「従兄妹……?」


 俺は首を傾げる。

「あぁ……つまり親同士が兄妹ってことか。」

「そういうこと。」


 イザベルは頷いた。

 だが、その瞬間。

 俺の頭へ新たな疑問が浮かぶ。


「……そういえば。」

「俺の親って、どこにいるんだ?」

「一度も会ったことないんだけど…」


 その一言だった。

 空気が変わる。


 さっきまで笑っていたイザベルの表情が固まる。

 ヴィルも静かに目を閉じた。

 数秒の沈黙。


 そして。

 ヴィルが静かに口を開く。


「……亡くなりました。」


 短い言葉だった。

 だが、その重さは何よりも大きい。

 胸の奥へ、ずしりと沈んでいく。


「…………。」


 俺は何も言えなかった。

 イザベルも俯いたまま黙っている。

 その表情を見るだけで分かった。


 二人にとっても、決して軽い話ではないのだと。

 俺は小さく息を吐き、話題を変えるように口を開いた。


「……そうだ。」

「もう一つ聞いていいか…?」


 ヴィルは静かに頷く。

「なんでしょう?」

「なんで執事長なんて名乗ってたんだ?」

「あんた、本当はアルバード家の当主だったんだろ?」


 ヴィルは少しだけ苦笑した。

「ええ。」

「それが、一番手っ取り早かったからです。」

「いやいやいや!」


 俺は思わず机へ身を乗り出す。

「そのあと本当のことを言う機会、いくらでもあったよね!?」

「そうですね。」


 ヴィルはあっさり認めた。

「ですが、レイズ。」

「私は、おまえを当主として認めています。」


「……。」

 真っ直ぐな瞳だった。


 そこには一切の迷いがない。

 その隣で、イザベルも少し照れながら小さく呟く。


「……わたしも。」

「レイズ君のこと、ちゃんと当主だって思ってるから。」


「いや、認めんなよぉぉぉ!?」

 俺は頭を抱えた。


「最初に言えよ!」

「俺だけ何も知らなかったじゃん!」

「申し訳ありません。」


 ヴィルは素直に頭を下げる。

 イザベルは思わず吹き出した。


「ふふっ。」

 食卓へ、再び小さな笑いが戻る。


 けれど

 その笑いは長くは続かなかった。

 俺の頭には、さっきの言葉が残っていた。


『亡くなりました』


 その事実だけは消えない。

 俺は二人の表情を見る。

 ヴィルも。

 イザベルも。

 笑っているようで、どこか悲しそうだった。


(……しまった。)


 聞かなきゃよかった。

 そう思った。


「……いや。」

 俺は首を横へ振る。

「なんでもない……」


 それ以上、その話を続けることはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。