こうしてまたすれ違いは加速する。
屋敷へ戻るレイズとイザベル。
門前で待っていたリアナが深く一礼する。
「お帰りなさいませ――当主様……っ!? い、イザベル様!?」
その声は初め落ち着いていたが、イザベルを見た瞬間に裏返ってしまった。
「く、苦しゅうないぞ」
レイズはどこか得意げに手を差し出す。
「……だから、なにそれ」
イザベルは呆れ顔で笑みを浮かべる。
そんな二人のやりとりを遠くから見ていたヴィルは、静かに目を細めた。
――この光景は、ただの戯れではない。
彼は新たな決意を胸に刻むのだった。
屋敷の前で並んだ使用人たちが、一斉に深く頭を垂れた。
レイズは驚きつつも、その間を堂々と歩いていく。
最後に、ヴィルが二人の前に立ち、穏やかに声をかけた。
「……二人とも、よく頑張りました」
その眼差しは優しく、そしてどこか誇らしげで。
ヴィルには分かってしまったのだ。
――当主としての覚悟を決めた顔レイズ。
――その当主を支える者としての覚悟を決めた顔イザベル。
「よかろう。この子たちなら、きっと未来を担える」
勝手にそう確信してしまうヴィル。
もちろん当の二人は、そんな大それたことなど微塵も思ってはいなかった。
レイズはヴィルに向かって胸を張り、
「……あぁ!ちゃんと相談できたぞ!本当のことを言えたんだ!」
と得意げにお腹をパチンと叩いてみせる。
(ヴィル!ありがとう!!)
イザベルは横目でそんなレイズを見てクスクスと笑い、すぐにヴィルに向き直る。
「おじいさま……あとでお話がありますから」
手で控えめに合図を送りながら真剣に伝えた。
(レイズ君が“前のレイズ君”とは違うってこと。どうして教えてくれなかったのよ……)
二人の全く違う仕草を見て、ヴィルは深く頷いた。
「……なるほど。二人の意思は伝わった。」
勝手に満足そうに解釈するヴィル
こうしてすれ違いは加速していく。




