表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/586

真実を見てる。



イザベルは涙が出るほど笑っていたが、その一方で心の奥では別の感情が芽生えていた。

――あの魔法。わたしも知らない術だった。発動こそしなかったけれど、確かに“違う道”を示していた。


意地を張るレイズを見ていると、胸の奥が不思議とざわめく。

(なんだろう……いまのレイズ君、前よりずっと大人になったみたい)


イザベルは表情を整え、ふっと微笑む。

「じゃあ、次は簡単な魔力トレーニングをやってみよっか。魔力を錬成して、その状態で私と会話するの。途切れたら最初からやり直しね」


真剣な眼差しで説明するその姿は、まるで教師そのものだった。


レイズは素直にうなずき、従順に指示に従う。

魔力を練り、静かに呼吸を整え、会話に集中する。


その姿を見守るイザベルの心には、奇妙な痛みと温かさが同時に広がっていた。

悲しいようで……でも、どうしようもなく愛しく感じてしまう。


(昔はわたしが引っ張っていたはずなのに。……いまは、置いていかれそうな気がする)


イザベルは胸の奥に湧くその感情を、静かに押し隠しながら微笑み続けた。



イザベルは微笑みながら、次々と質問を投げかけてくる。

「ねぇ、レイズ君。どうしてダイエットなんかしようとしてるの?」


レイズは魔力錬成に集中しているため、お腹を揺らす余裕もなく、ただ真剣な眼差しで視線を送る。

“これだよ、これ!”と目だけで必死に伝える。


イザベルは吹き出すように笑い、首を横に振った。

「そんなの気にしなくていいのに。……たぶん、みんな全然気にしてないと思うよ?」


そして、ふと真顔になる。

「じゃあ次の質問ね。ここの草原で、昔よく遊んだこと……覚えてる?」


レイズは一瞬迷ったが、静かに首を横に振る。


イザベルは小さく「……そう」と呟き、わずかに俯いた。

「レイズ君。私ね、昔、レイズ君と約束したことがあるんだよ」


「えっ、約束……?」

思わず心臓が高鳴る。こんな可愛い子と、約束を交わしていた?

だが記憶を探っても思い出せず、レイズは再び首を横に振った。


イザベルは少し寂しそうに、それでも笑みを保ちながら言う。

「じゃあ、これが最後の質問ね」


その瞳が真っ直ぐに射抜く。

「あなたは……本当にレイズ君なの?」


その瞬間、集中していた魔力錬成がぷつりと途切れる。

「ちょ……! もちろんレイズだよ! なに言ってるんだよ!」


落ち着いた声色を装って返すが――イザベルの眼差しは、すでに真実を見抜いているようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ