納得できない!
「その……レイズ様。私は変わらず素敵だと思いますよ?」
メイドはそう言った。
無理している様子はない。だが、俺にはそれがどうしてもお世辞にしか聞こえなかった。
「んなわけあるか! どう見てもデブだろ! こんなんじゃ……お外に出られるわけねえよ!」
俺は腹をぽよんぽよんと揺らしながら叫ぶ。
メイドは慌てて手を振るが、どう見ても困惑している。
そんな情けないやり取りをしていると――
「……あの、レイズ様? 少し……変わられました?」
メイドが首をかしげた。
その瞬間、背中に冷たい汗が伝う。
しまった。
俺はすっかりパニックになっていた。
頭では「俺」として叫んでいたが、ここでは――
――俺は、“レイズ”なんだ。
鏡に映るデブの美少年。
メイドが呼ぶ名前。
すべてが、その現実を突きつける。
「……えっ? あ、ああ……」
俺は慌てて咳払いをした。
「いや、その……ちょっと疲れてただけだ。うん、それだけ」
苦し紛れの言い訳に、メイドは目を瞬かせる。
怪しんでいるようでもあり、信じているようでもあり……その曖昧な反応に、逆に心臓が跳ねた。
「そ、そうですか……よかった。てっきり、本当に別人のようで……」
メイドは胸に手を当てて安堵の息を漏らした。
……危ねぇ。
思わず素の自分で叫んじまったが、なんとか誤魔化せたらしい。
――そうだ。
俺はいま、“レイズ”なんだ。
この肉だらけの体も、醜い腹も、全部まとめて……俺は、レイズ。
(……いや、納得できるかぁぁぁ!!)
心の中で叫んでも、現実は変わらない。
鏡に映るのは、どう見ても金髪碧眼の「太った少年レイズ」だった。




