↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
変わる未来と起きる未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
354/363

すれ違いも加速する

その頃――王城では。


カイネルが玉座に腰掛けながら、ふと窓の外へ視線を向けていた。


「…………今頃、到着した頃か?」


その呟きを聞き、傍に控えていた者がわずかに不安そうな表情を浮かべる。


「陛下……本当に、大丈夫でしょうか」


「問題ないはずだ」


カイネルは迷うことなく答えた。


システィーヌをアルバードへ向かわせたことに、後悔などない。むしろ、あの二人だからこそ直接会わせる必要があると考えていた。


「ゆっくりでいい。互いをゆっくりと知り、互いの考えを理解し、そして認め合えばいい。レイズとシスティーヌならば、それを必ず成し遂げるだろう」


カイネルの口元に、穏やかな笑みが浮かぶ。


王国とは、今ある形を永遠に守り続けるだけのものではない。次の世代には次の世代の考え方があり、その者たちが新たな道を作っていく。


レイズとシスティーヌ。


二人が互いを知り、互いの考えを認め合うことができれば、それはきっと次代の王国にとって大きな意味を持つ。


「故に――次代の王国は、また一つ大きな成長を遂げることができる」


「…………なるほど」


その言葉には確かな自信があった。

何も急ぐ必要はない。


まずは会う。

話をする。

互いを知る。


そこから少しずつ関係を築いていけばいいのだ。


少なくともカイネルは――そう考えていた。


「父上ぇぇぇぇぇ!!」


バァンッ!!


突然、玉座の間へ続く扉が勢いよく開いた。


「…………む?」


カイネルがそちらへ顔を向ける。


そこには肩で大きく息をしながら、こちらへ駆け寄ってくるリオネルの姿があった。


「はぁ……はぁ……父上!!」


「どうしたのだ、リオネル。そのように慌てて」

「聞きました!!」


リオネルは息を整える間も惜しむように、父へ詰め寄った。

「システィーヌを、もうアルバードへ向かわせたと!!」

「なんだ、その話か」

「その話か、ではありません!!」


カイネルは息子の剣幕にも動じることなく、ゆったりと玉座へ身体を預ける。


「少し予定を先送りしただけの話だ。なに、何も心配することはない。システィーヌはお前と同じく優秀なのだから、案ずる必要など――」


「システィーは!!」


リオネルの声が玉座の間へ響いた。


「…………む?」


「システィーは確かに優秀です! 頭も良い! 物事を見る目もあります! ですが――あまりにも純粋なのですよ!?」


「…………」


「お迎えに向かわせるだけなら、まだ分かります! ですが、アルバードに数か月も滞在させるなど……父上、本気なのですか!? 学院でもすでに騒ぎになっています!!」


リオネルの顔には、本気の焦りが浮かんでいた。

自分の妹が優秀であることなど、誰よりも理解している。だからこそ心配なのだ。


システィーヌは賢い。

けれど同時に、自分が正しいと思ったことへ一直線に進んでしまうところがある。


ましてや今回向かった先は、あのアルバードなのだ。


「私が迎えに行きます!」

「ならん」


「まだ最後まで言っておりません!!」

「言わずとも分かる」


カイネルは即答した。


「学院をしばらく休ませてください! 私自身がアルバードへ向かい、システィーヌを――」

「ならんと言っている」

「父上!!」


カイネルは先ほどまでの穏やかな表情を少しだけ引き締めると、真っ直ぐに息子を見つめた。


「リオネル。お前には、お前のやるべきことがある」

「ですが――」

「私の次は、お前なのだ」


「…………!」


その言葉に、リオネルが一瞬だけ黙った。


カイネルは続ける。


「お前がこの国を導かなくてはならん。学院で学べる時間を、妹が心配だからという理由で投げ出すことを余が認めると思うか?」

「それは……」

「システィーヌにはシスティーヌの役目がある。そして、お前にはお前の役目がある。妹を信じてやることも兄の務めではないのか?」


「ぐっ……!」


正論だった。


あまりにも正論だった。

そして何より。


『私の次は、お前なのだ』


その言葉は、リオネルにとってずっと望んでいたものでもあった。

父から次代の王として正式に認められている。

嬉しくないはずがない。

むしろ、心の底から嬉しい。


だが――。

今はそれとこれとは別なのだ。


「ほら。分かったのなら、さっさと学院へ戻らぬか!」


「ち、父上!? いや、しかしシスティーが――!」

「連れ出せ!」


「ハッ!失礼します!リオネル様!」


「ち、違う!! 待て!! 私は父上に認めていただけたことが嬉しくないわけではない!! むしろ嬉しい!! ですが今はそういう話ではなくてですね!!」


左右から腕を取られ、リオネルの身体がずるずると扉の方へ運ばれていく。


「父上!! 話を!! せめて私の話を最後まで聞いてください!!」

「学院へ戻れ!」


「ち、父上ぇぇぇぇぇぇ!!」


その叫び声は、扉の向こうへ消えていった。

玉座の間に静けさが戻る。

カイネルは満足そうに一つ頷いた。


「まったく。心配性な兄だ……あやつは……」


だが、その表情はどこか嬉しそうでもあった。


自分の後を継ぐ息子が妹を大切に思っている。それ自体は、決して悪いことではない。


ただ――。

カイネルは知らない。

つい先ほど、自分が、


『ゆっくりでいい。互いをゆっくりと知り、認め合えばいい』


そう語っていた、その頃。

アルバードでは。

システィーヌとレイズが、ようやく初めて顔を合わせ――。


そして

会話らしい会話すら始まる前に。


「私と婚約してください」


すでに、そこまで話が進んでいたことを。


もちろん。

リオネルも知らない。


もし知っていたのなら――。


おそらく今頃、学院へ連れ戻す者たちを振り切ってでも、アルバードへ向かおうとしていただろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。