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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。6-13話大幅に加筆してます。。)  作者: くりょ
レイズを知る。

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ともにゆくぞ!

大書斎へたどり着いたレイズは、先ほどまでの威厳ある当主の顔をどこかへ置き忘れていた。


「すっげぇぇぇぇぇ!!」


 目を輝かせながら声を上げる。


 高い天井。


 壁一面を埋め尽くす本棚。


 そこに収められた膨大な書物の数々。


 知識の海。


 まさに異世界ファンタジーに登場する理想の大図書館だった。


 少年の心が躍らないはずがない。


「やばい……やばいぞ……」


 きょろきょろと辺りを見回す。


「これ全部読めるのか……?」


 感動していた。


 純粋に感動していた。


 そんなレイズを見ながら、リアナは一歩前へ出る。


「それでは当主様」


 丁寧に頭を下げる。


「中にはイザベル様がお待ちですので、私はここで失礼いたします」


「え?」


 レイズは振り返る。


「一緒に入らないの?」


 その問いにリアナは静かに首を横へ振った。


「私には許可がございませんので」


「ふむ」


 レイズは腕を組む。


 そして数秒考えた後。


 堂々と胸を張った。


「ならば!」


 びしっと指を突きつける。


「このレイズ・アルバードが許可する!」


 どや顔だった。


 実にどや顔だった。


「さぁ!」


 勢いよく腕を広げる。


「共に行くぞリアナ!!」


 その声は大書斎の重厚な扉すら突き抜け、中へ響いていった。


◇◇◇


 その頃。


 大書斎の奥。


 窓際に腰掛けていたイザベルは思わず吹き出していた。


「ふふっ……」


 肩を震わせる。


「なんだか雰囲気がガラリと変わっちゃったな」


 かつてのレイズとはまるで違う。


 けれど。


 不思議と嫌ではなかった。むしろ。


 その姿を見ていると胸が温かくなる。


 イザベルは小さく微笑んだ。


「でも……」


 柔らかな声が漏れる。


「そんなレイズ君も好きだなぁ」


 窓から差し込む光が桃色の髪を優しく照らしていた。


◇◇◇


 しかし。


 レイズの勧誘は断られてしまう。


 リアナは困ったように微笑んだ。


「ですが私には、やらなければならない仕事がございますので」


「むぅ……」


 露骨に残念そうな顔になるレイズ。


 リアナはそんな姿に少しだけ頬を緩めた。


「ですが……」


 小さく言葉を続ける。


「とても嬉しかったです」


「え?」


 レイズが顔を上げる。


リアナは照れたように笑った。


「お誘いいただき、ありがとうございました」


 そして深く一礼する。


「どうか行ってらっしゃいませ。当主様」


 その笑顔はどこまでも優しかった。


 そうしてリアナは静かに去っていく。


 残されたレイズはその背中を見送った。


(なんだよぉ……)


 少しだけ寂しい。


(せっかく一緒に行こうと思ったのに)


 だが。


 すぐに頭を振る。


 今から向かうのは魔法の先生のところだ。


 気を引き締めなければならない。


 大きく深呼吸する。


「よし」


 重厚な扉へ手をかける。


 その姿はまるで――


 魔王城へ乗り込む勇者のようだった。


 なお本人に自覚はない。


◇◇◇


 ゆっくりと扉が開く。


 大書斎の中は静寂に包まれていた。


 並ぶ本棚。


 差し込む木漏れ日のような光。


 そして。一人の少女。


 窓際で本を読んでいた彼女の桃色の髪が光を受けて輝く。


 長い睫毛。整った横顔。


 柔らかな雰囲気。


 どこか儚さすら感じさせる美しさ。


 レイズの心臓が大きく跳ねた。


(か、かわいい……)


 どくん。


 どくん。


 心臓がうるさい。非常にうるさい。


 当主モードが一瞬で吹き飛ぶ。


(やばい)


(思ったよりかわいい)


(いや、かなりかわいい)


(というかすごくかわいい)


 完全に男子だった。


 そんなレイズに気づくことなく、少女は本を閉じる。


 ぱたり。


 静かな音が響く。


 そして微笑んだ。


「いらっしゃい、レイズ君」


 優しい声だった。


 それだけでさらに心臓が暴れる。


「そ、その……」


 声が裏返りそうになる。


「イ、イザベルさん……ですか?」


 情けないほどぎこちない。


 だがイザベルは気にした様子もない。


「うん」


 微笑む。


「久しぶりだね」


 その言葉にレイズはさらに混乱した。


(久しぶり!?)


(いや俺は初対面なんだけど!?)


 だがそんなことは言えない。


 必死に背筋を伸ばした。


「そ、それでは!!」


 勢いよく頭を下げる。


「魔法のご教授をよろしくお願いします!!」


 完璧だった。


 たぶん。


 きっと。そう思った。


 しかし。


「…………」


 沈黙。


「…………」


 長い。非常に長い。


 イザベルは何も言わない。


 ただ。じっと。じーっと。


 レイズを見つめていた。


(な、なんで!?)


 レイズの内心が悲鳴を上げる。


(ちょっと待って!?)


(ヴィル!?)


(こういう時は横でフォローするんじゃないの!?)


(なんでいないの!?)


 助けを求める。


 もちろん届かない。


 そんなレイズを見ながら。


 イザベルはふっと微笑んだ。


「レイズ君」


「は、はい!」


「たくましくなったね」


 優しい声だった。


 からかいではない。


 お世辞でもない。


 本当にそう思っている声だった。


 レイズは目をぱちぱちと瞬かせる。


「え……」


 予想していた言葉ではなかった。


「そ、その……」


 顔が熱くなる。努力を見ていてくれた。


 それだけで嬉しくなる。


 そんな自分が少しだけ恥ずかしかった。


◇◇◇


 イザベルは静かにレイズを見つめていた。


 まるで懐かしいものを見るように。


 けれど。


 どこか違う。目の前にいるのはレイズ。


 間違いなくレイズなのだ。


 だが。


 昔とは何かが違う。


 話し方。表情。仕草。空気。


 全てが少しずつ違う。なのに。


 なぜだろう…。


 以前よりもずっと…温かい?


 以前よりもずっと…優しくなった…。


 そんな不思議な感覚があった。


 一方でレイズは。


(な、なんでそんなに見てくるんだ!?)


 完全にパニックだった。視線を逸らしたい。


 でも逸らしたら負けな気がする。


 だから頑張る。見つめ返す。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


(むりぃぃぃぃぃぃ!!!!)


 レイズの精神は限界を迎えていた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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