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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。180-189話修正、大幅に加筆しました。)  作者: くりょ
レイズを知る。

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大書斎へゆくぞ!

食事を終えたレイズは、満足げに息を吐くと静かにリアナを呼んだ。


 先ほどまで野菜との死闘を繰り広げていた人物とは思えないほど、落ち着いた表情だった。

それは周りが勝手にそう思っているだけであるが…


「……それでは午後から大書斎へ向かう」


 背筋を伸ばし、堂々と告げる。


「手筈は整っているな?」


 その視線が、ちらりとテーブルへ向けられる。

 そこには――綺麗に空になった皿。

 サラダは一欠片も残っていなかった。

 リアナは一瞬だけ目を見開く。

 だが、すぐに表情を整え、深く頭を下げた。


「はい。当主様」


 その声には、どこか感慨深いものが混じっている。


「すべて整っております」

「うむ」


 レイズは満足そうに頷く。

 そして二人は食堂を後にした。

 しばらくして。


 片付けのため使用人たちが食堂へ入る。


 そして。誰もが足を止めた。

「…………」

「…………」


 視線の先。


 そこには綺麗に空になったサラダの皿があった。

 誰かが震える声で呟く。


「……本当に乗り越えられたのだな」


 別の使用人も静かに頷いた。


「ヴィル様がお認めになったとはいえ……正直、私はまだ半信半疑でした」


「私もです」

「まさかここまでとは……」


 かつてのレイズを知る者ほど、その意味を理解していた。


 野菜を食べた。ただそれだけ。

 だが彼らにとっては違う。


 それは確かな変化だった。

 自らを変えようとしている証だった。


「我らは……」


 一人の使用人が呟く。


「本当に凄い御方に…お仕えできるのかもしれませんな…」


 その言葉を否定する者はいなかった。

 食堂には静かな喜びが広がっていた。


 大書斎へ向かう廊下の途中。


「当主様!」


 聞き慣れた声が響く。


 振り返ればリアノが慌てて駆け寄ってきていた。


「当主様! お体は……本当に問題ないのですか!?」


 心配そうに身を寄せる。

 昨夜の光景が忘れられないのだろう。

 だが。レイズは胸を張った。

 そして腕を曲げる。


 ぽこん。

 力瘤らしきものが現れる。


「是非もない……」


 実に誇らしげだった。

 どこか得意げですらある。

 リアノは一瞬きょとんとした。

 意味が一瞬遅れる。

 そして思う。


(……いや、そういうことじゃなくて)


 聞きたいのは筋肉の話ではない。

 昨夜。

 汗にまみれ。

 苦しそうに呼吸をし。

 水すら飲み込めなくなっていた姿。


 その姿が今も鮮明に脳裏へ焼き付いている。

 だからこそ心配だった。だが当の本人は。


「それでは行ってまいる!」


 満足そうに頷くと、そのまま歩き出してしまう。

 リアノは唇を噛み締めた。


「……どうか無理をなさらないでください…本当に……」


 小さく呟く。

 その願いはレイズには届かなかった。


◇◇◇


 一方その頃。


 レイズ本人は。


(大書斎……)


 胸が高鳴る。


(魔法の先生……)


 さらに高鳴る。


(いったいどれだけ俺をワクワクさせたら気が済むんだ……)


 異世界。魔法。


 図書館。先生。


 男の子の夢が全部詰まっていた。


 もう止まらない。口元が勝手に緩む。


「くくくくく……」


 笑う。


「ふふふふふ……」


 さらに笑う。


「ははははははっ!!」


 ついには声に出して笑い始めた。


 つい先ほどまでの重苦しい空気はどこへ行ったのか。


 レイズはすっかり上機嫌だった。


 まるで遠足前の子供である。


 いや。実際その通りだった。


 魔法という未知の世界が待っている。


 それだけで胸が躍った。


 足取りも自然と軽くなる。


 そんなレイズの姿を見ていた使用人たちは、思わず足を止めた。


「…………」


「…………」


 目が点になる。あまりにも豪快な笑い声。


 あまりにも無邪気な表情。


 以前のレイズでは考えられない姿だった。


 だが。誰も不快には思わない。


 むしろ――


 胸の奥から温かなものが込み上げてくる。


「本当に……」


 誰かが呟く。


「変わられました…」


 別の使用人が静かに頷く。


「えぇ……」


 その瞳には希望が宿っていた。


「本当にレイズ様は……」


 言葉が震える。


「変わられた…」


 その言葉は誰に向けたものでもない。


 けれど。


 アルバードに仕える全ての者の想いを代弁していた。


 レイズは知らない。


 自分が笑うだけで。


 それだけで救われる人たちがいることを。


 そんな期待と希望を背負いながら。


 レイズは大書斎へ向かうのだった。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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