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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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最高のシチュエーション



 早朝。まだ空が白み始めたばかりの時間――レイズの朝は早かった。


 ふと目を開けると、隣の寝台ではクリスが静かに寝息を立てている。

 その顔を、レイズはしばらく無言で見つめていた。


 「……なんていうか、こうやって見ると……」

 一瞬、柔らかい表情が浮かびかけたが、すぐに掻き消す。

 「いや、可愛い……わけがない」


 目の前にいるのは乙女ではなく、忠誠厚き男。

 整った顔立ちの“イケメン”であっても、可愛いなどという感情は即座に封印した。


 レイズはため息をひとつ吐き、身支度を整え始める。

 シャツの襟を正し、髪を後ろへかき上げたその動作に、静かな決意が宿っていた。


 やがて、布の擦れる音。

 「……さすがです、レイズ様。まさかもう起きられるとは。それで、その準備は……?」

 寝ぼけ眼のクリスが起き上がりながら問いかける。


 レイズは明るい声で言い放った。

 「走るぞ、クリス! ついてまいれ!」


 その一言には凛とした覇気があった。

 クリスは一瞬で目を見開き、力強く応える。

 「はいっ!! ついていきます!!」


 ――こうして、早朝から妙にテンションの高い二人が屋敷を飛び出した。


 街はまだ眠りの中にある。

 かすかな朝靄を裂くように、二人の足音だけが響く。

 人通りのない通りを抜け、薄明かりの石畳を蹴りながら、彼らは城壁へ向かって一直線に走った。


 「……レイズ様、また一段と早くなりましたね」

 息を整えながらも感嘆の声を漏らすクリス。


 「そうか?」

 余裕の笑みを浮かべるレイズ。

 しかしその横顔を見て、クリスはますます尊敬の念を深める。

 “やはりこの方は、ただ者ではない――”


 やがて、二人は城壁の上へたどり着いた。

 東の空から、ゆっくりと朝日が顔を出す。

 風が頬をなで、静かな光が二人の影を長く伸ばした。


 「……綺麗ですね」

 クリスが呟く。


 「そうだな」

 レイズは遠く王国の方角へ目を向けた。

 そのとき、遠くにゆっくりと進む馬車が見えた。


 「……リール!」

 レイズの目がぱっと明るくなる。


 「クリス!! 行くぞ!!」

 「はい! リールのもとへですね!」

 「違う!! 屋敷にだ!!!」


 「な、なぜですか!?」


 レイズは真剣な顔で言い放つ。

 「考えてもみろ。当主である俺が、こんなところで待っている姿を見られたらどう思う?」


 クリスは一瞬固まり、そして深く頷いた。

 「……なるほど! つまり、そういうことですか!!」


 「そういうことだ! では走って戻るぞ!!」


 勢いそのままに、二人は再び駆け出す。

 朝日が昇りきる前の街を、行きよりも速い足取りで。


 クリスの心は熱く燃えていた。

 “レイズ様はきっと、リールに試練をお与えになっているのだ……!”


 だが、レイズの胸の内はまったく別の方向だった。

 “威厳のある服を着て、余裕の笑みで待つ――

 そう、それこそが完璧な当主の登場シーンだ!!”


 同じ走りでも、目的はまるで違う。

 朝焼けの中、誤解と誇りが入り混じった足音だけが、屋敷へと響いていった。




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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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