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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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ガイルの誇り



血のように赤い夕陽の中で、

彼は黙々と己の肉体を鍛え上げていた。

その姿を見つめる最果ての魔族たちは、

誰もが畏怖と敬意の入り混じった眼差しを向けていた。


人間でありながら、

魔族をも超える膂力と魔力を操る存在。

彼こそ“最果ての元人”――ガイルだった。


その背に刻まれた傷は数知れず。

それでも笑みを絶やさぬ彼の眼は、常に前だけを見据えていた。


「……まだだ。俺は、まだ足りねぇ。」


低く、岩を砕くような声。

その中には、強くなることへの狂おしいまでの渇望があった。

そして――必ず成し遂げねばならない目的が、確かに宿っていた。


そんな中、ひとりの魔族が駆け込んでくる。

息を切らし、地に膝をつく。


「ガ、ガイル様っ……!!」


「なんだ、修行の邪魔すんな。」


荒々しい声に、魔族は怯えながらも報告を口にした。


「ギュイェアラ様たちが……動いておりましたが……問題が……!」


「問題だぁ? お前らの都合か?」


「い、いえ……ギュイェアラ様が……負けました……!」


その一言に、周囲の空気が凍りつく。


ガイルの拳がゆっくりと止まった。

沈黙が数秒。


「……は?」


そして、爆ぜたように笑い声が響いた。


「クハハハハハハハ!! 何言ってやがる!?」


その笑いは荒々しく、しかし底冷えするほど冷たかった。


「命は……取られなかったそうです……が……」


「はぁ? “命は助かった”? それが問題なんだよ!!」


ガイルは拳を叩きつけ、地を裂く。

砂煙が立ち、魔族たちは反射的に身を引いた。


「お前ら……上位魔族が相手だろうが、“負けた”なんて聞きたくねぇ!

 魔族を束ねる器が泣いてるぜ!!」


声が荒野に響き渡る。

だが、報告の続きを聞いた瞬間、ガイルの笑いが止まった。


「……誰にやられた?」


怯える魔族が口を開く。


「ア、アルバードに隣接する領にいる……“ヴェルイェイヌァイ”の配下たちに……」


静寂。


次の瞬間、ガイルは口角を吊り上げ、獰猛に笑った。


「ヴェルイェイヌァイ、だと……?」

荒野を切り裂くような咆哮が響いた。


「ヴェルイェイヌァイだぁ!? たかが上位魔族じゃねぇか!!!」


ガイルの声に、大地が震え、岩壁の表面が砕け落ちる。

その場にひれ伏す魔族たちは、誰ひとり顔を上げられなかった。


「しかも――その“傘下ども”に負けたぁ!? はぁ!?」


ガイルの拳が宙を裂く。

風圧だけで近くの魔族の頬が切れ、血が舞う。


「恥ずかしくねぇのかぁ!!! お前らぁぁぁぁ!!!」


怒号は轟音となり、荒野全体に反響する。

魔族たちは怯え、ただ地に額を押し付けることしかできなかった。


「てめぇら“最上位”を名乗るならなぁ!!

 力で語れッ!!! 負けた言い訳なんざ聞きたくもねぇ!!!」


ガイルの瞳は血のように赤く燃えていた。

その光は怒りではなく――“信念”だった。


「俺は元人間だ!!

 だが! てめぇら魔族よりも上に立つと決めたッ!!

 なのにてめぇらが、魔族の誇りまで汚してんじゃねぇ!!!」


静寂。

誰も動けなかった。


ガイルの怒りは、ただの苛立ちではない。

それは“理不尽を許せない男の本能”であり、

同時に“魔族をも超える者”としての絶対的な誇りだった。


報告を聞いたあとも、

ガイルの拳はまだ震えていた。


「ヴェルイェイヌァイ……たかが上位魔族じゃねぇか。

 その傘下どもに……負けた、だと?」


その声に、魔族たちは顔を上げられない。

だが、ひとりが恐る恐る口を開いた。


「……許せません、ガイル様。

 奴らは……我らの魔法を“無効”にしてきました。

 対して、魔力もほとんど感じなかったのに……」


「――魔法を、無効?」


その一言に、空気が変わった。

ガイルの眼光が鋭く光り、低く唸る。


「今、なんて言った……?」


「ま、魔法を……無効化されました……!」


「……無効化、だとォ……?」


ガイルのこめかみに血管が浮かび上がる。

握りしめた拳から、骨が軋む音が響いた。


「ってことはよォォ!!!」


ガイルは吠えた。

「アルバードの連中に効かなかった“あの力”――!!

 同じ仕組みってことかァ!?!?」


地面を殴りつける音が爆ぜる。

砂塵が舞い、周囲の魔族たちは慌てて距離を取る。


「つまり!! そいつらがアルバードと手を組んでるってことだろがァァ!!!」


怒声が荒野を震わせる。

岩が砕け、地面が裂けるほどの圧。


だが――次の瞬間、ガイルの声が止まった。


「……いや、待て。」


歯ぎしりの音が聞こえるほどの沈黙。

ガイルの瞳の奥に、迷いが生まれる。


脳裏をよぎるのは、あの光景。

“ディアブロ”が倒れかけたとき、

その身を張って庇い、真っ先に命を落とした“ヴィル”の姿。


「……ヴィルは……ディアブロを……庇って死んだ……」


その記憶が、

“アルバード=敵”という構図を揺らす。


「アルバードが魔族を利用してるってのはわかる……だが……あのとき、あいつらは――」


ガイルは唇を噛みしめた。


「ヴィルてめぇは……なんで……あんなことを……」


拳が震える。怒りではない。

“理解できない何か”への、焦燥に似た震えだった。


「意味が……わからねぇ……」


空を見上げる。

黒雲が渦を巻き、雷光がその眼を照らす。


「魔族と人間……敵と味方……そんな線引きじゃねぇ。」


風が唸り、荒野の砂を巻き上げる。

ガイルはその中心で立ち尽くし、

混乱と確信の狭間で、ただ呟いた。


「……アルバード……てめぇら……何を、見てやがる……?」




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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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