↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
259/361

強みと弱点



そうして今に至るアルバードは、再び大きな変革の時を迎えていた。

人も魔族も、同じ場所に立ち、互いを支え合う景色。


かつては夢にすぎなかった光景が、今ここに少しずつ形を取り始めている。



王国は今、一つの選択を迫られていた。


アルバード――その戦力と生活水準の上昇により、人々は少しずつ集まり、確実に力を備えつつある。

小さな集団にすぎなかったはずが、今や国を揺るがす芽を宿していた。



王の手元には、一つのメモリアルストーンが置かれていた。

カイネル王はそれをじっと見つめながら、低く問いかける。


「……グレサス。この石についてだ。アルバードで生まれた発明だというが……。

これは放っておいて良いものなのか? 小さな勢力のうちに奪うべきではないのか?」


グレサスはすぐに首を横に振った。

「手を出すべきではございません、陛下。」


「何故だ?」王の瞳が鋭くなる。


「理由は二つございます。

一つ、この石がただの生活道具ではなく――戦場においても作用している可能性があること。

実際、我が軍の者たちは“魔法が打ち消された”と証言しております。

ディアナ・フォルセティアを粛清する際にも同様の現象が確認されました。

つまり、この石にはまだ解明されぬ“魔法を無効化する力”が秘められている可能性が高いのです。」


王は思わず顔をしかめる。

「魔法を……無効化だと……? そんなものがあれば、魔族にとっては天敵そのものではないか。」


「その通りにございます。」

グレサスは静かに頷いた。

「ゆえに、軽々しく奪うべきではありません。下手に力づくで取り上げれば、仕組みを理解できぬまま潰してしまう恐れもある。

いま重要なのは“情報”です。アルバードがどのようにして石を運用しているのか、その真実を探り出すことが先決かと。」


王は唇を噛み、苛立たしげに机を叩いた。

「だが解明など、我が魔道士たちが既に試みておる。成果は一つも上がらん!」


「だからこそ――鍵を握る人物を捕らえるのです。」

グレサスの目が光る。

「アルバードの中心にいるのはレイズという男。そして彼を支える者たち。

彼らを取り込むか、あるいは弱点を突くか。

いずれにせよ、彼らの口から秘密を引き出すのが最善策でございます。」


王は深く息を吐き、重々しく頷いた。

「……なるほどな。奪うのは早計、か。

だがもしその“魔法無効化”の力を我が王国が手にしたなら……魔族を滅ぼすことも夢ではない。」


「はい、陛下。」

グレサスは恭しく頭を垂れた。

「それこそが、王国に新たな時代をもたらす切り札となりましょう。」



王国は、力づくで奪う道を選ばなかった。

兵を出してアルバードを潰すことは――勝てても代償が大きすぎると判断したのだ。

代わりに王は、もっと冷徹で確実な手を選んだ。人質を用いた交渉という名の圧力。

表向きは「話し合い」だが、その裏にはいつでも拳を振り下ろせるという脅しが隠されている。


そして、その方針は――知らぬ間に、レイズの致命的な弱点となっていた。

彼は守るべき者を着実に増やし、命を何よりも大切にする男だ。

子ども、民、魔族の仲間たち――彼ら一人ひとりが、いつしかレイズの胸中に杭のように刺さっていた。


王国が握る“人”という切り札は、直接的な戦力では測れない。

それはレイズが最も避けたい選択――誰かを犠牲にするか、全てを差し出すか――を突きつける。

その問いが突きつけられたとき、レイズの決断はアルバードの未来を左右するだろう。


――だが、レイズ自身はまだ知らない。

王の盤上に置かれた“人質”という駒が、いずれアルバードを追い詰め、彼自身を選択に追い込むことを。


朝靄の向こうで、アルバードの旗が風に揺れる。

その影に潜む静かな嵐を、まだ誰も完全には理解していなかった。



グレサスは理解していた。

――ディアナ・フォルセティアをアルバードに取り込むことは、生半可な説得で成し得るものではない。

それを成功させたのであれば、彼女はもはや単なる人質ではなく、確固たる仲間。

そしてその存在は、切り離すことのできない“甘さ”としてレイズを縛ることになる。


グレサスは口の端を吊り上げる。


「本当にあの一族は学ばぬな。仲間を増やせば増やすほど、強くなるどころか脆くなることに――気付いてもいない」


彼の言う“個”とは、圧倒的な個人の力。

一人で千を薙ぎ倒すだけの存在こそが真の強さであり、集団の絆など脆弱にすぎぬと考えていた。

だからこそ、彼はアルバードの理念を嗤う。


「わからせてやろう……個の強さこそが、王国にとって最も厄介で、最も揺るぎないものだと」


――だが、グレサスは理解していなかった。

確かにレイズ自身は仲間を思うがゆえに、その存在を弱点にされる。

しかし、レイズ以外の者たちは違った。


彼らの忠誠は、もはや常軌を逸していた。

「レイズを守るためなら、命すら惜しくはない」

そう心から誓う仲間が、すでに彼の周囲には数多く芽生えている。


その忠誠が、ただの脆さで終わるのか――あるいは、グレサスの知らぬ“もう一つの強さ”へと変わるのか。

それはまだ、誰にも見えていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。