↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
258/362

リヴェルとセシルの出会い



セシルはアルバードの庇護のもと、隔離された場所でひっそりと育っていた。

人々は彼女の存在を受け入れようとはしなかった。


「なんで、魔族がここにいるんだよ……」

「見ろよ、あいつ。笑ってやがる。どんな神経してるんだ。」


陰口は絶えなかった。だが、誰も彼女に手を出すことはできなかった。アルバードの加護があったからだ。


セシルはそれを理解していた。理解した上で、それでも笑顔を絶やさなかった。

それは誰かに教えられたものではなく、ただ彼女自身が選んだ生き方だった。

――憎まないこと。

――まっすぐに生きること。


だからこそ、彼女の笑顔には曇りがなかった。



---


やがて成長したセシルは、ヴィルの実の息子――リヴェルと顔を合わせることになる。


「君が……セシルか。初めて会えたね。」


軽い調子で声をかけたリヴェルに、セシルは少し緊張しながらも答える。


「そ、その……ヴィル様にお世話になっています。

 私に……話しかけてくださって、ありがとうございます。」


そして、はにかむように笑顔を向けた。


その瞬間、リヴェルは息を呑んだ。

目の前の少女の笑顔には一切の曇りがなく、ただ真っすぐに自分を映していたからだ。


王国から「次代の宝」とまで称される彼でさえ、その透明な光を前にどう応じればよいのか分からなかった。



---


それからというもの、リヴェルはセシルのもとを訪れることが増えていった。

気が付けば、二人で過ごす時間は日常になっていた。


ある日のこと。リヴェルは思い切って口を開いた。


「君の父は、僕の父と兄弟にあたる。

 父は多くを語らないけど……君を見ていると分かる。

 きっとウィズ様も偉大な人だったんだって。」


セシルは少しだけ悲しそうに笑った。


「私は……父も母も、よく覚えていないんです。

 でも……感じるんです。

 私のことを、すごく愛してくれていたって。

 私のことを……」


言葉は途中で途切れ、頬を伝って涙が零れ落ちた。


本当は分かるはずがない。

父と母の愛を当たり前に受けて育つことができなかった彼女が、その温もりを知っているはずがないのだ。


けれど――セシルは確かに信じていた。

愛されていたことを。

希望を捨てずに、生きていることを。


その姿に、リヴェルの胸の奥に強い衝動が宿る。


(……この子は、俺が守らなくてはならない。)


それは同情ではなかった。

ただ、心の奥底からあふれ出す、確かな決意だった。


だが、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。


王国に――セシルの出自が知れ渡ってしまったのだ。

誰が告げ口をしたのか、どこから漏れたのかは分からない。

しかし日に日に成長するセシルの面影を見て、気付く者がいた。


「あれは……ヴィズと、ダークエルフの娘だ」


その噂は瞬く間に広がり、やがて王の耳に届いた。


王は重々しく命を下す。

「ヴィル……私は残念だ。なぜヴィズの隠し子を匿っていた?」


ヴィルは堂々と答える。


「確かに、セシルは弟ヴィズの娘です。

 ですが――子に罪はありません。

 だからこそ、私が育てました。」


王の顔に怒りが走る。


「貴様! 王国を愚弄するか!

 騎士の座に連なるお前がそれでは、誰が王国の誇りを守るというのだ!」


そして冷酷に続ける。


「最後にチャンスをやろう。セシルを殺せ。

 二度は言わせぬぞ。」



ヴィルは静かに剣を握りしめ、はっきりと告げた。


「セシルはすでに、私の息子リヴェルと結ばれている。

 それを殺せと言うのは――すなわち、私に息子も殺せと命じることですか?」


その声音には、王に向けられた明確な敵意が込められていた。


王は深く頭を抱え、やがて吐き捨てるように言った。


「……ならば、アルバードは王国に連なることに相応しくない。

 命は取らぬ。だが責任は重い。

 ――お前を騎士から除名する。」


こうしてヴィル・アルバードは王国騎士の座を追われた。



その話は瞬く間に広がった。

アルバード家に仕えていた多くの騎士は、立場を恐れて次々と離れていく。

だが――ただ一人、静かにヴィルのもとを訪れた者がいた。


セバスである。


彼はひざまずき、低い声で言った。


「ヴィル様。あまりにも……王国の判断は誤っています。

 どうか、私を――あなたの部下としてお仕えさせてください。」


ヴィルは目を細め、問いかける。


「……それがどういう意味を持つか、分かっているのですか?」


セバスは迷いなく首を振った。


「はい。私には身内もいません。

 すでにただの一人の騎士に過ぎない。

 失うものも、守るべき立場もない。……安心してください。」


その声音に、ヴィルは深く理解した。

セバスは――もはや“国”や“王”を守るのではない。

目の前の人間、その在り方を守ることを選んだのだと。



だが、その決断は――セシルの心に深い傷を残した。


「わたしのせいで……

 ヴィル様も……セバス様も……

 そして……リヴェル様まで……」


彼女は一人、声を殺して泣き続けた。

自分が存在することで、大切な人たちを苦しめてしまった。

そう思わずにはいられなかったのだ。


しかし、そんな彼女を放っておけるはずがなかった。

リヴェルはそっと寄り添い、揺れる瞳をまっすぐ見つめて言った。


「気にするな。間違っているのは父でも、セバス様でもない。

 そして――君も間違っていない。

 僕はそんな“正しいセシル”が……大好きだ。」


その言葉はまるで光のように、セシルの胸に届いた。

彼女は嗚咽を止めることはできなかったが、それでも確かに救われたのだった。



こうして、王国から完全に孤立したアルバード家。

その決断は、やがて訪れる王国と魔族の大戦において――

大きな悲劇を生み出す引き金となってしまう。


それは、レイズの知らぬ過去。

そして決して知ることのない――真実の物語であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。