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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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ウィズの歴史



かつての王国において、騎士団の序列は今とはまったく異なる形をとっていた。


第一位は、王国の至宝と称えられた ヴィル・アルバード。


第二位は、その弟であり同じく剣と魔を極めた ヴィズ・アルバード。

この二人は、まさしく王国の誇りであった。



第三位には、後にグレサスやウラトスの父となる メイガス・グレイオン。

第四位には、名将として知られる セバスの名も連ねられていた。


――そう、かつてはヴィルもヴィズもセバスも、間違いなく“王国の騎士”としてその職務を果たしていたのだ。


だが、魔族との大戦を経て王国が勝利を収めたのち、状況は一変する。

戦で捕らえられた魔族たちは“戦利品”として王都へ連れ帰られた。

そして王国は、彼らを「実験」や「慰み者」として利用し始めたのである。


その中には――ひときわ美しい容姿を持つ一人のダークエルフ、レイもいた。

彼女は王族の一人、リーゲルの目に留まり、慰み物として扱われようとしていた。


その運命に真っ向から反対の声を上げたのが、第二位の騎士ヴィズだった。


ヴィズは王国の非道を許さなかった。

そしてその夜、レイだけではなく数多の捕らえられた魔族を解放し、彼らを逃がしたのである。


それは王国にとって最大の裏切りだった。

ヴィズは反逆者として追われる身となり、王自らの命で 「その首を刎ねよ」 と命じられたのは――他ならぬ兄、ヴィルだった。


ヴィルは苦悩した。

なぜ弟は裏切ったのか。

なぜ魔族に肩入れするのか。

理解できぬまま、ただ兄としての葛藤を背負い続けた。


一方で――追われるヴィズは流浪の旅を続け、やがて再びレイと出会う。

かつての“捕らわれ人”と“救い手”。

最初、レイにとって人間と共に歩むなど到底あり得ぬことだった。


だが、ヴィズの人柄と、彼の持つまっすぐな想いに触れるうちに……

次第に二人の距離は縮まっていった。


そして、レイの心に芽生えたのは、かつて憎んだはずの「人」への――

一人の男への確かな情だった。


セシル誕生と別離


旅を続けた二人――ヴィズとレイ。

やがて彼らのもとに、一人の小さな命が授けられた。


セシル。


二人の希望そのものだった。

人の国にも、魔族の領にも居場所はなく、ただひっそりと身を潜めながら。

それでも二人は、彼女を守り、育て、慈しんだ。

世界のすべてを敵に回したとしても、この子だけは守る――そう誓って。


だが――その存在は、やがて魔族たちに知られてしまう。


「人と魔の子など……」

嘲笑と怒号の中、魔族の矛先が彼らに向かう。


ヴィズは立ちはだかった。

だが彼は魔族を殺すことを決して選ばなかった。

愛するレイの同胞を、自らの手で傷つけることはできない。


ゆえに彼の剣は奪うためではなく、守るためだけに振るわれる。

斬っても斬らず、ただ打ち払う。

圧倒的な実力があっても、倒さぬ戦いはやがて限界を迎えようとしていた。


その中で、魔族はレイへと迫る。


「――人を庇うならば、我らはダークエルフを同胞と認めぬ。

 おまえのせいで、すべての同胞が滅ぶことになるぞ。」


選択を迫られたレイの胸は引き裂かれる思いだった。

自分の愛が、多くの仲間を犠牲にする。

だが逃げることは、すなわち同胞の死を意味する。


震えるレイに、ヴィズは静かに告げた。


「セシルは……俺が責任をもって育てる。

 だから、レイ――おまえは帰るんだ。」


「……嫌っ! 私も一緒に――!」


必死に拒む声を、ヴィズは優しい眼差しで封じた。

その眼に宿る決意の強さが、レイに悟らせた。

この人の心はもう揺るがない、と。


――そして、決断の刻は訪れた。


最愛の娘、セシル。

彼女はヴィズの腕に抱かれ、人の国へと逃される。

レイは涙と共に、その小さな背を見送るしかなかった。


こうして二人は――永遠とも思える別れを迎えたのだった。



ヴィズは娘セシルを抱きしめながら、真っ直ぐに兄のもとを訪れた。


その姿を見たヴィルの胸は、怒りと悲しみに引き裂かれる。


「……なぜ隠れて生きようとしない!

 生きろ、ヴィズ! お前が生き延びてこそ、この子も守れるのだ!」


叫ぶ声には、弟を思う兄の優しさと焦燥が滲んでいた。


しかしヴィズは、静かに首を振る。


「この子は……俺の、大切な娘だ。

 どうか……兄さん、この子を守ってやってほしい。」


その言葉の奥に込められた意味を、ヴィルは悟った。

弟はもう、自らの運命を決めている。

その顔には、深い疲労と――揺るぎない覚悟が刻まれていた。


「……やめろ、ヴィズ! お前を失うくらいなら、俺は全てを敵に回してでも――!」


必死に言葉を重ねる兄を、弟は落ち着いた眼差しで制した。


「兄さん。私は……魔族も、人も、大切だ。

 どちらかを敵にすることは、俺にはできない。」


そして、娘の小さな額に口づけを落とす。


「セシル……お前ならきっと分かってくれる。

 大切な娘よ……」


それはまるで――永遠の別れを告げるような声音だった。


そしてヴィズは、一人で王のもとへと歩み出した。


抵抗はしなかった。

王直属の騎士たちが取り囲み、彼を連行する。

その列の中には、セバスとメイガスの姿もあった。


セバスは沈黙のまま、惜しむような視線を弟へ向ける。

だがメイガスは怒声を上げた。


「裏切り者がっ!! 貴様は王国を捨てたのだ!!」


その罵倒を受けながらも、ヴィズはただ歩き続けた。

一度たりとも振り返らず、騎士としての最後の誇りを胸に。


――そして、かつて「王国の宝」とまで讃えられた男は、王の前に跪くこととなる。


冷酷な宣告は、迷いなく下された。


「……ヴィズ・アルバード。

 この国を裏切りし者として、その命、処刑に処す。」


その瞬間、王国の宝はただの“罪人”へと堕とされた。


処刑の日。


王都の広場には数多の民衆が押し寄せ、罵声が飛び交っていた。

かつて「王国の宝」と讃えられた騎士は、今や裏切り者として晒される。


その場には――ヴィルの姿があった。

兄は、最愛の弟の最期を見届けるために立っていた。


セバスもいた。

尊敬する男の死を受け入れられず、唇を噛みしめながら。

(ヴィズ様が……死に値するはずがない……!)


そして、メイガスもまた姿を見せていた。

その顔には嘲笑を浮かべ、声を荒らげる。

「お前が死なねば、アルバードに未来はない! 裏切りの責任を取れ!」


やがて、広場のざわめきが静まる。


処刑人が剣を構えたその瞬間、ヴィズはゆるやかに口を開いた。


「……私は、お前たちを愛している。」


ただ一言。

それだけだった。


愛――。


あまりに純粋すぎるその言葉に、群衆はざわめき、王すらも一瞬動揺を見せた。

だが同時に、その言葉こそが許せなかった。


「なぜだ……なぜ人を裏切った者が、その口で“愛”などと――!」


王の声は怒りに震え、処刑の合図が下される。


――刹那。


剣が振り下ろされ、静寂が広場を覆った。


ヴィズ・アルバードは、かつて二位の騎士と呼ばれた男は、こうして幕を閉じた。


最期に残したのは、裏切りでも反逆でもなく――愛の言葉だけ。


その光景に、ヴィルは声もなく涙を流す。

セバスは拳を握り締め、血が滲むほどに悔しさを押し殺した。

そしてメイガスは、冷笑を浮かべながら吐き捨てる。


「……戯言だ。」


だがその最期の言葉は、確かに人々の心に残った。

そして後に――ヴィルとセバスに、大きな決断を迫ることになる。


このとき、その未来を知る者は誰一人いなかった。



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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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