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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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湯けむりの密会



湯船に身を沈めながら、リアノは両手を胸の前でそっと組み、少し遠慮がちに口を開いた。


「その……フェリルさん。またお邪魔してしまって、ありがとうございます。」


「いいえ、気にしないで。」

フェリルは柔らかな笑みを浮かべると、湯に濡れた髪を耳にかけながら嬉しそうに問いかける。

「リアノさん。私たちって――あなたから見たらどう映りますか?」


突然の質問に、リアノは少しだけ考え込む。

「そうですね……とても暖かい、と感じました。ただ……皆様の元気には驚きましたけど」


「あぁ……そうですね。」フェリルはどこか遠い目をする。

「でも本当は普段、皆とても静かなの。リアノさんやレイズさんが来てくれたから、あんなふうに弾んでる。すごく喜んでいるんです。」


「そ、そうなんですね……」

リアノは目を瞬かせ、そしてふと思いついたように小さく声を落とした。

「でも……レイズ様も、ここに来るといつもと少し違うんです。」


「へぇ? どんなふうに?」

足でパシャパシャさせながらフェリルが意地悪そうに、にやりと笑う。


「アルバードにいる時のレイズ様は……いつも緊張して、張り切りすぎて……どこか無茶をされてます。私は今では慣れましたが……最初の頃は、それがとても苦しくかったです。」


「んー……」フェリルは湯気の向こうで小さく首を傾げる。少しいつもとは違う軽い口調で

「やっぱり頑張りすぎなんです。ほら、一人でティグルに行こうとしたこともありましたよね? あれも無茶だったと思う。」


リアノは頷いた。

「ええ、そうなんです。でも……ここでは少し違うんです。自然体というか……力みが抜けている感じがします。私には……わかるんです。」


フェリルは目を細め、含みを持たせたように微笑む。

「なるほどねぇ?リアノさんには、ちゃんとわかるんだね?」


「はい。」

リアノは照れくさそうに頬を赤らめながらも、誇らしげにうなずいた。


「ふふっ……リアノちゃんは、レイズさんが大好きなんだね。」


不意を突かれた言葉に、リアノは湯気の中で真っ赤になった。

「そ、そんなに……わかりやすいですか?」


「むしろ、わからない人なんているのですか?」

フェリルの軽口に、リアノは思わず心の中で――クリスと、そして肝心のレイズ本人の顔を思い浮かべた。


「……レイズ様は、わからなくていいんです。」

リアノは小さく首を振り、視線を落とす。

「私のこの気持ちは、きっと……レイズ様の重荷になってしまうと思いますから。」


フェリルの表情が柔らかさを帯び、けれど真剣な声音で告げた。

「いいえ、重荷なんかじゃないです。それは“純粋”です。相手を強く想い、その想いを重ね合えば……一人でできることなんかより、もっとたくさんのことができるんですよ。」


「……!」

リアノは驚きに目を見開き、心の奥に強い憧れが芽生えるのを感じた。


「フェリルさんは……」

勇気を振り絞り、リアノは小さな声で問いかけた。

「好きな方……いえ、想いを寄せている方は、いるんですか?」


湯けむりの中、リアノの問いは静かに揺れて、フェリルの胸に届いた。


フェリルは湯面を指で弾きながら、冗談めかした調子で言った。


「そうね……レイズさんは、いいなって思うかな。」


その一言に、リアノの表情がかすかに曇る。

「やっぱり……」

胸の奥に小さな棘が刺さったように、声が沈んだ。


けれどフェリルはすぐに柔らかく微笑み、続ける。

「でもね、レイズさんは――リアノちゃんのことを好きだと、私は思うな。」


「……!」

リアノの顔がぱっと明るくなる。しかし次の瞬間、再び視線を落とした。

「ですが……レイズさまにはイザベル様がいますから。」


「イザベル……?」

フェリルはその名を口にし、しばし記憶を探る。

やがて脳裏に浮かんだのは、あの日の光景――ヴィルを背に抱え、アルバードへ帰ってきたレイズ。その胸にすがり泣きじゃくっていた少女の姿。


「あぁ……あの子がイザベルさんかぁ。」


フェリルは静かにうなずき、リアノの方へ向き直った。

「いいですか? レイズさんの隣にいるのは、立場や繋がりの深さで決まるものじゃないの。レイとウィズさんが結ばれたように……本当に大切なのは、その“結び”の形です。遠慮してしまうのは――それこそ不純でしかないんです。」


その言葉は、リアノの胸に真っ直ぐ届いた。

湯けむりの中、彼女の瞳は潤みながらも少しずつ輝きを帯びていった。


フェリルの言葉は、静かな湯気の中でじんわりと響き続けた。

「立場や繋がりじゃなく、“結び”の形こそが純粋――」


それはダークエルフなりの価値観なのかもしれない。

人の世界では、立場や血筋、約束事が縛りとなり、誰かの隣を選ぶ。

けれど彼らは違う。ただ心を重ね、想いを貫くことを純粋と呼んでいた。


リアノは胸の奥で、その価値観を強く抱きしめる。

「……私も、そんなふうに……純粋でありたい。」


自分の想いを遠慮や重荷だと考えるのではなく、ただ真っ直ぐに――。

それが、今の自分に必要な強さだと、リアノは初めて気付いた。


湯気の向こうで、フェリルが優しく微笑む。

リアノの心に芽生えた小さな決意を、まるで見透かしたかのように。


リアノは湯の中で膝を抱えながら、小さく呟いた。

「……でも、私に……できるでしょうか……?」


その問いかけには、不安と迷いが滲んでいた。


フェリルはふっと柔らかく笑う。

「リアノさん、それは純粋な質問じゃないですよ。」


驚いたように顔を上げるリアノに、フェリルは続ける。

「できるか、できないかなんて関係ないんです。

 大事なのは――したいか、したくないか。

 それだけです。」


その言葉は軽やかで、けれど芯のある強さを含んでいた。

リアノの心にふわりと落ち、じんわりと温かく広がっていく。


「……したい、です。私……レイズ様の隣にいたい。」


頬を赤らめながらも、リアノははっきりと口にした。

フェリルは優しく頷き、湯気の向こうで穏やかな笑みを浮かべるのだった。



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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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