父に似るレイズ
案内され、レイズとリアノはフェリルと共に一室へと通された。
卓を囲んで腰を下ろすと、レイズが開口一番、真剣な表情で問いかける。
「……フェリル。ダークエルフって、いつもあんな感じなのか?」
フェリルはわずかに微笑んでから、すぐに表情を引き締める。
「いいえ。普段の彼らは“純粋”という言葉を口にすることなど、滅多にありません。」
その答えにレイズは眉をひそめた。
「じゃあ、なんでさっきはあんなことに……?」
言葉を探すように首を傾げたその時――。
『――純粋なるお客を部屋に入れたぞ!!』
外からの騒ぎ声が割って入った。
レイズとフェリルは顔を見合わせ、短い沈黙が流れる。
フェリルは静かに続けた。
「彼らは本来、寡黙で冷静な部族です。誇りも高く……私は、そんな彼らを心から誇りに思っています。」
その瞬間、外から再び声が飛び込んできた。
『なんだと!? フェリルの小娘が!! なんたるハレンチなやつだ!!』
「……」
レイズは深く息を吐き、肩をすくめながらも、静かに頷いた。
「そうか……たしかに、彼らは誇り高い。俺も、尊敬しているよ。」
リアノはくすっと笑いながらも、誇りと騒がしさの間を揺れる空気に、言葉を挟むことができずにいた。
「それで……フェリル。」
レイズは真剣な眼差しを向ける。
「実際にお願いしたいのは――アルバードを守るために。いや、それだけじゃない。ここにいる皆、そしてヴェルたちを守るためにも……ダークエルフの力を借りたいんだ。」
フェリルは「ヴェル」という名を聞き、すぐに魔族の長を指すのだと気付き、静かに頷いた。
「もちろんです。レイズさんは……いえ、レイにとっても、私たちにとっても家族のような存在ですから。」
「ありがとう、フェリル。」
そこからは一気に空気が引き締まり、二人は具体的な運用について意見を交わし始めた。
時折、外から響くダークエルフたちの賑やかな声が耳に届くが、気にしないよう努めながら――。
「ただ……実際には戦わせるつもりはない。」
レイズの声は揺るぎなかった。
「彼らの命を犠牲にすることは、俺の望むことじゃない。」
その言葉に、フェリルはふっと目を細める。
「……本当に、レイズさんはお父様にそっくりですね。」
かつて、リヴェルもまた同じように人の命を何より重んじていた。
その姿が、目の前の少年に重なって見えたのだ。
すると、外から大きな声が飛んできた。
『俺たちは純粋なるレイズ様を! 命をかけても守るんだ!!』
「お、おいおい……!」
レイズは慌てて窓に向かって声を張る。
「命を失わせたりはしないからな!? そこは間違えるなよ!」
だが熱気は止まず、ますます盛り上がっていく気配が伝わってくる。
フェリルはため息をつき、ついに立ち上がった。
「……もう、そろそろ外野に向かって一言、釘を刺しておきます。」
窓へ向かおうとする彼女を、レイズが慌てて制止する。
「フェリル、いいんだ。」
「……レイズさん?」
レイズは落ち着いた微笑を浮かべて言った。
「彼らの“純粋な言葉”は……俺は気に入っている。」
フェリルは一瞬、目を見開き、やがてその表情を和らげた。
「……ありがとうございます。」
感動したように小さく頭を下げるフェリル。
だが、レイズの胸中は別だった。
(……いやいや、もしフェリルが顔を出したら、また“純粋コール”が再開するだろ……)
先ほどの騒ぎを思い出し、内心で冷や汗をかいていた。




