テンションは最高峰に
「――純粋! 純粋!」
再び響き渡る“純粋コール”。異様な熱気を帯びた集落は、もはやお祭り騒ぎのようだった。
フェリルは額に手を当てて、困り果てたように呟く。
「……話が進みません!」
しかし、その声にすら周囲は大げさに反応した。
「なにっ!? フェリルよ、我らの“純粋なる喜び”を妨げるつもりか!」
「純粋を阻むことなど、純粋ではないぞ!」
再びガヤガヤと騒ぐダークエルフたち。
レイズはついに痺れを切らし、深呼吸してから大声を張り上げた。
「――それではっ!! 皆様っ!!
私の“純粋なる願い”を聞いてくださいっ!!!」
その一言に、場の喧騒がぴたりと止まる。
無数の瞳がレイズに注がれる。
「……きかせてみろ。その純粋なる願いとやらを。」
真剣な眼差しに射抜かれ、レイズは思わず笑いをこらえながら言葉を探す。
「そ、その……あれだ。
皆に……アルバードの仲間になってほしいんだ!」
その告白に、しばし沈黙。
そして次の瞬間、ダークエルフたちは一斉に爆笑し、声を張り上げた。
「ははは! なにを言う! すでに仲間ではないか!」
「純粋なる仲間だとも!」
またしても歓声がわっと上がり、盛り上がる集落。
レイズは頭を抱え、ぼそりと呟く。
「……テンション高すぎなんだよ……」
その横でリアノは口をぽかんと開け、呆然と光景を見つめていた。
「……す、すごい……。レイズ様すらついていけない……」
ダークエルフの圧倒的な熱気に、二人はただただ翻弄されるばかりだった。
レイズは腰の袋から、一つの石を取り出した。
「――これは、メモリアルストーン。」
澄んだ音を立てて掲げられると、それまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
集落全体に、緊張が走った。
「魔石とは違う役割を持つものだ!」
力強い言葉に、ダークエルフたちはざわめき、そして妙に感心したように頷く。
「……メモリアルストーン……純粋な響きだ……」
「美しい名だ……」
なぜか感動する方向を間違えている。
レイズは額に汗を浮かべつつも、使い方を丁寧に説明し、そっとフェリルへと手渡した。
「……っ!」
フェリルが抱きしめるように受け取ると、集落の空気が一変する。
「フェリルだけずるいぞ!!」
「なぜお前だけが純粋を受け取るんだ!」
わっと怒号にも似た声が上がり、騒ぎは再燃する。
レイズは眉をひそめ、再び袋の中からもう一つを取り出した。
すると――再び一瞬で静まる。
「……」
「……」
数百の瞳が一斉に輝き、息を呑むように見つめていた。
レイズは深呼吸し、堂々と告げる。
「――これを……いまある分は皆に配る!!」
一瞬の沈黙。
そして――。
「純粋な太っ腹だ……!」
「レイズ様、なんて純粋なんだ!」
大歓声が爆発する。
集落は熱狂に包まれ、ダークエルフたちは我を忘れて盛り上がった。
レイズは額を押さえ、思わずぼそりと漏らす。
「……なんだこのノリ……」
リアノは隣で、口をぽかんと開けたまま呟く。
「……すごい……ダークエルフの人たちって、こんなにテンション高いんだ……」




