恋バナ?
場面は変わり、屋敷の一室。
リアナ、イザベル、ディアナ、クリスの四人が集まって談笑していた。
最初に口を開いたのはリアナだった。
「最近のレイズ様、なんだか眼がキラキラしてますよね!」
ディアナは大きくため息をついて肩をすくめる。
「ほんとに……良い意味でも悪い意味でも、皆を振り回してばかりです。」
「そんなことはありません!」
クリスが食い気味に言葉を重ねる。
「レイズ様の仰ることは、すべて正しいのです!」
「はいはい。」
ディアナはあっさりと受け流し、温かい無視で返す。
その空気を破ったのはイザベルだった。
「ねぇ……レイズくんって、好きな人いると思う?」
唐突な問いかけに、場が少しだけ静まる。
真っ先に答えたのはリアナだ。
「それはいますよ!! イザベル様のことも、リアノのことも、あとディアナさんも! それに……多分ですがクリス様のことも!」
「……多分、なのですか?」
クリスの顔が一気に曇る。
「そんなわけないでしょう。」
ディアナが呆れたように割って入った。
「レイズ様は皆を等しく大切にして、等しく好きなんです。」
「……!」
その言葉に、クリスの顔に生気が戻る。
だが、イザベルは少し視線を逸らしながら口を尖らせた。
「そういう話じゃなくて……」
頬に朱を差しながら、小さく付け加える。
ディアナが鋭く笑みを浮かべた。
「分かってます。――恋心を、誰に向けているかってことですよね?」
「べ、別にそれは……!」
イザベルは慌てて否定するが、声が上ずっている。
そこでリアナがにやりと笑い、追撃を放った。
「だってイザベル様、レイズ様のこと好きですよね?」
イザベルの顔が真っ赤に染まる。その横で、クリスまでもが口を開いた。
「さすがに……私も気付いていますよ。」
「……!」
イザベルはさらに慌てふためく。
だが、ディアナが呆れたようにクリスへ視線を向けた。
「あなたはまったく気付いてないですけどね……自分のこと。」
「……え?」
クリスは首を傾げるばかりだった。
会話がひと段落したあと――。
クリスは部屋の隅でぶつぶつと呟いていた。
「……私には気付いていないことが……? 一体、私はレイズ様の何をわかっていないというのだ……」
難解な謎を解こうとする学者のように眉間に皺を寄せ、真剣そのもの。
それを見たディアナが呆れ顔で肩をすくめた。
「ほんと……なんでいい男って、揃いも揃ってアホばっかりなんですかね。」
「えっ、クリス様はアホなんですか?」
純真な目で問いかけるリアナ。
「ふふっ……」
イザベルがくすりと笑って言葉を挟んだ。
「レイズくんの次にアホだよね、クリスは。」
「なっ……レイズ様のことをアホといわせない!」
クリスが勢いよく言い返した――が、相手がイザベルだと気付いた瞬間、慌てて深く頭を下げる。
「……し、失礼いたしました。申し訳ございません!」
イザベルはそんなクリスを見て、苦笑しながらも心配そうに首を振った。
「……もはや忠誠というより病気よね。」
その一言に、ディアナもリアナもつい吹き出してしまう。
笑い声と呆れ声が入り混じり、屋敷には和やかな空気が響き渡るのだった。
和やかな笑いが屋敷に響く。
イザベルが肩をすくめ、ディアナが呆れ、リアナが天真爛漫に笑い、クリスが律儀に謝罪する。
四人の空気は不思議と心地よく、そこに流れるのは家族にも似た温もりだった。
――だが、その会話をこっそり聞いていた一人の“アホ”がいた。
そう、レイズである。
柱の影からこっそり覗き見していたレイズは、四人の笑顔を目にしてふと胸を熱くした。
「……今ならヴィルの気持ちがわかる。」
感慨深げに呟くその顔は真剣そのもの。
だが実際には――やっぱり何も分かっていない、救いようのない“アホ”だった。




