成果比べ
一連の発明が形となったとき、アルバードの姿はもはや別世界のものに変わっていた。
城壁には一定間隔で光るメモリアルストーンが設置され、
細く薄いミスリル線で繋がれている。
その一角には魔力石を据える台座があり、石を置けば――
瞬く間に城壁全体がまばゆい光を放った。
その光景は、この時代の常識を遥かに超えた幻想の世界だった。
「……い、いったい何が起きているんですか!?」
驚きに声を上げたのは、一台の馬車に揺られて帰還した――リールだった。
抱えていたのは、自らの商才による確かな成果。
メモリアルストーンを王都の大貴族たちへ売り込み、
莫大な利益を手にして戻ってきたのだ。
「これならレイズ様もきっと驚いてくださる」
そう胸を張っていたはずなのに――。
アルバードの町並みに踏み込んだ瞬間から、リールは度肝を抜かれた。
城壁は輝き、夜を忘れるほどの光に包まれ、屋敷の中までも幻想的に照らされている。
「……私の成果なんて、比べものにならない……」
誇りに満ちていた気持ちは、到着した頃にはすでに疲労と戸惑いにすり替わっていた。
そして――。
屋敷の奥から現れたのは、学士のような姿をしたレイズ様だった。
どこから持ってきたのか眼鏡をかけ、くいっと押し上げながら、にやりと笑う。
「よく来たね、リールくん。」
その芝居がかった仕草に、リールは思わず天を仰ぐ。
「……私の報告よりも、霞んでしまいますよ、レイズ様……」
その隣でイザベルが肩を揺らし、声を上げて笑った。
「ほんっと、バカ。でも……そういうとこ、ほんとに...」
そう言いかけて、リールをみなで温かく迎えいれるのだった。
「それで――!」
リールはすぐさま身を乗り出した。
「わたしの報告よりも先に、お聞かせください。これは、この……一体何があったんですか!?」
問い詰めるように尋ねると、レイズ様は一転して真剣な顔になり、低く答えた。
「ああ。アルバードは……新しい強さを手に入れたのだ。」
「えっ……!」
その言葉に息を呑んだリールの隣で、イザベルが軽く手を挙げた。
「リールさん? 私はイザベルといいます。……正直に言うと、レイズくん、ちょっと頭使いすぎて頭おかしくなってます。だから、私がちゃんとお話しします。」
「なっ!? おい、イザベル!」
レイズ様が目を見開くが、イザベルはどこ吹く風だ。
リールは胸に熱いものが込み上げてきた。
「……それほどまでに、レイズ様は努力をされていたのですね。わかりました。では、ここではなく、別の場所でゆっくりとお話を伺わせてください。」
「ええ、そうしましょう。」
イザベルはにっこりと微笑み、僕を案内する。
「おい! 誰が頭おかしくなっただよ! こら、待て! 俺を無視すんな!!」
必死に叫ぶレイズの声を背中に、リールとイザベルは屋敷の奥へと歩いていった。
振り返れば、レイズが慌てて追いかけてくる姿。
その光景に、リールは思わず苦笑してしまうのだった。




