没頭するは発展へ
文明の発展に手応えを覚えたレイズは、その日から次々と新たな試みに没頭していった。
魔力石の性質を探るため、彼は幾度となく実験を繰り返す。
やがて浮かび上がったのは、この石が持つ本来の姿だった。
魔力石は――じんわりと、ゆるやかに魔力を放出する。
それは灯りや風といった軽い現象を起こすには十分だったが、水や氷のように質量を伴う魔法を発動させるには力が及ばない。
「つまり……大きなものを動かすのは無理でも、小さな現象なら制御できる。」
試行錯誤は続いた。クリスとディアナもまた、その研究に力を貸し、共に答えを探った。
そして――確実な形が生まれていく。
それは“冷箱”と呼ばれる装置だった。
内部に冷気を満たし、食料を長く保存できる箱。
さらには、水を温める器具さえ生まれた。
小さな発明の積み重ねは、生活を変える大きな一歩となり、用途は多岐に広がっていった。
こうしてアルバードの文明は、急速に進化を遂げていく。
もはや剣や魔法の強さだけでなく、暮らしを支える技術までもが、この屋敷に根を下ろし始めていた。
だが、その進歩にはひとつの影があった。
――魔力石の需要が、日に日に高まっていくのを実感する。
「次にリールが来た時には、必ず大量に確保しておかねば……。」
レイズはそう決意を胸に刻んだ。
アルバードは確実に、“力”だけではない、新たな力を蓄えていくのだった。
イザベルは、ひたむきに研究へ没頭するレイズの姿をしばし見つめていた。
その表情は真剣そのもので、まるで誰にも邪魔できない炎が宿っているかのようだった。
「……私にも、やらせてよ!」
突如、彼女は声を上げた。
レイズが驚いて振り返ると、そこには真剣な眼差しをしたイザベルが立っていた。
その熱意に押されるように、リアノもリアナも「私もお願いします!」「わたしもー!」と次々に加わる。
気がつけばアルバードの屋敷は――いや、かつての屋敷だった空間は――
いつの間にか研究所さながらの光景へと変貌していた。
一方、その影響は屋敷の外へも広がりを見せていた。
アルバードの領内を流れる川は一本きり。
人々が水を得る方法は、その川から汲むか、水属性石を使って少量を生み出すかの二択しかなかった。
だが、レイズの発明がそれを覆した。
至る所に設置された“水の装置”によって、人々は居住地を広げ始めたのだ。
「水さえあれば暮らせる」――その当たり前を、レイズが形にしてしまった。
気づけば、アルバードの領内には人々が集まり始め、住居は増え、賑わいは日に日に膨らんでいった。
そして――その光景を目にしたダークエルフたちは、息を呑んだ。
「これは……ただ事ではない。」
彼らは集落へ戻り、急ぎ報告することを選ぶ。
その波紋は瞬く間に広がり、やがて魔族領にまで届くこととなるのだった。
そしてそんな風にすでに拡大を始めていたことはレイズは知るよしもなかった。




