水呑場を作る
町を抜け、少し離れた寂しい場所に二人は辿り着いた。
周囲には何もなく、ただ風が吹き抜けるだけの荒れた地。
レイズは持参したメモリアルストーンと道具を取り出すと、何の迷いもなく作業を始める。
近場に転がる巨大な岩を片手で軽々と持ち上げ、素手で叩き割っていく。
破片は正確に整えられ、やがて設置物の土台として組み上げられていった。
その光景はどう見ても人間離れしていたが――本人も、隣で見守るクリスも、それを当たり前のように受け止めていた。
最後にレイズはメモリアルストーンを中央に据える。それを再び石で重ねクリスにそれをしっかり接着するように頼む。
そうして掌をかざし、静かに魔力を注ぎ込むと――。
ごうっと低く響く音とともに、大地から水が湧き出した。
やがて流れは小川となり、透明な水が陽光を反射してきらめく。
「……できたな。」
レイズは満足げに息を吐き、石に短く刻む。
――“喉が乾いたら魔力を注げ”。
そして仕上げに、アルバードの紋章を彫り残した。
こうして、町から少し離れたこの場所に、新たな水の供給ポイントが生まれた。
人々が自由に利用できる公共の泉――。
それは大仰な宣言もなく、ただ静かに置かれた贈り物だった。
だが後に、この小さな泉が町の人々の生活を大きく潤すことになるのを、レイズもクリスもまだ知らなかった。
レイズとクリスは、その後もいくつもの場所に同じ装置を設置していった。
そして、偶然近くを通りかかった人に声をかける。
「これは俺とクリスの魔力で発明したものだ。
壊せば二度と使えなくなる。だから取り扱いにはくれぐれも注意してほしい。」
そう言いながらレイズは実演を始める。
「さあ、魔力を注いでみてくれ。」
恐る恐る手をかざしたその人物の魔力が石に注ぎ込まれると――。
次の瞬間、澄んだ水が勢いよく湧き出し、地面を濡らして小さな水流を生み出した。
「……! これは……とんでもないぞ!!」
その人は震えながら声をあげ、目を潤ませて感謝を告げる。
「ありがとう、本当にありがとう!」
レイズは静かにうなずき、短く伝える。
「もし喉が渇いたら、この装置を使うといい。
ただし、絶対に壊さないこと。
そして、この使い方を周りの人にも広めてくれ。」
そう言って銀貨一枚を渡し、さらに様々な場所にも同じ仕組みを設置していることを告げた。
やがて人々の間に、その噂が広がっていくのは時間の問題だった。
こうして使命を果たしたレイズとクリスは、その場を後にした。
だが――。
この水の装置が、後に町を巻き込むとんでもない騒ぎを呼ぶことになるとは、まだ知る由もなかった。




