レイズの小さい男
集めた素材を使った新たな準備も整い、レイズはクリスと二人で町へ出掛けることにした。
「レイズ様と二人きりで……ついにこの日が……!」
感極まったように目を潤ませるクリスに、レイズは呆れたように肩をすくめる。
「大袈裟だよ、クリス!」
それでもどこか嬉しげな微笑を浮かべながら、二人は町へと繰り出した。
二人が姿を現した途端、またもや人々のざわめきが巻き起こる。
「なんてイケメンなんだ!」
「かっこいい!まるで英雄だ!」
称賛の声があちこちから飛び交う。
レイズはすぐに、それがクリスに向けられていると理解した、そして顔をしかめた。
「……チッ。」
思わず舌打ちをしたレイズは、低い声で囁く。
「おい、クリス。俺の横を歩くな。少し後ろについてこい。」
「そ、そんな! 私が……なにか不敬を……!」
真剣にうろたえるクリスに、レイズはさすがに罪悪感を覚え、肩に手を置いた。
「いいか、クリス。周りの反応をよく見てみろ。
俺が前を歩き、お前が従う姿を見せることで、人々は俺を称賛し、そしてお前を“忠実なる従者”と理解する。
つまりこれは、俺とお前の繋がりを示すために必要なことなんだ。」
もっともらしい理屈を口にするが、半分以上は嫉妬に過ぎない。
クリスは深く頷き、胸に手を当てて誓うように言った。
「……それは! 私が考えに及ばなかったこと。申し訳ありません、レイズ様!」
その光景を見ていた町人たちは一斉に息を呑む。
「なんて神々しいやり取りだ!」
「あの所作……まさに上に立つ者と従う者の理想の姿!」
またしても人々のざわめきが広がっていく。
だがレイズは知らなかった。
最初の称賛はクリス、彼自身に向けられていたものではなくレイズ含め向けられていたことを――。
そうとも知らず、町の人々の反応に振り回され、小さな男を覗かせるレイズであった。




