宝物
そうして、レイズに手を引かれて外へと姿を現す二人。
その姿を見つけたリアノは胸をなでおろした。
「……よかった」
けれど、二人の腫れた瞼と、力強く結ばれた手を見て理解する。
――散々泣いたのだ。
それでもなお前を向こうとする二人の絆に、リアノは嬉しさと同時に、胸を締めつけるような切なさを覚えた。
「やっぱり……イザベル様が、レイズ君の隣にいるのが一番相応しいんだ」
それは嫉妬ではない。静かな受け入れであり、心からの願いだった。
そこへリアナが駆け寄る。
「レイズ様! イザベル様!! 二人分の食事を用意してきますね!」
そう言うなり、彼女は小さな羽音のように軽やかに駆け去っていった。
その純粋さは、ただただ二人を支えたいという一心からのものだった。
クリスは静かに二人を見つめ、どこか誇らしげに微笑む。
「レイズ様も……イザベル様も。確かにヴィル様の血を継ぐ高潔なお方です。
故に私は、必ず――お二人に恥じぬよう、全力で支えさせていただきます」
そう言葉にして誓う彼の声音には、揺るぎない決意があった。
レイズは苦笑混じりに振り返る。
「クリスってさ、誓いが好きだよな……」
不意を突かれたように、クリスは頬を染めて答える。
「す、すべての誓いに……私は本気でございますから。決して軽いものではありません」
その真剣さがあまりにもまぶしくて、レイズは穏やかにうなずいた。
「わかってるよ。クリスの言葉は、俺にとってすごく心強い」
そう言われたクリスは、こらえきれずに涙をこぼし、その場に膝をつくようにして喜びをあらわにする。
そんな彼女の肩に、イザベルがそっと手を置いた。
「……ほんと、大袈裟なんだから」
微笑みながら、泣き笑うクリスを優しく励ました。
いつもの温もりが、少しずつアルバードに戻っていた。
その空気の中で、レイズはふとリアノに向き直った。
「……そうだ、リアノ。俺と一緒に来てほしい」
その言葉に、つい先ほどまで胸の奥で渦巻いていた複雑な気持ちが、ふっとどこかへ消える。
リアノは顔を上げ、ぱっと明るく返事をした。
「はいっ!」
レイズに導かれ、二人が向かった先は、アルバードの一角――。
そこには、メルェの墓、そしてヴィルの墓、セバスの墓が並んでいた。
緑の風がそよぎ、石碑の上をやさしく撫でていく。
レイズは静かに膝をつき、深く祈った。
リアノも隣で、同じように頭を垂れ、静かな時間が流れる。
やがて、レイズは墓前に向かって小さく呟いた。
「……リアノ。メルェと、リアノと、俺の肖像画。あれを、俺の部屋に置いてほしいんだ。
あれは俺にとって……宝物なんだ」
リアノははっとして顔を上げ、泣きながら微笑んだ。
「……そうです。あれは私たち三人の、本当の……宝物です。
レイズくんが持ってくれることが、リアノにとって一番うれしいことです」
二人は静かに見つめ合い、風がやさしく吹き抜けた。
墓前で交わされた言葉は、悲しみの中にあっても確かな絆の証だった。




