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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
新たな始まり

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信頼とグレサスの更けり



こうして、いくらかのメモリアルストーンをリールに渡した。


「……!」


リールはそれを両手で受け取り、深々と頭を下げる。

手にあるのは――王侯貴族ですら一生かけても得られぬかもしれない価値。

この数個だけで、彼の家系は何世代にもわたって富み栄えるだろう。


だが、奇妙なことに「持ち逃げ」などという考えは浮かばなかった。

――いや、浮かぶ余地すらなかった。


若き当主、レイズ・アルバードは何のためらいもなく、あまりにも容易くそれを渡した。

その無垢な信頼が、リールの胸を鋼のように縛り付けていた。

裏切れるはずがない。

むしろ――この男に長く仕え、共に歩むほうが、確実に「生き残れる」と思わされる。


「必ず……必ず成功させてみせます」

声を震わせながら誓いを告げ、リールはその場を辞した。


その背を見送るレイズの表情は、どこか穏やかだった。

彼はまだ知らない。

その決断が、後にどれほど大きなうねりを呼び起こすのかを。


そして、まだ幾つも抱えるストーンを前に、レイズは呟く。


「……公共に、使えないだろうか」


冷えた石の光は静かに瞬き、答えを待っているようだった。






顔に痛々しい傷跡を残しながらも、鍛練を欠かさぬ男がいた。


ジュラの森にそびえる大木を、ただひたすらに素手で殴り続ける。

拳は既に血に染まり、皮膚は裂け、骨すら悲鳴を上げているだろう。

だが、それでも彼はやめなかった。


――グレサス。

誰もが最強と認める剣神。

だが今、その眼には言葉にできぬ苛立ちと、己が「生き残ってしまった」という屈辱が渦巻いていた。


「……何故だ」


息を荒げながら、血で濡れた拳をもう一度、大木に叩きつける。

脳裏に蘇るのは、あの戦場。


確かに、私は何度でも殺されていておかしくなかった。

あの化物、あの魔族紛いの男――。

そして、その全てを仕留めようとしたのは、他ならぬヴィル・アルバード。


私はただ、横からその獲物を奪おうとしたにすぎない。

なのに――なのに、あの男は化物を庇い、身代わりとなって命を落とした。


「意味がわからん……」


もし、あの選択さえなければ、彼はまだ僅かながらも「生」にしがみつくことができていた。

そう思う一方で、胸に刺さるのは消えぬ疑問。


――なぜ、あの男は己を差し出したのか。


グレサスは拳を振り下ろしながら、理解しようともがいていた。

ヴィル・アルバードの底知れぬ強さと、信念と、そして「守る」というあまりに単純で、しかし揺るぎない意思を。


だが答えは、まだ彼の手には届かない。



そして、グレサスの脳裏にふと、ひとつの疑問が浮かぶ。


――あの時、セバスは確かに魔力を無効化していた。

あの得体の知れぬ力は何だったのか。


自分は最強だと信じて疑わなかった。

肉体の技術、剣の冴え、その一点においては、あの化物も、あの謎の男も自分に劣っていたと断言できる。


だが――魔力では違った。

誰も並び立てぬ圧倒的な奔流。

そしてそれすらも“無”に還し、純粋な力と技術だけのぶつけ合いに変えてしまった、あの不可解な現象。


思い返すたびに胸を刺す。

勝者など、いるはずがなかったのだ。

それぞれの全力が、見えぬ何かに阻まれ、そして最後にはヴィルの信念が戦場を覆った。


生き残ったのは――ただの偶然。

生かされたのは――ただの必然。


グレサスは、己の傷跡へと手を這わせる。

血肉に刻まれた深い爪痕。


「……これは、最強の証ではない」


低く呟く。


「これは……戒めだ」


あの戦場で見たすべてを、決して忘れてはならぬという刻印。

己が傲慢を砕かれた痛みそのものが、今もなお燃えるように胸を灼いていた。






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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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