弔い
こうして、ヴィルとセバスの弔いの儀は執り行われた。
積まれた薪に静かに火が灯され、炎はゆるやかに二人を包み込む。
赤々と燃え上がるその光景は、哀しみと誇りを同時に映し出すようだった。
レイズは炎を見つめながら立ち尽くす。
もう、涙は出なかった。
――いや、流せる涙が残っていなかったのだ。
リアナは普段の明るさを完全に失い、細い肩を震わせながら、その場に膝をつきそうになっていた。
クリスは真っ直ぐに炎を見据え、まるでセバスと心の奥底で会話を交わすように、静かに祈りを捧げている。
リアノとイザベルはレイズの隣に立ちながら、虚ろな目でただ炎を追っていた。時折、嗚咽が喉を震わせるが、声にならない。
魔族たちは魔族たちなりの形で、死者を送る。
それは大地に手をつき、低く響く祈りの声を合わせる、古より続く儀式。
人のそれとは異なるが、炎を前にした気持ちは同じだった。
その時、魔族の長ヴェルビェイヌァイが口を開いた。
「アルバードよ。我は感謝する。
おまえたちが守り続けたこの地より、古くから続く人と魔の悔恨は、いま確かに終わりを見せている。
そして――その終焉へと大きく貢献したのは、この二人の勇姿。我らの真実をもって、この二人を我らの同胞として受け入れよう」
その宣言に、魔族たちが一斉に胸に手を当て、深く頭を垂れる。
炎が夜空を焦がす中、アルバードの者も魔族も、ただ静かに、二人を見送った。
そしてまた王国の者である彼女も
ディアナは、炎を前にただ黙って立っていた。
燃え盛る火が夜を照らし、空へと舞い上がる火の粉が、まるで二人の魂が昇華していくように見える。
彼女の胸の内には、言葉にならない思いが渦巻いていた。
王国の騎士として、この場に立つことは本来あってはならない。
だが今、アルバードの仲間と共に祈りを捧げる自分がいる。
――私は、何者なのだろう。
王国の騎士か、それとも彼らの仲間か。
レイズの涙を流し尽くした顔を見て、胸が締め付けられる。
あの時、彼は自分を「仲間はずれになんかできない」と言った。
その言葉が、いまも耳に焼き付いて離れない。
声を出そうとすれば、きっと涙が溢れてしまう。
だからディアナは、ただ黙って炎を見つめ続けた。
その沈黙は拒絶ではなかった。
むしろ、誰よりも強く二人の死を胸に刻もうとする、騎士としての誇りと、ひとりの人間としての迷いの証だった。




