グレサスの安否
怪物たちが去った戦場に、王国の騎士たちが次々と集結した。
そこには信じがたい光景が広がっていた。
地面には得体の知れぬ化物の亡骸が横たわり、周囲一帯は深い爪痕と無数の斬撃、焼け爛れた跡で覆われていた。
誰の目にもわかる――ここで人知を超えた死闘が繰り広げられたのだ、と。
しかし、不思議だった。
そこに、グレサスの姿がない。
そしてアルバードの者たちも、誰一人いなかった。
「……まさか……グレサス様は連れ去られたのか?」
誰かの声が震えを帯びる。
騎士たちの間に不安が走り、怒りに表情を歪める者もいた。
だが、その動揺を一つの声が打ち消した。
「――デュラン様!! グレサス様を発見しました!!」
その報告に、皆は一斉に声の方へ駆け出す。
そこにあったのは、戦場から遥か彼方、森の奥に横たわる一人の男――グレサスだった。
どれほどの力で吹き飛ばされたのか。想像すらできない。
デュランが膝をつき、慎重にその体を確かめる。
「……息はしている。だが……かなり危険な状態だ」
安堵と緊張が入り混じった吐息が周囲に広がる。
すぐにグレサスを担架に乗せ、数名の騎士が慎重に運び出していった。
デュランは振り返り、戦場に残された亡骸へと視線を向ける。
「……あれが……」
だが、その亡骸の傍らに、不自然な痕跡があった。
土を抉るように這いずった跡――まるで、そこに縋りついていた者がいた証。
追跡の痕を辿る。だが、ある地点を境に唐突に途切れていた。
「……ここから、飛んで逃げたのか」
跡形もなく消えたその影。
だが確信があった。
――今回の惨劇を引き起こした引き金、それこそがその逃げた存在だ。
「……やはり、魔族領から来た者……」
デュランは唇を強く噛み締めた。
「なぜだ……なぜ、あいつはここまで王国に牙を剥いた……」
答えはまだ霧の中。
だが、ガイルがなぜ王国に深い敵意を向けたのか――
その真実は、やがて明らかになるのであった。




