そして失うものは
地に伏したディアブロの身体は、もはや修復がきかないほどに亀裂が走り、そこから魔力がゆっくりと漏れ出していた。
血ではなく、命そのものを垂れ流すように。
ガイルは膝をつき、必死にその身体を抱え上げる。
「……おい、立てよディアブロ!
てめぇがこんなとこで終わるなんて、冗談だろ!」
だがディアブロの口元は薄く笑ったまま、声は弱々しくかすれていた。
「……ガイル……おまえこそ、生きろ」
「黙れッ!」
ガイルは怒鳴り、何度も治癒の魔法を試みる。
どんな魔力も触れた途端にかき消されてしまう。
癒やしは届かない。
「ふざけんな……! てめぇがいたから俺は……俺達はここまで来れたんだ!
まだ、まだ一緒に戦うんだろうが!」
ディアブロはその言葉を聞き、かすかに笑みを浮かべる。
「……そうだな。
だが……俺は、おまえを導く役目を果たした……それで十分だ」
「……やめろ、やめろよ……らしくねぇ!...」
ガイルの眼から涙が溢れる。
それは怒りではなく、どうしようもない喪失への恐怖だった。
ディアブロは震える腕を伸ばし、ガイルの胸倉を掴む。
「……いいか。おまえは、俺の……最高の相棒だった」
「……ッ!」
その瞬間、ガイルは嗚咽を堪えきれず、叫ぶように声を荒げた。
「馬鹿野郎……!! てめぇも、最高の相棒に決まってんだろ!!」
ディアブロの手が力なく下がる。
瞳から光が消え、亀裂の中から最後の魔力が零れ落ちる。
「……あぁ……クソッ……!!」
ガイルは大地に顔を伏せ、声を殺して泣いた。
これほどまでに強大で、傲慢で、そして誰よりも誇り高かった魔の怪物が――
ただ一人の「友」として、その生涯を終えたのだ。




