レイズの知らないキャラクター
にらみ合う王国軍と、アルバードに集結したダークエルフ。
その場の空気は張りつめたまま、誰も一歩を踏み出さない。
だが――
遠方から再び重厚な気配が迫ってくる。
「……まだ来るのか……」
王国の兵士の一人が絶望をにじませて呟いた。
そう、次々と魔族の群れが姿を現したのだ。
山を越え、森を抜け、翼を広げた魔獣たちと共に続々と現れるその姿は、圧倒的な威圧感を放ち、王国兵の喉を震わせる。
もはや形は明らかだった。
大集団VS大集団。
一触即発の構図が完成してしまう。
レイズは一歩前に出て、大きな声で告げる。
「ここまでだろ!!? お前たちの戦いも、俺たちの戦いも……まだ続けるのか。!?」
鋭い声が、緊張に飲まれた空気を切り裂いた。
王国の第二位騎士デュランは、剣を下ろしながら応じた。
「……グレサスの安否が最も重要だ。
何が起きたのか、我らも知らねばならない。
それに――今の戦力でアルバードを落とすことは、もはや不可能ですね。」
その言葉は王国軍の全体に染みわたり、誰もが理解した。
戦意は萎え、兵たちの肩から力が抜けていく。
魔族の長ヴェルビェイヌァイは、鋭い視線で王国軍を見据えながら口を開く。
「心配なのだろう。ならば行くがいい。
我らがここで見張っておいてやる。」
その一言に、レイズとクリスは、互いに視線を交わした。
「……行くぞ。」
次の瞬間、二人は駆け出していた。
目指すは、あの巨大な気配が消え去った場所――
戦場の中心にいた、化物たちの結末を確かめるために。
走りながら――レイズの頬を、熱い涙が伝っていた。
拭おうとしても止まらない。
「どうして……こうなったんだ。」
気配が消えた。
あの圧倒的な怪物たちの気配が、忽然と。
「一体……誰が……」
勝利を疑ったことはなかった。
ヴィルとセバスならば、容易に決着をつけられるはずだった。
それほどまでに、彼らの力を信じていた。
だが今、胸に広がるのは確信ではなく――説明のつかない焦燥と不安。
レイズが知らなかったのも当然だった。
レイズが関わることで、グレサスもガイルもディアブロも――かつてレイズが“物語の中で知っていた存在”では、もうなくなっていたのだ。
強大な力と、死闘の果てに変貌を遂げた彼らは、もはやレイズの記憶の中にある「強者のイメージ」とは別物だった。
未知の領域に足を踏み入れた者同士の闘いに、
確かな勝利など存在しなかった。




